軽減税率対象品の区分経理の対応について
中小事業者の税額計算の特例
令和元年10月1日から、消費税等の税率は、標準税率は10%(うち地方消費税率は2.2%)、軽減税率は8%(うち地方消費税率は1.76%)の複数税率となります。
軽減税率制度の下では、標準税率と軽減税率を税率ごとに区分して売上げ及び仕入れを記帳し(以下、区分経理といいます。)、これを基に、課税売上げに係る消費税額及び課税仕入れ等に係る消費税額を計算することになります。
ただし、区分経理に対応する準備が整わないなど、税率ごとに区分することにつき「困難な事情」(※1)がある中小事業者(※2)については、令和元年10月からの一定期間、税額計算の特例を用いて課税標準額及び課税仕入れ等に係る消費税額を計算することができます。
※1
「困難な事情」とは、例えば、課税期間中に国内において行った課税売上げ又は課税仕入れ等につき、区分経理が行えなかった場合等の困難な事情をいいます。
そのような場合には、困難の度合いを問わないとされています。
※2
中小事業者とは、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者をいいます。
以降では、売上税額と仕入税額それぞれについての計算の特例についてみていきます。
売上税額の計算の特例
課税売上げを区分経理することにつき困難な事情がある中小事業者は、経過措置として、下記の1~3の方法により計算した一定の割合を課税売上の合計額に掛けて軽減税率の対象となる課税売上を計算する特例が認められています。
この売上税額の計算の特例を適用できる期間は、課税期間のうち、令和元年10月1日から令和5年9月30日までの期間となり、同一課税期間でも令和5年10月1日以降の取引については特例は適用できません。
1. 小売等軽減仕入割合の特例
対象事業者(下記イ~ハの全ての要件を満たす中小事業者が適用できます。)
イ 軽減対象資産の譲渡等を行う、卸売業又は小売業を営む事業者
(卸売業及び小売業の範囲は、簡易課税制度の事業区分と同一です。)
ロ 特例の適用を受けようとする課税期間中に簡易課税制度の適用を受けない事業者
ハ 課税仕入れ等について、税率ごとに区分経理できる事業者
小売等軽減仕入割合の計算方法
小売等軽減仕入割合 =
分母のうち、軽減税率の対象となる売上げにのみ要するものの金額
-------------------------------
課税仕入れ等の合計額のうち、卸売業又は小売業にのみ要するものの金額の合計額
軽減売上割合の特例
対象事業者
軽減対象資産の譲渡を行う中小事業者であれば、業種に関係なく適用することができます。
軽減売上割合の計算方法
軽減売上割合 =
分母のうち、軽減税率の対象となる課税売上げの合計額
------------------------------
通常の事業を行う連続する10営業日における課税売上の合計額
上記1及び2の割合の計算が困難な場合
主として軽減対象資産の譲渡等を行う事業者は、これらの割合を50/100として計算することができます。
なお、主として軽減対象資産の譲渡等を行う事業者とは、適用対象期間中の課税売上のうち、軽減税率の対象となる課税売上の占める割合がおおむね50%以上である事業者をいいます。
仕入税額の計算の特例
課税仕入れ等を区分経理することにつき困難な事情がある中小事業者は、次の方法により仕入税額を計算する特例が認められています。
この仕入税額の計算の特例を適用できる期間は、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日の属する課税期間となり、売上税額の計算の特例と異なり、同一課税期間であれば令和2年10月1日以降の取引であっても特例を適用することができます。
1. 小売等軽減売上割合の特例
対象事業者(下記イ~ハの全ての要件を満たす中小事業者が適用できます。)
イ 軽減対象資産の譲渡等を行う、卸売業又は小売業を営む事業者
(卸売業及び小売業の範囲は、簡易課税制度の事業区分と同一です。)
ロ 特例の適用を受けようとする課税期間中に簡易課税制度の適用を受けない事業者
ハ 課税売上げについて、税率ごとに区分経理できる事業者
小売等軽減売上割合の計算方法
小売等軽減仕入割合 =
分母のうち、軽減税率の対象となるものの金額
-----------------------
卸売業又は小売業に係る課税売上の合計額
2. 簡易課税制度の届出の特例
原則として適用しようとする課税期間の開始前までに簡易課税制度選択届出書の提出が必要ですが、特例として適用しようとする課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出し、同制度を適用することが可能です。
また、調整対象固定資産や高額特定資産の仕入れ等を行った場合、通常は一定期間、簡易課税制度選択届出書を提出・選択することができませんが、
その課税期間中の課税仕入れ等を税率ごとに区分して合計することにつき、「著しく困難な事情があるとき」(※)は、簡易課税制度の届出の特例の適用を受けようとする課税期間の末日までに簡易課税制度選択届出書を提出すれば、簡易課税制度の適用を受けることができます。
※ 「著しく困難な事情があるとき」とは、課税仕入れを区分経理することが著しく困難である場合をいい、例えば、軽減税率の対象となる課税仕入とそれ以外の課税仕入がある場合であっても、軽減税率の対象となる課税仕入がそれ以外の課税仕入れの回数に比し、著しく少ない場合や、建設業、不動産業など、主として軽減税率の対象となる課税仕入れを行わない容易に区分経理を行い得る事業者が、事務所、営業所等に自動販売機を設置した場合の清涼飲料水の仕入や、福利厚生、贈答用として菓子等の仕入を行った場合は、「著しく困難な事情があるとき」に該当しません。