2020/11/27

適格請求書等保存方式について(その2)

適格請求書発行事業者の登録申請

まず、適格請求書発行事業者登録を受けるには、登録申請書を提出する必要があります。この書類を「適格請求書発行事業者の登録申請書」といいます。
課税事業者が消費税等を計算するにあたって仕入税額控除を受けるためには、支払先が適格請求書発行事業者である必要があります。
登録を受けた事業者を「適格請求書発行事業者」というので、課税事業者であっても登録を受けていないものからの仕入れは仕入税額控除を受けられないこととなります。このためほとんどの課税事業者が登録されると考えられます。
また、取引先が仕入税額控除を受けられないことを考慮し、あえて課税事業者を選択し登録申請書を提出するケースもあるかもしれません。

・申請から登録までの流れ

1. 税務署へ「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します。

2. 税務署による審査を経て、通知・公表が行われます。
※申請者には税務署から登録通知書が交付されます。

・登録番号の構成は次の通りです。
法人番号を有する課税事業者
T+法人番号
上記以外の課税事業者(個人事業者、人格のない社団等)
T+13桁の数字

・確認できる事項は以下のとおりです。
適格請求書発行事業者の氏名又は名称
登録番号、登録年月日(取消、失効年月日)
法人の場合、本店又は主たる事務所の所在地
※上記のほか、事業者から公表の申出があった場合には
個人事業者:主たる屋号、主たる事務所の所在地
人格のない社団等:本店又は主たる事務所の所在地

・登録申請開始
登録申請書は令和3年10月1日から提出できます。
令和5年10月1日から適格請求書等保存方式が導入されるので同日より適用を受けるのであれば原則として令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があります。
ただし、令和5年3月31日までに提出することが困難な事情がある場合には、令和5年9月30日が期限です。(「困難な事情」については、その程度は問われません。)e-taxにより登録申請書を提出することもでき、これも提出可能時期は令和3年10月1日からとなっています。

免税事業者の登録手続

免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、課税事業者を選択する必要があります。
手続きは次の通りです。
・「消費税課税事業者選択届出書」を提出する。
・課税事業者となる課税期間の初日の前日から起算して1月前の日までに登録申請書を提出する。
※原則として、課税事業者選択届出書を提出した課税期間の翌課税期間から課税事業者となります。

参考例:個人事業者、12月決算法人が課税期間となる課税期間の初日となる令和6年1月1日から登録を受ける場合
→令和5年11月30日までに課税事業者選択届出書を提出するとともに、登録申請書を提出する。

ただし、上記の参考例で挙げたような事業者は注意点があります。令和5年10月1日から適用を受けた場合です。
令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合は、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置が設けられているのです。
参考までに、この場合は消費税課税事業者選択届出書の提出は必要なく、登録申請書の提出のみとなります。

そして、令和5年1月1日から令和5年12月31日の課税期間中には免税期間と課税期間が存在することとなります。

令和5年1月1日から令和5年9月30日 免税事業者
令和5年10月1日から令和5年12月31日 課税事業者

このように、登録日以降は課税事業者となるため3ヶ月での消費税の申告が必要となります。

登録申請書の提出すると、基準期間の課税売上高が1000万円以下でも申告が必要となり、取引の相手方(課税事業者のみ)から求められたときには、適格請求書を交付しなければなりません。

あくまで登録を受けるかどうかは任意です。慎重な判断が必要ですね。

登録の取りやめ

適格請求書発行事業者は、その登録を取りやめたいときは「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出することにより、登録の効力を失わせることができます 。
なお、この場合原則として、翌課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります。ただし、一定の期間を過ぎると翌々課税期間から登録の効力が失われることとなるので期限には注意しましょう。
この届出書を提出する以外にも事業廃止した場合等、登録の効力が失われるケースもありますが、それに応じた一定の届出書は必要となります。

また、適格請求書発行事業者の登録が取り消されるのは下記のケースです。
①1年以上所在不明であること
②事業を廃止したと認められること
③合併により消滅したと認められること
④消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと

適格事業者発行事業者は、翌課税期間の基準期間における課税売上高が1000万円以下であっても上記の手続きを踏まない限り翌課税期間に免税事業者となることはできません。

平成31年4月改正

インボイス制度の話とは異なりますが、昨年、平成31年4月に消費税に関する一部改正がありましたので追記させていただきます。

①課税仕入れに係る資産が納付すべき消費税を納付せずに保税地域から引き取られた課税貨物(いわゆる密輸品)であり、その仕入れを行う事業者が課税仕入れを行う際に、買い取る資産が密輸品であることを知っていた場合には、その消費税額について仕入税額控除制度の適用を受けることができないこととされました。
これは平成31年4月1日以後に行う課税仕入れから適用されます。

② 令和元年10月1日以後に事業者が金又は白金の地金の課税仕入れを行った場合に、課税仕入れの相手方(売主)の本人確認書類(運転免許証の写しなど)を保存しない場合には、やむを得ない事情がある場合を除き、その課税仕入れは仕入税額控除制度の適用を受けることができないこととなりました。

消費税は平成元年に創設された比較的新しい税法です。税率も約30年かけて3%、5%、8%、10%と段階的に上がってきました。
その都度新しい改正が加えられ、今後も様々な改正により複雑化することが想定されるためその都度対応していかないと思わぬ損失を被ることにもなりかねません。

適格請求書等保存方式に関する詳しい情報は国税庁HPにも掲載されていますので随時追加事項や改訂事項を確認することをお勧めします。

記.名古屋事務所2課