2021/03/01

特定口座について

特定口座とは?

近年は株式投資も敷居が低くなり、だれでもネットで簡単に、そして少額から始められるようになりました。
政府も貯蓄から投資への促進を図るため、2014年にNISAを開始させ、税制面でも優遇措置をとっています。
このように気軽に始められる環境が整備されてきており、株式投資に興味を持たれている方や実際に始められた方も多いのではないでしょうか。その中で「なんだかよくわからないけど、特定口座にしておけば株式投資が楽にできるらしい」ということで利用されている方もおられると思います。
特定口座とは、証券会社等の金融商品取引業者等で開設する口座のことです。
一つの証券会社等で一つの口座しか開設できません。
証券会社等で特定口座を開設し、上場株式等の保管を委託することになります。
その目的は個人投資家の上場株式等の譲渡所得の申告・納税手続きを簡素化することにあります。
基本的に上場株式等の譲渡所得は自身で計算し、確定申告が必要な場合も自身が行わなければいけません。
ところが、特定口座に保管されている上場株式等については証券会社等が譲渡所得の計算を行います。
そして、特定口座を後述する源泉徴収選択口座としておけば、源泉徴収されることにより納税が完了し確定申告も不要となります。

源泉徴収選択口座とは?

特定口座は源泉徴収選択口座とそれ以外の口座(簡易申告口座といいます)に分けられます。
源泉徴収選択口座とは、上場株式等の譲渡損益の計算の結果、譲渡益が生じた場合に証券会社等がその譲渡益に対し源泉徴収を行う口座のことをいいます。証券会社等が所得計算、源泉徴収を行うので基本的に確定申告を行う必要がありません。
ただ、給与所得者や年金所得者については年間20万円以下の利益については申告・納税は原則として不要であるにもかかわらず源泉徴収で自動的に税金が引かれてしまいます。結果、本来納めなくてもいい税金を納めてしまうケースもあります。
一方で、簡易申告口座は譲渡損益の計算は証券会社等が行いますが、源泉徴収がありません。
そのため、証券会社が発行する年間の譲渡損益をまとめた年間取引報告書をもとに確定申告を行い納税する必要があります。

以上、源泉徴収がされるのかどうかが異なる点になります。
譲渡損益の計算、納税を証券会社等が行ってくれる源泉徴収選択口座の方が手間が省けるということで、こちらを利用されている方が圧倒的に多いようです。

譲渡損失の損益通算と繰越控除

特定口座で保管されている上場株式等の譲渡所得については確定申告の必要がないと述べてきました。
これは「申告しない」ことを選択できるということで、申告することもできるのです。
複数の特定口座をお持ちの場合で、A特定口座で譲渡益が、B特定口座で譲渡損が生じているときは確定申告により損益通算が可能になります。
また、譲渡損が生じている場合は、確定申告することによりその損失を翌年以降3年間にわたり繰り越すことができます。
ただし、繰り越す年と翌3年間は毎年確定申告をしなければなりません。
株式を売却しなかった年も確定申告が必要になるので、忘れず確定申告をしましょう。
これにより、翌年以降に譲渡益が生じた年にその譲渡益から繰り越した損失を控除することができるようになるのです。

特定口座は確定申告をする必要がなく手間がかからないのは確かです。
しかし、確定申告により損益通算や損失の繰越で税金が少なくなる可能性もあるのです。
確定申告期限まで、まだ時間はありますので特定口座をお持ちの方はもう一度確認されてはいかがでしょうか。

記.大阪事務所1課