2020/03/11

役員給与の報酬について

経費となる役員の報酬は?

法人税法上の経費(以下「損金」といいます)となる役員の報酬は、次の3つのものです。

・定期同額給与
毎月定額で支給する報酬。
 
・事前確定届出給与
定められた期限内に税務署へ届出書を提出し、その届出した日に届出をした金額のとおり支給する報酬。
 
・業績連動給与
企業の業績に連動させた形で支給する報酬。
 
中小企業で実際に損金算入が可能な役員の報酬は、定期同額給与と事前確定届出給与です。

業績連動給与については、条文がもの凄いボリュームとなっており要件が非常に厳しいうえ、基本的に上場している企業しか適用できない状況です。
一昨年のデータによると日本にある法人が約267万社の中で、この業績連動給与を適用していた企業は約1,100社ですので、たった0.04%程度の会社しか適用していないわけです。
つまりそれだけ「使い勝手が非常に悪い!!」ということですね。
役員も頑張った分だけ報酬がもらえるので、理論上は優れた支給形態であることから、適用要件の緩和と適用範囲の拡大が今後の課題であると考えます。

以下、中小企業で適用できる定期同額給与と事前確定届出給与について確認していきます。

定期同額給与とは?

定期同額給与は先に述べたように、毎月定額の報酬を支給することにより損金に算入できるというものです。

現在は源泉等を控除した後の手取り額が同額であっても定期同額給与と認められています。

役員給与の改定期間は期首から3カ月以内であり、期中に変更した場合は一番少ない月の報酬分が定期同額給与となり、それとの差額分(改定前の分は定期同額給与として認められます)が損金不算入となります。

しかし、「業績悪化改定事由」に該当した場合には期中において減額しても損金算入が認められます。
ただ、この「業績悪化改定事由」の要件は非常に曖昧であることから、実務上は役員の報酬は変更せず、必要な分を役員が会社に貸し付けるという処理を行っているところが多いのが実態です。

話は変わりますが、先日、税務通信No.3594号P56~で「5カ月目の支給から変更した場合でも定期同額給与に該当する」というような内容の記事が載っており少し驚きましたが、これについても前提条件等いろいろとあるので、あまり鵜呑みにはせず、しっかり期首から3カ月以内で改定し、4カ月目までには変更した額を支給するように
すべきですね。
ただ、何らかの要因で「5カ月目からの支給になってしまった」という場合で税務調査で指摘を受けた場合には、上記の資料を根拠にして定期同額給与を主張してみてもいいかと思います(結果はどうなるかはわかりませんが)。

事前確定届出給与とは?

事前確定届出給与は、定められた期限内に税務署長に事前確定届出給与の届出書を提出し、その定めた日に定めた金額や株式数等を支給することによって損金算入が認められる支給方法です。
ちなみに、同族会社でない会社において、定期給与を支給しない役員に対する給与は、事前確定届出給与の届出は必要ありません。

事前確定届出給与は、役員の職務執行期間を一単位とすることを前提として、原則として一度でも事前確定届出額と相違する支給がなされたときは、その期間の全ての賞与の損金性が否定されることとなります。
ただし、例外として役員の職務執行期間中に複数回の事前確定届出給与があり、期をまたぐような事前確定届出給与がされた場合、決算日前の当該事業年度中は事前確定届出給与を届出書のとおり支給したが、翌事業年度においては届出書のとおり支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度の課税所得に影響を与えるようなものではないことから、翌事業年度に支給した事前確定届出給与のみ損金不算入と取り扱っても差し支えないこととされています。
つまり、「決算が終わってから修正するは大変なので特別に許してあげよう」というものですね。
当時はこのことを「温情解釈」とよぶ見解もありました。

事前確定届出給与の支給については、基本的に届出した日に支給すべきですが、もしも届出した日に支給するのを忘れて数日後になってしまったというような場合、当然否認される可能性はあります。
しかし、過去の裁判において支給日が違うことについては一切触れられていない判例もありましたので、そういう時にはそれを根拠として「支給日が少し異なっても事前確定届出給与に該当する!!」と主張してみてもいいかもしれないですね(結果はどうなるかはわかりませんが)。