2021/08/23

課税売上割合について

課税売上割合とは?

消費税の納税額の計算は原則的な方法で行う場合、売上などの収入に含まれる消費税額から経費や仕入などの支出に含まれる消費税額を控除して計算することになります。この支出に含まれる消費税額を控除することを「仕入税額控除」といいます。

ただ、この仕入税額控除については支出に含まれる消費税額の全額が必ず控除できるわけではありません。
事業者が仕入税額控除ができるのは、その後の売上において消費者に消費税を転嫁できる場合のみに限るという考え方があり、消費税を預からない非課税の売上に対応する分については控除が出来ないことになっています。

そのため、原則的な計算方法では、仕入税額控除を行う際に、課税売上と非課税売上の合計額に占める課税売上の割合を計算し、この割合を支出に含まれる消費税額に乗ずる計算を行います。
そしてこの乗ずる割合を「課税売上割合」といいます。

【課税売上割合】
課税売上 /(課税売上 + 非課税売上) = 課税売上割合

この計算を行う2つの方法のうち個別対応方式においては、まず支出に含まれる消費税額を①「課税売上にのみ要するもの」、②「非課税売上にのみ要するもの」、③「共通して要するもの」の3つに区分します。
①の「課税売上にのみ要するもの」は全額を控除し、②の「非課税売上にのみ要するもの」は控除ができません。
そして③の「共通して要するもの」については「課税売上割合」を乗じた金額のみを控除することができます。

【計算イメージ】
①「課税売上にのみ要するもの」 → 全額控除できる
②「非課税売上にのみ要するもの」→ 控除できない
③「共通して要するもの」    → 課税売上割合の分だけ控除できる

課税売上割合に準ずる割合とは

上項で課税売上割合についてご説明させていただきました。
課税売上割合はあくまでその課税期間の売上の割合ですので、個別対応方式における「共通して要するもの」に区分される税額の実態を必ずしも反映していない場合があります。その場合に、課税売上割合よりも更に合理的な割合を適用することがその事業者にとって実態を反映したものとなるのであれば、税務署長の承認を受けてその合理的な割合により計算することができます。
そして、その割合を「課税売上割合に準ずる割合」といいます。
この課税売上割合に準ずる割合は、その事業者の営む事業の種類等により異なるものと考えられ一概に言えるものではありませんが、使用人の数又は従事日数の割合、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合などが考えられます(基通 11-5-7)。
課税売上割合に準ずる割合の代表例として、「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合」というものがあります。

例えば本社などの不動産を売却した際に、その敷地の売却による非課税売上が高額で、課税売上割合がその課税期間のみ一時的に著しく下がる場合があります。その場合に、土地の譲渡が単発のものであり、かつ、その土地の売却がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められる場合に限り、前期又は前期以前3年間通算のいずれか低い割合について課税売上割合に準ずる割合の承認を受けることができます。

適用時期とその改正

課税売上割合に準ずる割合は、納税地の所轄税務署長に適用承認申請書を提出し承認を受ける必要があります。
これまでは、承認を受けた日の属する課税期間から、その割合を適用するものとされており、税務署長における審査に一定の時間を要するため、適用できるまでの期間を考慮して申請書を提出する必要がありました。そのため期末においてその課税期間から承認を受けたほうが良いことが判明した場合は、承認までの時間的余裕がないため対応ができませんでした。
これについて令和3年度の改正では、適用を受けようとする課税期間の末日までに申請書を提出し、その提出した日の翌日から1月以内に税務署長の承認を受けた場合には、その適用を受けようとする課税期間から適用ができることになりました。(令和3年4月1日以後に終了する課税期間から適用)

税務署長の1月以内の承認が前提となりますが、期末に提出を行ってもその課税期間から適用を受けられる可能性があるため、従前より緩和され時間的な余裕をもつことができます。
ただ、税務署長において1月以内に承認することを約束しているわけではないので、実際に承認が必要となる場合には余裕をもって提出することが望ましいかと思います。
 
反対に、これまで適用していた課税売上割合に準ずる割合の適用をやめる場合には不適用届出書を納税地の所轄税務署長に提出すれば、その提出した日の属する課税期間から取りやめることができます。こちらは税務署長における承認がないため期末までに提出を行えば良いことになります。
また、上項でご紹介した「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合」の承認を受けた場合については、翌課税期間中に不適用届出書を提出しない場合その承認を取り消すとされているため、提出忘れが無いように注意が必要です。

ここまで、課税売上割合と課税売上割合に準ずる割合についてご説明させていただきました。一般的な事業を行っている事業者の方においても、不動産の売却により課税売上割合が一時的に大きく変動する可能はあるかと思いますので、実際に取引があった場合は税理士等の専門家に相談を行っていただければと思います。

記.東京事務所2課