2020/12/01

新型コロナウイルス関連の医療費控除について

医療費控除の対象になる医療費とは

まずは「医療費控除」について、簡単にご説明させていただきます。
「医療費控除」とは、その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができる。というものです。

医療費控除の対象となる医療費は、

①医師又は歯科医師による診療又は治療の対価
健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)

②治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)

などとされています。(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項)

マスクなどの感染症予防のための費用は?PCR検査費用は?

今年はマスクや消毒液などを購入したという方が特に多いかと思われますが、これらの購入費用は、病気の感染予防を目的とするものであり、治療のための支出ではないため、医療費控除の対象とはなりません。

新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受けた場合は、医師等の判断で受けたのか、自己の判断により受けたのかによって判定が変わってきます。

①医師等の判断によりPCR検査を受けた場合
新型コロナウイルス感染症にかかっている疑いのある方に対して行うPCR検査など、医師等の判断により受けたPCR検査の検査費用は、医療費控除の対象となります。

ただし、自己負担部分に限りますので、公費負担(社会保険等)により行われる部分の金額については医療費控除の対象となりません。

②自己の判断によりPCR検査を受けた場合
単に感染していないことを明らかにする目的で受けるPCR検査など、自己の判断により受けたPCR検査の検査費用は、医療費控除の対象となりません。

ただし、PCR検査の結果、「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるので、その場合の検査費用については医療費控除の対象となります。(人間ドックや健康診断も同様の考え方になります。)

オンライン診療

新型コロナウイルスの感染拡大により、一般的だった対面式による診療ではなく、オンラインによる非対面式での診療を導入するクリニック等が増えてきました。

オンライン診療は、自宅から医師の治療が受けられるのはもちろん、診療により処方された医薬品については、医療機関から希望した薬局に処方箋情報が送付され、その薬局から自宅への配送もできる仕組みとなっています。
大変便利ですが、この仕組みを利用するためには、通常の診療費用だけではなく下記のような費用が必要となり、医療費控除の取扱いはそれぞれ次のとおりとなります。

①オンライン診療料
オンライン診療料のうち、医師等による診療や治療のために支払った費用については医療費控除の対象となります。(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項)

②オンラインシステム利用料
医師等による診療や治療を受けるために支払ったオンラインシステム利用料については、オンライン診療に直接必要な費用に該当しますので、医療費控除の対象となります。(所得税基本通達73-3)

③処方された医薬品の購入費用
処方された医薬品の購入費用が、治療や療養に必要な医薬品の購入費用に該当する場合は、医療費控除の対象となります。(所得税法73条2項、所得税法施行令207条1項2号)

④処方された医薬品の配送料
医薬品の配送料については、治療又は療養に必要な医薬品の購入費用に該当しないので、医療費控除の対象となりません。

記.東京事務所1課