2020/08/17

新型コロナによる国税関係法律の特例

消費税の課税選択の変更に係る特例

本来免税事業者であるところ、前期(個人事業者は前年)までの状態から事業計画で翌期(翌年)に設備投資による消費税の還付を受ける場合は、消費税課税事業者を選択する届を出して課税事業者になる事を選びます。
ところが新型コロナの影響で業績が悪化し事業計画自体大きく変更せざるをえない状況になってしまい設備投資を取りやめることになってしまった場合など課税事業者を選択したために税負担が多大となってしまいます。
また、免税事業者が新型コロナの影響で課税売上が大きく減少し、課税事業者であったならば還付を受けることが出来るのに免税事業者であるので還付が受けられない場合など、事業開始後に大きく状況が変わった場合に新型コロナ税特法では一定の要件の基、課税期間開始後であっても課税事業者をやめ免税事業者に変更する、又は免税事業者ではなく課税事業者に変更することが出来るように特例が設けられています。

特例の対象となる事業者

特例の対象なるのは、新型コロナウイルス感染症等の影響により、令和2年2月1日から令和3年1月31日までの間のうち任意の連続した1か月以上の期間(以下「調査期間」)の事業としての収入金額が、前年の同時期と、比べて、概ね50%以上減少している事業者。

特例による変更手続き

特例の対象となる事業者は特例承認申請書を次の申請期限(国税通則法第11条の適用有)までに所轄税務署長に提出し承認を受ける必要があります。

イ 課税事業者を選択する場合 特定課税期間(「調査期間」を含む課税期間)の末日の翌日から2月以内

ロ 課税事業者の選択をやめる場合 特定課税期間の確定申告書の提出期限 

調整対象固定資産や高額特定資産の購入による納税義務の免除の制限の解除

一定の法人が調整対象固定資産や高額特定資産を購入した場合納税義務の免除の制限を受けることとなりますが、新型コロナ税特法では、特例対象事業者は所轄税務署長の承認を受けることによりその制限を解除することが出来ます。

新設法人等が基準期間のない課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合

新設法人(資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上の法人)又は特定新規設立法人が基準期間のない課税期間中に調整対象固定資産を取得し、その取得した課税期間について一般課税で申告を行う場合、その取得した課税期間の初日以後3年間は納税義務が免除されませんが、この新設法人又は特定新規設立法人に該当する特例対象事業者は、所轄税務署長の承認を受けることで、特定課税期間以後の課税期間について、この3年間の納税義務が免除されない制限を解除することが出来ます。

申請期限は「特定課税期間の確定申告書の提出期限」(国税通則法11条の規定の適用を受けている場合は延長された期限)と「基準期間のない事業年度のうち、最後の事業年度終了の日」とのいずれか遅い日

高額特定資産の仕入れ等を行った場合

高額特定資産の仕入れ等を行い、その仕入れ等の日の属する課税期間について一般課税で申告を行う場合、その仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年間は納税義務が免除されませんが、特定課税期間の初日以後2年を経過する日の属する課税期間までの課税期間において高額特定資産の仕入れ等を行った特例対象事業者は、所轄税務署長の承認を受けることで、特定課税期間以後の課税期間について、この3年間の納税義務が免除されない制限を解除することが出来ます。

申請期限は「特定課税期間の確定申告書の提出期限」(国税通則法11条の規定の適用を受けている場合は延長された期限)と「高額特定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の末日」とのいずれか遅い日

高額特定資産等について棚卸資産の調整措置の適用を受けることとなった場合

高額特定資産である棚卸資産等について棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合、その適用を受けた課税期間の初日以後3年間は納税義務が免除されませんが、特定課税期間の初日以後2年を経過する日の属する課税期間までに高額特定資産等について棚卸資産の調整措置の適用を受けることとなった特例対象事業者は、所轄税務署長の承認を受けることで、特定課税期間以後の課税期間について、この3年間の納税義務が免除されない制限を解除することが出来ます。

申請期限は「特定課税期間の確定申告書の提出期限」(国税通則法11条の規定の適用を受けている場合は延長された期限)と「棚卸資産の調整規定の適用を受けることとなった日の属する課税期間の末日」とのいずれか遅い日

以上の具体例が国税庁より「新型コロナ税特法に係る消費税の特例に関するQ&A」が公表されています。そちらの方もぜひ参照してください。

簡易課税制度の適用に関する特例

簡易課税制度は、その課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円以下の場合に適用することができますが、この基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者で、今回の新型コロナウイルス感染症等の影響による被害を受けたことで、一般課税の事業者が簡易課税へ変更したい、または簡易課税を選択している事業者が簡易課税をやめたい場合については、消費税法37条の2において「災害その他やむを得ない理由が生じたことにより被害を受けた場合」の特例が設けられていて、こ
ちらを適用することになります。
この簡易課税制度の特例を受けるためには、「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」と併せて「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書」を所轄税務署長に提出し承認を受ける必要があります。

承認申請期限は新型コロナウイルス感染症等の影響による被害がやんだ日から2か月以内、被害のやんだ日がその申請に係る課税期間の末日の翌日(個人事業者の場合は、その末日の翌日から1月を経過した日)以後に到来する場合には、その課税期間の係る確定申告書の提出期限(国税通則法11条の規定の適用を受けている場合は延長された期限)となります。

なお、この特例の適用を受ける場、2年間の継続適用要件は適用されません。
また、調整対象固定資産や高額特定資産等を取得した場合の「消費税簡易課税制度届出書」の提出制限も適用されません。