2021/09/21

医療費控除と令和3年度のセルフメディケーション税制

医療費控除とセルフメディケーション税制のおさらい

まず、過去にも記載させていただきましたが医療費控除とセルフメディケーション税制のご説明を致します。医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方のみを適用することができます。医療費控除は比較的高額の医療費を払っている人に有利な制度となっております。セルフメディケーション税制は健康の維持及び疾病の予防のために、病院に通うことが少ない医療費が低額の人に有利な制度です。
以下に医療費控除とセルフメディケーション税制についてもう少し詳しく記載させていただきます。

医療費控除

医療費控除とは支払った医療費が一定の要件を満たした場合に、受けることができる所得控除のことを言います。医療費控除の対象となる医療費の要件は以下【要件】(ⅰ)(ⅱ)となります。

【要件】
(ⅰ)納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること。
(ⅱ)その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。
また、控除される医療費控除額は支払った医療費を基に以下の【計算方法】で計算されます。医療費控除額は最大で200万円まで受けることが出来ます。

【計算方法】
医療費控除額= (実際に支払った医療費の合計額-保険金等の補填額)-10万円※1  

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)

セルフメディケーション税制とは医療費控除の特例です。医療費のうち、セルフメディケーション税制の対象の医薬品※2の購入費用が含まれている場合で、かつ一定の要件を満たした場合に所得控除を受けることが出来る制度のことです。この所得控除を受けることが出来る一定の要件は以下【要件】(ⅰ)(ⅱ) (ⅲ)となります。

【要件】
(ⅰ)納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った特定一般用医薬品等の購入費であること。
(ⅱ)その年の1月1日から12月31日までの間に支払った購入費であること。
(ⅲ)自己がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組※3を行っていること
また、要件を満たした場合に控除される医療費控除額は【計算方法】の様にして計算されます。医療費控除額は最大で8万8千円まで受けることが出来ます。

【計算方法】
医療費控除額= (特定一般用医薬品等の購入費-保険金などの補填額)-1万2千円 

※1 その年の総所得金額が200万円未満の方は、10万円ではなく総所得金額の5%
※2 全ての医薬品が対象とはならずいわゆるスイッチOTC医薬品など「特定一般用医薬品」と呼ばれる医薬品のこと。スイッチOTC医薬品とは、購入する際に医師の処方せんが必要だったが、処方せん不要で薬局などで購入できるようになった風邪薬や胃腸薬、鼻炎用内服薬等のこと
※3 健康診断や予防接種など

令和3年度のセルフメディケーション税制の改正内容

平成29年に制定されたセルフメディケーション税制は令和3年に改正されました。改正内容は以下の①②③のとおりです。①は令和4年分の確定申告から、②は令和3年分の確定申告から改正後の内容が適用されます。

①特定一般用医薬品等(セルフメディケーション税制の対象医薬品)の範囲

【改正前】
スイッチOTC医薬品

【改正後】
・効果が低いと認められるスイッチOTC医薬品を除外したスイッチOTC医薬品(スイッチOTC医薬品に含有される有効成分のうち、効果が低いと認める4成分を有効成分とするスイッチOTC医薬品を、セルフメディケーション税制の対象医薬品から除外する。ただし除外は令和8年1月1日以降に購入したときからとする。)
・スイッチOTC医薬品以外の一般用医薬品のうち、効果が高いと認められるもの。(医薬品に含有される成分のうち、42成分を効果が高いと認める。その成分を有効成分とする一般用医薬品をセルフメディケーション税制の対象医薬品とする。)

今回の改正によって、セルフメディケーション税制の対象医薬品の入替があり、今まで対象とされていた医薬品が対象外となるかもしれません。セルフメディケーション税制の対象医薬品の範囲は令和3年6月25日時点の情報であり、今後対象範囲が変更することがあります。

②セルフメディケーション税制を適用する際の手続きの簡素化

改正前はセルフメディケーション税制の適用を受けるためには、確定申告書の他、以下(ⅰ)(ⅱ)の書類が必要でした。

(ⅰ)セルフメディケーション税制の明細書
(ⅱ)健康のために行った取組を明らかにする書類

改正後は、(ⅱ)健康のために行った取組を明らかにする書類が不要になり、その代わり(ⅰ)セルフメディケーション税制の明細書に、健康のために行った取組名称の記載が必要になります。

③セルフメディケーション税制の期間延長

セルフメディケーション税制は令和3年12月31日までとされていましたが、5年間延長され令和8年12月31日まで適用されることになりました。

医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらを選んだら良いか

所得が200万円を超える方を前提として計算した場合、入院費用といったセルフメディケーション税制対象外の1年間の医療費が、8万8千円を下回る場合はセルフメディケーション税制が有利となります。

実際に例題を使ってどちらを選んだら良いか(医療費控除額が大きくなるか)判定を行いたいと思います。

例1 医療費合計が15万円、その内セルフメディケーション税制対象商品の購入費が10万円の場合
(セルフメディケーション税制対象外の医療費が5万円)
  
①医療費控除を適用した場合
医療費控除額=15万円-10万円=5万円

②セルフメディケーション税制を適用した場合
医療費控除額=10万円-1万2千円=8万8千円>5万円 となり
セルフメディケーション税制を選んだほうが良いです。

例2 医療費合計が18万8千円、その内セルフメディケーション税制対象商品の購入費が10万円の場合
(セルフメディケーション税制対象外の医療費が8万8千円)

①医療費控除を適用した場合
医療費控除額=18万8千円-10万円=8万8千円

②セルフメディケーション税制を適用した場合
医療費控除額=10万円-1万2千円=8万8千円 となり通常の医療費控除額と同額になります。

例3 医療費合計が50万円、その内セルフメディケーション税制対象商品の購入費が10万円の場合
(セルフメディケーション税制対象外の医療費が40万円)

①医療費控除を適用した場合
医療費控除額=50万円-10万円=40万円

②セルフメディケーション税制を適用した場合
医療費控除額=10万円-1万2千円=8万8千円<40万円 となり医療費控除を選んだほうが良いです。

例3の様に医療費合計が高額の場合は、医療費控除が有利になります。
一方で医療費控除は、基本的に医療費が10万円を超えた部分が初めて控除されるのに対して、セルフメディケーション税制は1万2千円を超えた部分から控除の適用を受けることができます。健康の維持及び疾病の予防のために、病院にかかることが少なく医療費が低額な方にオススメの制度と言えます。
セルフメディケーション税制の適用をお考えの方は、医薬品を購入した際に普段から領収証を保管するようにしていただければと思います。

記.東京事務所1課