2021/08/11

ビットコインなど暗号資産の税金

確定申告が必要となるケース

暗号資産は購入したときに所得税はかかりません。サラリーマンなどで確定申告が不要な人でも以下の①~③のような取引を行い、暗号資産の所得金額が20万円超(専業主婦の方など給与所得が無い方は48万円超)発生するときは、確定申告が必要になります。(ただし、暗号資産の所得金額が20万円以下でも確定申告を行った場合は、暗号資産の所得金額を含めて申告が必要です。)
 
① 暗号資産を売却したとき
売却した暗号資産の売却額※1と、売却した暗号資産の譲渡原価※2の差額が所得金額になります。

② 暗号資産を使用して商品を購入したとき 
商品を購入する際に支払った暗号資産の売却額と、譲渡原価の差額が所得金額になります。例えば車を購入する際にビットコインで支払うときなどが挙げられます。

③ 暗号資産を、保有する別の暗号資産で購入するとき(暗号資産を交換するとき)
支払った暗号資産の売却額と譲渡原価の差額が所得金額になります。例えばリップルを購入する際に保有しているビットコインで支払いを行うときが挙げられます。

※1暗号資産の売却額が時価の70%未満であるときは、所得金額を計算する際に時価の70%で売却したとして所得金額を計算します。
※2譲渡原価とは、譲渡する暗号資産の帳簿上の価額です。

個人が暗号資産を保有する場合の、暗号資産の所得金額の発生する時期は原則として暗号資産を引き渡した日が属する年となります。
また、同じ年内に2種類以上の暗号資産の所得がある方は1種類ごとの暗号資産の所得金額ではなく、所得が発生しているすべての暗号資産の合計額で確定申告が必要か否かを判断します。
 
上記①~③に記載しましたように、所得金額を計算するには暗号資産の売却額と譲渡原価を計算する必要があります。譲渡原価は計算に少し手間がかかるので譲渡原価の計算方法について事項でご説明させていただきます。

譲渡原価を計算する

暗号資産の譲渡原価の評価額は、年初時点の暗号資産の評価額※3とその年中に取得した暗号資産の取得価額の合計から、年末時点の暗号資産の評価額を差し引いた額になります。そのため、その年中に取得した暗号資産の取得価額と、暗号資産の平均単価を計算する必要があります。

※3 暗号資産の評価額:暗号資産の平均単価に保有数量を乗じた額

その年中に取得した暗号資産の取得価額は、その年中に暗号資産を購入する際に支払った金額の合計額となるため、比較的容易に求めることができます。しかし、年末時点の暗号資産の平均単価は計算が少し複雑なので注意が必要です。
 
年末時点の暗号資産の平均単価は、総平均法※4と移動平均法※5のどちらかの方法で評価します。

※4 総平均法:年初時点の暗号資産の平均単価に保有数量を乗じた額と年中に暗号資産の購入のため支払った金額の合計を、年初時点の暗号資産の保有数量と年中に購入した数量の合計で除した値を平均単価とする方法です。
※5 移動平均法:暗号資産を購入するたびに暗号資産の平均単価を計算する方法です。

以下の例を用いて総平均法と移動平均法を適用した場合の年末の暗号資産の平均単価を計算します。

【例】1年間で以下の暗号資産の売買を行った際の暗号資産の年末時点の平均単価を、①総平均法と②移動平均法それぞれの方法で求めます。年初時点に暗号資産は保有していないものとします。

3月15日に2BTCを200万で購入。
7月20日に1BTCを200万で売却。
12月15日に2BTCを600万で購入。

【回答】

①総平均法を用いる場合
年末時点の平均単価
(200万+600万)÷(2BTC+2BTC)=200万

②移動平均法を用いる場合
3月15日時点の平均単価
200万÷2BTC=100万

12月15日時点の平均単価
(100万+600万)÷(1BTC+2BTC)=約233.3万

年末時点の平均単価
約233.3万

総平均法は年末時点に一回のみ平均単価を計算するので総平均法の方が評価が容易といえます。

暗号資産の評価方法の届出

前項で記載させていただいた2つの評価方法は、暗号資産の各種類ごとに評価方法を選択する必要があります。評価方法を選択するタイミングは、新しい種類の暗号資産を取得した時です。新しい種類の暗号資産を取得した年の確定申告期限(原則:翌年3月15日)までに所轄税務署に所定の書式を届出ることで評価方法を選択することが出来ます。ただし、個人が評価方法の選択の届出を行わない場合は総平均法が適用されます。

評価方法を変更するときは、評価方法を変更しようとする年の3月15日までに所定の書式を提出し、税務署長の承認を受けることで評価方法を変更できます。所定の書式を提出した年の12月31日までに承認又は却下の通知が無い場合は、その日において承認があったものとみなされます。なお、変更前の評価方法を決めてから相当期間(基本的に3年程度)が経過していない場合は、評価方法の変更が却下される場合があります。

年末に暗号資産を保有している場合は、総平均法と移動平均法のどちらを選択するかによってその年の暗号資産の所得金額が変わってくるのでその点も踏まえて評価方法について検討していただければと思います。

記.東京事務所2課