2020/08/11

法人の減価償却費の取扱い

法人税法上の減価償却費の扱いについて

法人が減価償却資産を取得した場合には一定の方法に従って減価償却を行うことになります。
さて、この減価償却資産につき計算される減価償却費は会計上当然費用として計上されるものです。しかし、法人税法では下記のように取扱いが定められています。

「償却費としてその事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、償却費として損金経理した金額のうち、取得日等の区分に応じ選定した償却方法に基づき計算した償却限度額に達するまでの金額とする。」

上記の取扱いで押さえておかなくてはいけない点は次の2点です。まず減価償却費として損金経理すること。そして、そのうち損金として認められるのは限度額に達するまでの金額であること。
限度額については、法人税法では資産の種類ごとに選択できる償却方法が限られており、その選択した方法に基づいて計算します。
そのため、今期の税金を減らす目的で限度額を超えて減価償却費を計上しても、その超えた部分は今期の損金として認められないことになります。

損金経理について

法人税の計算上減価償却費が損金として認められるには「損金経理」することが必要であると述べてきました。
それではこの「損金経理」とは具体的にどういう処理なのでしょうか。法人税法では「損金経理」を以下のように定義しています。

「法人がその確定した決算において費用または損失として経理することをいう。」

これは文字通り費用・損失として会計処理するということです。法人税の確定申告は、株主総会で承認されて確定した決算を基に申告書を作成することになります。
そのため確定申告後に減価償却費の計上漏れが発覚した場合であっても、あとから更正の請求により減価償却費を追加計上することができません。
先ほど述べた通り、減価償却費は損金経理が要件となっていますので、「確定した決算において費用として経理しなかった」減価償却費に対してアクションを起こすことができないのです。
当初申告の段階できちんと処理し、減価償却費として損金の額に算入したいという意思表示をすることが大事です。

減価償却費として損金経理した金額について

上記の通り、法人税法上は減価償却費として損金経理することが求められているわけですが、ここで注意すべき点があります。
名目上減価償却費として処理していなくても、その性質上減価償却費として損金経理した金額として扱われるものがあります。

具体的には次のようなものが挙げられています。

(1)減価償却資産の取得価額に算入すべき付随費用の額のうち原価外処理した金額

(2)減価償却資産について法人税法又は措置法の規定による圧縮限度額を超えてその帳簿価額を減額した場合のその超える部分

(3)減価償却資産について支出した金額で修繕費として経理した金額のうち資本的支出の規定により損金の額に算入されなかった金額

(4)無償又は低い価額で取得した減価償却資産につきその取得価額として法人の経理した金額が、取得価額に満たない場合のその満たない金額

(5)減価償却資産について計上した除却損又は評価損の金額のうち損金の額に算入されなかった金額

(6)少額な減価償却資産(おおむね60万円以下)又は耐用年数が3年以下の減価償却資産の取得価額を消耗品費等として損金経理した場合のその損金経理した金額

(7)ソフトウェアの取得価額に算入すべき金額を研究開発費として損金経理をした場合のその損金経理をした金額

上記例は、本来は取得価額に含めたうえで減価償却すべき性質のものとして、減価償却費として損金経理した金額であるとみなされます。
うっかり取得価額に含めないといけないものを費用処理してしまったために、あとで償却費としてみなされてしまった、ということがないよう資産取得時の処理については注意を払う必要がありますね。