2019/11/30

生前の財産移転には相続時精算課税を利用しよう!

相続時精算課税制度の趣旨

今までの贈与税は、『高額な税額を課税し生前贈与による財産移転を抑制し相続税の徴収漏れを防ぐこと』としていましたが、停滞している経済を活性化するため、高齢者から若年層への財産移転を円滑にするため、この制度が導入されました。

最終的な節税効果はあまりありませんが、早期に自由に資産移転が可能なことは望ましい事だとおもいます。
自分の⽬の黒いうちに財産を処分する、又は将来の相続争いを防ぐ方法としてもこの制度の利用が考えられます。

相続時精算課税の概要

(1)贈与により財産を取得した20 歳以上の子(贈与を受けた年の1 月1 日において)である相続人
(2)65 歳以上(贈与をした年の1 月1 日において)のから受ける贈与について、
(3)受贈者の選択により、暦年課税に代えて、贈与時に相続時精算課税制度の課税を選択できます。
(4) この場合、贈与財産の価額が特別控除額2,500 万円に達するまでは贈与税は課税されません。
(5)相続が発生した場合には、その贈与財産と相続財産とを合計し相続税額を計算します。
(6)既に支払った贈与税額がある場合にはこれを精算します。

<ポイント!>
この制度は、贈与者ごとの選択であることに注意してください。
父からの贈与は相続時精算課税制度を選択、母からの贈与は暦年課税、というように贈与者ごとに選択が可能です。

相続時精算課税選択届出書

相続時精算課税の適用を受けるには「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。
この届出書は贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期限内(贈与を受けた翌年の2 月1 日から3 月15 日まで)に贈与をした者ごとに作成して贈与税の申告書に添付し、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出することとされています。

なお、添付する書類は次のとおりで、これらの書類は受贈を受けた日以後に作成されたものである必要があります。
①受贈者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類で、その内容を証する書類
②受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20 歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類
③贈与者の住民票の写しその他の書類で、贈与者の氏名、生年月日を証する書類
④贈与者の戸籍の附票の写しその他の書類で、贈与者が65 歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類
※提出した贈与税の申告書は、相続税の申告の時に必要となりますので大切に保管しておきましょう。

<注意点!>
この届出を失念してしまうと相続時精算課税の適用は認められませんので、思わぬ多額の贈与税を支払うことになります。くれぐれも失念注意!
万が一、失念した場合は、相続時精算課税適用が前提の贈与であったということで、錯誤による贈与無効とでも主張するしかないですね。

土地の贈与をしたような場合にも、登記を錯誤無効として修正することで、税務署にも認められているケースが多いようです。

<豆知識!>
父親と母親の両方から贈与を受けた場合には、贈与をした者ごとに作成することとなりますので両者に対して相続時精算課税選択届出書を提出しなければなりません。
相続時精算課税に係る贈与により取得した不動産の価額が相続時精算課税の特別控除額以下であっても不動産取得税はかかります。

相続時精算課税制度の贈与税額の計算

相続時精算課税制度の選択後は、贈与財産の価額が特別控除額2,500 万円に達するまでは贈与税は課税されません。2,500 万円を超えた場合は超えた金額の20% の贈与税を納税します。

【例】
1 年⽬の贈与 1,000 万円 累計1,000 万円・・・納税なし

2 年⽬の贈与 1,000 万円 累計2,000 万円・・・納税なし

3 年⽬の贈与  500 万円 累計2,500 万円・・・納税なし

4 年⽬の贈与  500 万円 累計3,000 万円・・・納税あり

3,000 万円 - 2,500 万円= 500 万円 500 万円 × 20% = 100 万円納税となります。
以後毎年贈与があれば 贈与価額 × 20% の税額を収めなければなりません。
贈与財産の価額が2,500 万円までは贈与税が課税されないということは、大きなメリットと思われます。どうしても多額の贈与の必要がある場合に贈与税額をかなり節税することが出来ます。

<注意点!>
贈与税は節税できますが、この制度を利用した贈与財産は相続時の相続税課税価額に含まれます。また、贈与した不動産は、相続時には贈与時よりも値下がりしているかもしれません。
それでも贈与時の評価額が相続税の課税価額となってしまいます。

相続時精算課税を一度選択すると、その贈与者に対しては、選択以後は暦年課税の適用はできません( 2,500 万円の贈与以降も毎年の110 万円の基礎控除はありません)。
また、一旦提出された相続時精算課税選択届出書は撤回することができません。