2020/08/23

輸出免税とアンダーバリュー取引について

免税される輸出取引

1 国内から輸出として行われる資産の譲渡又は貸付け(典型的な輸出取引)

2 国内と国外との間の通信又は郵便若しくは信書便

3 非居住者に対する鉱業権、工業所有権、著作権、営業権等の無体財産権の譲渡又は貸付け

4 非居住者に対する役務の提供ただし、次のイからハについては、免税とされる輸出取引にはならず、消費税が課されます。
イ 国内に所在する資産に係る運送又は保管
ロ 国内における飲食又は宿泊
ハ イ又はロに準ずるもので国内において直接便益を享受するもの

免税の適用を受けるための証明

輸出取引等の区分に応じて輸出許可書、税関長の証明書又は輸出の事実を記載した帳簿や書類の整理・保管をしなければなりません。
・前項1うち輸出の許可を受ける貨物 ・・・ 輸出許可書(税関長の証明書)
・前項1うち郵便物として輸出するもの
 イ 当該資産価額20万円超  ・・・ 輸出許可書(税関長の証明書)
 ロ 当該資産価額20万円以下 ・・・ 帳簿又は書類
・前項2の取引 ・・・ 帳簿又は書類
・その他の取引 ・・・ 契約書その他書類

20万円以下の場合の帳簿又は書類の「書類」とは、国際郵便(EMS)やDHL、FedExなどの出荷書類(ラベル、送り状等)が該当します。

輸出価格の変更

海外顧客から「輸出インボイス価格を変更してもらえないか?」とお願いされ、安易にOKを出していないでしょうか?
この行為は一般的にアンダーバリュー取引と言い、輸入申告価格を低くして関税の支払いを安く抑える輸出入における不正取引の一つです。

不正な取引だと分かっていても、実際に不正(脱税)するのは自分ではなく、輸入者である海外顧客であり、約束通りにお金がもらえるのであれば、EMSなどの出荷書類の改ざんくらいはやってあげてもいいのではと考えてしまうかもしれません。

輸出取引は前項の通り消費税が免税です。日本製品の人気で近年消費税還付申告が増加傾向ですが、EMSなどの出荷書類の改ざんを万一しますと、輸出している方は実は輸出免税を受けられなくなります。前項で説明しました通り消費税法上、例えば20万円以下の小口輸出をした場合の証明書類は帳簿又は書類(EMS等出荷書類)です。
いくら契約通り売上金をもらっていても、出荷書類に売上金額を低く記載していれば、輸出免税を受けられないことになります。

【一例】

実際の売上金額 100
EMS記載金額 100 ・・・ ○ OK


実際の売上金額 100
EMS記載金額  50 ・・・ × 不正

高額商品や数量が多い場合などは万一の輸送時の事故に備え保険をかけると思いますが、実際価格より低い価格で出荷した場合、保険請求しても十分な保険金額は受け取れません。
事故の際保険金は満額もらえない、輸出免税も受けられない、最悪の場合は関税法違反・・・。

安易な考えで、アンダーバリュー取引に加担し痛い目に合い、結果目に見える損失だけでなく、他の取引先の信用も失ってしまうなんてことになりかねません。

このようにアンダーバリュー取引は、様々なリスクがあります。どのような影響や問題があるのかご自身がよく理解し、きちんと説明すれば相手も分かってくれると思います。それでも無理強いしてくるような相手は、この問題に限らずご自身にとって本当の顧客ではないでしょう。