2020/12/21

支援・救援を行った場合の法人税法上の取り扱い

寄附金の原則的な取り扱い

感染防止対策、自粛要請、リモートワークの導入等、私たちの生活を取り巻く環境は一変してしまいました。急激な経営環境の変化について報じるニュースや、ビジネスモデルの転換期が来たと謳う紙面を見かける等、悩ましい情報を見かけない日は少なくありません。

そんな中、「この大変な時期を乗り越えることができれば、景気が上向きになった時に再び波に乗れる」と、前向きに捉えていらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 
複雑化、高度化した現代の経済活動は、一人だけ、一社だけではなかなか成り立ちにくくなっておりますので、取引先の支援・救援をお考えになる方もいらっしゃると思います。

今回は、そのような取引先への支援・救援を行った場合の法人税法の規定について、ご紹介いたします。

取引先の支援・救援を行った場合、法人税法上、寄附金に該当する可能性が高くなります。まずは、寄附金の原則的な規定について、触れたいと思います。

寄附金とは、広告宣伝費等、交際費、接待費及び福利厚生費となるものを除いて、どのような名目によるかを問わず、金銭、資産又は経済的な利益を、見返りを求めずに渡すことをいいます(法人税法37条)。

法人税の原則的な考え方に照らしますと、支出が損金として認められるには、その支出が事業活動に必要なものでなければなりません。事業を円滑に実施するためには、地域への貢献や福祉活動等、事業活動に直接関連しない支出も損金として認められるのでは?という考え方もありますが、事業活動に必要なものであるかどうかの判定は、とても困難です。

そこで、法人税では、国等が指定した公共性の高い団体等への寄附については、高い割合で損金と認められるものの、その他への寄付は、大部分が損金として計上できません(法人税法施行令73条等)。

災害の場合の取引先に対する支援

上項では、寄附金の取り扱いをご説明いたしました。それでは、取引先に支援をした場合はすべて寄附金となり、大部分が損金として認められなくなってしまうのでしょうか?

法人税基本通達9ー4ー6の2 には、「災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等」という規定があります。この規定は、被災した取引先に対し、復旧支援のために相当期間内に売掛金等を免除などしたことで生じた損失は、寄附金等に該当せず、全額損金算入できる、というものです。

この取扱いは、震災時に話題に上がっているのを見かけた方もいらっしゃるかもしれません。
この規定を用いるには、自社にとって取引先を支援する経済的合理性があること、災害による店舗の損壊等の物理的な損害があること、という条件を満たす必要があります。条件を見ると、今回のコロナ禍のような物理的な損害が見えにくいケースに、この規定を適用することは一見難しいように思えます。

コロナ禍における取引先に対する支援

上記のような事情から、法人税基本通達9-4-6の2 に、注2が追加され、以下のような内容が規定されました。

「新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定の適用を受ける同法第2条第1号《定義》に規定する新型インフルエンザ等が発生し、入国制限又は外出自粛の要請など自己の責めに帰すことのできない事情が生じたことにより、売上の減少等に伴い資金繰りが困難となった取引先に対する支援として行う債権の免除又は取引条件の変更についても、同様とする」

この規定のポイントは、「コロナ禍等の影響」で、「売上の減少等に伴い、資金繰りが困難となった」という2点です。

この通達の規定を、具体的にどういった場合に適用できるか否かの判断基準については、明文の規定がありませんので、救済する取引先の状況によって、個別に判断していくことになります。
実務上は、相手先の状況を把握することは困難ですが、後で支援・救援が必要な状況であったこと、いつ行ったか、を第三者に説明できるように、資料を整備し保管しておく必要があると思います。

例えば、「コロナ禍の影響」で売上が減少等しているかについては、取引先が営業自粛をしていたことにより、売上が相当程度減少している場合が当てはまると思います。

また、支援・救済をする時期についても、注意が2点必要です。

1点目は、取引先への支援は、「相当の期間内」に行うことが必要です。相当の期間とは、通常の営業活動を再開するまでの復旧過程の期間と規定されています。
コロナ禍においては,取引先の資金繰りが困難な状況が続いているのであれば、相当の期間内の支援の対象となるようです。

2点目は、寄附金は支出した期の損金になることです(法人税法施行令78条)。したがって、決算日前後には注意が必要です。

記.東京事務所1課