2019/08/25

源泉徴収が必要な報酬・料金等の概要と事例

源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲は下記の通りです。

① 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

② 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金

③ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

④ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金

⑤ 映画、演劇、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金

⑥ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金

⑦ プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金

⑧ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

源泉徴収の対象となる報酬・料金等の範囲は広いので、源泉徴収する必要があるかどうか気を付けたいところです。

このような源泉徴収の対象となる報酬・料金等の支払をする場合には、必ず源泉徴収をしなければならない訳ではありません。
報酬・料金等を支払う側の人でも、下記の人は、ホステス等に報酬・料金等を支払う場合を除いて、源泉徴収をする必要はありません。

① 給与の支払者でない個人事業者

② 常時2人以下のお手伝いさん・運転手さん等のような家事使用人に対する給与・退職金等を支払っているような人

次は、報酬・料金等の源泉徴収を行う場合の注意事項についてみていきたいと思います。

報酬・料金等の源泉徴収を行う場合の注意事項

報酬・料金等の源泉徴収を行う場合は、下記のような注意が必要です。

1.支払を受ける者が研究会、劇団などの団体で、個人か法人かが明らかでない場合は、その支払を受ける者が、法人税を納める義務があること又は定款、規約、日常の活動状況などから、団体として独立して存在していることを明らかにした場合は法人として取り扱い、そうでなければ個人として取り扱います。

2.謝礼、研究費、取材費、車代などの名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば源泉徴収の対象になります。しかし、報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。

3.金銭ではなく、物品で支払う場合も報酬・料金等に含まれます。

4.報酬・料金等の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、
その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。

次は、報酬・料金等の源泉徴収の間違えやすい事例で源泉徴収が必要かどうかの判定をみていきたいと思います。

報酬・料金等の源泉徴収の間違えやすい事例(写真撮影現場にて)

間違えやすい事例は多々ありますが、今回は写真撮影現場でのヘアメイクの謝礼と写真撮影の謝礼に対する源泉徴収の事例を説明致します。

ヴィジュアル系バンドが所属している芸能事務所が、次の目的で個人のカメラマンに写真撮影、個人のヘアメイクアーティストにヘアメイクを依頼し、その謝礼を支払った場合、これらの謝礼について所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が必要になるでしょうか。

① バンドメンバーの写真を音楽雑誌に掲載するため

② バンドメンバーの写真を事務所ホームページへ掲載するため

先ず、ヘアメイクについてですが、音楽雑誌やホームページ用の写真撮影に際して支払うヘアメイク料は、所得税法第204条第1項第1号(源泉徴収義務)及び所得税法施行令第320条第1項(報酬、料金、契約金又は賞金に係る源泉徴収)に規定する報酬には該当しません。
したがって上記の事例の場合、ヘアメイクアーティストに支払う謝礼については源泉徴収する必要はありません。
ただし、ヘアメイク料相当額を写真の報酬に含めて、カメラマンに支払う場合や、映画、演劇その他芸能又はテレビジョン放送に係る美粧の報酬として、ヘアメイク料を支払う場合には源泉徴収を要することとなります。

次に写真撮影についてですが、写真に対する報酬・料金で源泉徴収の対象とされるのは、雑誌、広告、その他の印刷物に掲載するための写真の報酬・料金です。
どちらもバンドメンバーの写真を撮影してもらうために個人のカメラマンに報酬を支払ったので、源泉徴収をする必要があるように思われるかもしれませんが、実は①と②では源泉徴収の取り扱いが異なります。

①の音楽雑誌に掲載するための写真の謝礼については、音楽雑誌という印刷物に掲載される写真の報酬に該当するため、源泉徴収の必要があります。
しかし、②の事務所ホームページへ掲載するための写真の謝礼については、その写真が印刷物に掲載されるものではありませんので、源泉徴収の必要はありません。

①の謝礼から源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税は、その報酬の10.21%(1回の支払が100万円を超える場合には、その超える部分については20.42%)に相当する金額です。

個人のヘアメイクアーティストにヘアメイクを依頼したり、個人のカメラマンに写真撮影を依頼したら源泉徴収をしなければならないと決めつけるのではなく、その目的によって源泉徴収の取り扱いが異なりますので、取引内容についても確認するようにご注意ください。