2021/09/06

固定資産の修理・修繕について

資本的支出の考え方

固定資産を修理、改良等のために支出した費用の中には、資本的支出として、法人税の計算上、支出時の損金とすることができないものがあります。
そもそも資本的支出とは、法人税法施行令第132条において、下記のように定められています。

「内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもつてするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で次に掲げる金額に該当するもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)は、その内国法人のその支出する日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」

一 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額

二 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

つまり、固定資産の使用可能期間が延長するものや固定資産の価額が増加する場合にはそれに対応する支出は資本的支出とされ、支出時の損金とすることができません。
修繕費となるものは、通常の維持管理の為、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額となります。
資本的支出をした場合には、その支出した金額を取得価額とした新たな固定資産を取得したものとして取り扱うことになります。

使用可能期間の考え方

法令上の耐用年数を経過した資産について原状回復の為の修繕を行った場合は、どのように判定するのでしょうか。
残存耐用年数ゼロ年の資産の原状回復工事なので使用可能期間を延長するとして、資本的支出に該当するかと思われますが、それによって直ちに資本的支出として取り扱われるというわけではありません。
資本的支出と修繕費の区分については、一般の例によりその判定を行うことになりますので、耐用年数を経過しているか否かは判定には関係なく、修理等の内容により判定されることになります。
また、自動車のエンジンなど、それがないと機能しないようないわゆる「主要部品」の交換をした場合も、資産の使用可能期間が延びるように思えますが、必ずしもそうはなりません。
使用可能期間の考え方は、上項で記載したように、通常の修理をすることを前提として予測した使用可能期間から、更に延長させる部分が資本的支出と判断されます。
その為、取得時に主要部品の交換も考慮した上で使用可能期間を見積もっているのであれば、主要部品の交換を行ったとしても使用可能期間が延びるということはありません。
もちろん交換の内容によっては使用可能期間が延びることや資産の価値が増加することもあるかと思いますのでご注意ください。

形式基準

ただし、実務上は固定資産に対する支出が資本的支出か修繕費かを明確に区分することが困難なことが多く、区分については実務上の簡素化を考慮して、一定の形式基準が定められています。

①少額又は周期の短い費用の損金算入(法基通7-8-3)
1 その一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円に満たない場合
2 その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

②形式基準による修繕費の判定(法基通7-8-4)
資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において、
1 その金額が60万円に満たない場合
2 その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

③資本的支出と修繕費の区分の特例(法基通7-8-5)
資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額がある場合において(7-8-3又は7-8-4の適用を受けるものを除く。)法人が、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているとき

②、③には資本的支出か修繕費か明らかでない場合という前提はありますが、このような場合には、金額や割合を基にして修繕費として経理処理をすることが認められております。

この他にもいくつかの基準が設けられておりますが、このような場合には形式に則った経理処理が認められておりますので実際に取引があった場合にはお近くの税理士等の専門家へご相談いただければと思います。

記.東京事務所1課