2020/08/05

新型コロナウイルスと税金FAQ

企業がマスクを取引先等に無償提供した場合

【問】
新型コロナウイルス感染症の拡大防止の取り組みとして関連する子会社や下請け業者などの取引先に対し、マスクや消毒液(以後、マスク等という)を無償で提供した場合、このマスク等の提供に要する費用は、法人税法上、寄附金以外の費用に該当しますか?

【答】
マスク等の無償提供が、新型コロナウイルス感染症に関する対応として、緊急かつ感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであり、次の条件を満たすものであれば、事業の遂行上必要な経費と考えられるので、その提供に要する費用(マスク等の購入費用、送料等)の額は、寄附金以外の費用に該当します。
(条件)
1.提供を行う取引先等において、マスクの不足が生じていることにより業務の遂行上、著しい支障が生じている、又は今後生じるおそれがあること

2.その取引先等が業務を維持できない場合には、貴社において操業が維持できない、営業に支障が生じる、仕入等が困難になるといった、貴社の業務に直接または間接的な影響が生じること

【解説】
マスク等が店頭から無くなり、入手困難な事態になった際に、こういった話は良く耳にしました。
無償提供は、原則は提供した相手先に対する寄附であり、寄附金の損金算入限度額の範囲内の金額のみ損金に算入され、それを超える部分は損金にはなりません。
しかし、今回のケースでは寄附金には該当しない、つまり寄附金以外の費用として、その提供に要する費用の全額が損金に算入されます。
ただし、もし無償提供先がマスク等を転売しているといった事実がある場合には、事業の遂行上必要な経費とは認められませんので、法人税法上の寄附金になります。

企業が生活困窮者等に自社製品等を提供した場合

【問】
新型コロナウイルス感染症に関連し、緊急支援の取組みとして、自社製品(食料品)を学童保育施設、子供食堂、社会福祉施設、生活困窮者支援団体、フードバンク活動を行う団体などに対して無償提供し、施設へ通う子供達や生活困窮者等への支援を行った場合、この自社製品の提供に要する費用は、法人税法上、寄附金以外の費用に該当しますか?

【答】
自社製品等の提供が、今般の新型コロナウイルス感染症に関する対応として、不特定又は多数の生活困窮者等を救援するために緊急、かつ今般の感染症の流行が終息するまでの間に限って行われるものであれば、その提供に要する費用(配送に係る費用も含む)の額は、提供時の損金の額に算入して差し支えありません。

【解説】
緊急事態宣言中には報道番組等でも、飲食店や小売店が弁当をひとり親世帯などに無償で届ける、といったニュースをよくみかけました。
このケースに関しても、寄附金には該当せずに、その提供に要する費用の全額が寄附金以外の費用として損金に算入されます。

従業員に対して見舞金を支給した場合

【問】
介護老人施設は、緊急事態宣言中に事業の継続が求められる業務のため、事業を継続していますが、従業員は新型コロナウイルス感染症の
感染リスクに対する不安を抱えながら従事しています。そこで、社内規定の慶弔基準を改定し「新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言下において介護サービスを実施する従業員には5万円の見舞金を支給する」こととし、支給しました。
この見舞金は非課税として、給与等としての源泉徴収は不要ですか?

【答】
この見舞金は非課税所得に該当し、源泉徴収不要です。
新型コロナウイルス感染症に関連して従業員が事業者から支給を受ける見舞金が次の3つの条件を満たす場合には所得税法上、非課税所得となります。

その見舞金が心身に加えられた損害につき支払いを受けるもの

(具体例)
●従業員等やその家族が新型コロナウイルスに感染したため支払いを受けるもの

●緊急事態宣言下において事業の継続を求められる事業者の従業員等で次のいずれにも該当する者が支払いを受けるもの
・多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルスの感染リスクの高い業務に従事している者
・緊急事態宣言がされる前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者

その見舞金の支給額が社会通念上相当であること

(社会通念上相当であるとされる具体例)
●その見舞金の支給額が、従業員ごとに新型コロナウイルスに感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっており、そのことが慶弔規定等において明らかにされている

●その見舞金の支給額が、慶弔規定等や過去の取扱いに照らして相当と認められる

その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと

(具体例)
●次のような見舞金は役務の対価たる性質を有していないものには該当しない
・本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの
・感染の可能性の程度等にかかわらず従業員等に一律に支給するもの
・感染の可能性の程度等が同じと認められる従業員等のうち特定の者のみに支給するもの
・支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの

【解説】
緊急事態宣言中、医療機関、生活支援関連事業、生活必需品関連事業など、営業を継続するよう求められる事業に従事されている方々に対し臨時賞与を支払うことを公表した大手スーパーなどのニュースもありました。
賞与は当然所得税が課税されますが、その賞与を見舞金として支給すれば所得税を非課税にできる、というものではありません。

見舞金を非課税所得とするためには、上記のように、一律金額ではなくリスクによって差を設けたり、慶弔規定を整備するなど細かな条件を満たして初めて非課税となります。要件に該当していなければ所得税は課税となり、源泉徴収も必要になります。

見舞金の支給を検討される場合には、事前に要件を十分に確認してください。