2021/08/17

新型コロナワクチン職域接種の課税

職域接種で発生する費用

職域接種は、企業等が医療機関を確保して実施するものです。
その為、会社の従業員はもちろん、従業員と同居する家族、関連会社や取引先の従業員、近隣住民を対象者に含めることもあると考えられます。自治体が実施して各人が受けるものについては、接種を受ける方自身の費用はかからないことはご存知かと思いますが、職域接種における会社の費用はどうでしょうか。
会社は市町村から委託を受け、委託料を受領することになりますが、同時に接種会場の使用料や設営費用、産業医以外の医師や看護師等の派遣受けるための費用など、「会場準備費用」が発生します。その為、会場準備費用が委託料収入を上回り、会社の費用負担が生じることがあります。
この会場準備費用の取扱いと付随するその他の費用について、以下の2つの項目で確認していきましょう。

会場準備費用の取扱いについて

会場準備費用を会社が負担し、関連会社や取引先に負担を求めない場合は、法人税法上の寄附金の額または交際費等の額に該当するのでしょうか。
これについては、ワクチン接種を受けることで社内の感染拡大が防止されるため、会社の業務遂行に必要な費用の負担と考えられるとのことです。
つまり、法人税法上の寄附金の額又は交際費等の額に該当せず会社が負担した会場準備費用の全額が損金算入可能ということです。なお、接種会場の近隣住民で希望する者を追加した場合も同様です。
また、会社の役員や従業員等、ワクチン接種を受けた者の会場準備費用を会社が負担した場合についても考えていきます。

結論から申し上げますと、役員や従業員に対する給与として課税する必要はなく、関連会社の従業員等についても、所得税の課税対象とはなりません。新型コロナワクチンの接種については、予防接種法に基づき市町村において実施されるものとされており、接種を受けた者が接種に要する費用を負担することはなく、職域接種についてもそれは変わりません。
その為、接種を受けた者においてワクチン接種に係る負担が生じることはありません。

職域接種に係るその他の費用

職域接種の際に付随する費用についても確認しておきましょう。

①交通費の取扱い
勤務先又は自宅から接種会場までの役員や従業員の交通費を支給する会社も多いのではないでしょうか。
この交通費についても、業務上の「旅費」と考えられるので、接種会場への交通費として相当な額であれば、従業員に対する給与には該当しないと考えられます。

②デジタルワクチン接種証明書の取得費用の取扱い
接種を受けた者のうち希望者に対して有料で、デジタルワクチン接種証明書の交付を受けることができることとされています。この費用を会社が負担した場合については、証明書を受けることが「業務遂行上必要である」場合には、従業員が負担すべき費用には該当せず、従業員に対する給与には該当しないとのことです。

業務遂行上必要かどうかについて一概には申し上げられませんが、海外へ渡航する予定(海外出張など)がある方が該当するかと思います。

※今回の内容は国税庁コロナウイルス感染症FAQの令和3年7月2日更新分から抜粋しています。

新型コロナウイルス感染症の終息を願うとともに、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。

記.東京事務所2課