2019/07/20

減価償却資産の判断

減価償却とは

減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。

事業又は業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、工具器具備品、車両運搬具などの有形固定資産等は一般的には時の経過によってその価値が減少します。
このような資産は減価償却資産といい、減価償却資産の取得に要した金額は取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間に応じて一定の耐用年数を用いて分割して各年分の必要経費とすべきものです。

一定の耐用年数を用いる減価償却資産の例外として下記のものが挙げられます。

●使用期間が1年未満または取得価額が10万円未満のもの
「少額の減価償却資産」として取得価額を購入した期の経費にすることができます。

●取得価額が10万円以上20万円未満のもの
「一括償却資産」として3年間で均等に償却することができます。

●中小企業者で取得価額が30万円未満のもの

「中小企業者等の少額減価償却資産」として年間300万円を限度に取得価額の全額を経費にすることができます。
ただし、法人である場合には青色申告者である資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人等、一定の要件を満たすことが必要です。
個人事業者の場合にも青色申告者であることは要件となっています。

非減価償却資産

非減価償却資産とは、時の経過や使用によりその価値が減少しないことを理由として、減価償却の対象とならない固定資産のことを言います。
この非減価償却資産は減価償却することができない資産です。

例えば、土地・書画・骨董品で物価の変動により価値が増減はするものの、時間の経過を理由として価値が変動しないものなどが挙げられます。

美術館に展示されているような絵画や美術品であれば価値が減少しないというのも納得できますが、展示ではなく使用する事を前提としている動産であっても一部の歴史的価値のある物については減価償却ができません。

では、減価償却できないものとできるものの判断はどこで行うのかを検討してみます。

減価償却資産・非減価償却資産の判定

美術品等が減価償却資産に該当するかどうかの判定については、取扱通達(法基通7-1-1等)の改正が行われており、平成27年1月1日以後取得したものについては下記の通りとなります。

改正後の通達では、取得価額が1点100万円未満である美術品等は原則として減価償却資産に該当し、取得価額が1点100万円以上の美術品等は原則として非減価償却資産に該当するものとして取り扱うこととしました。
なお、取得価額が1点100万円以上の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少することが明らかなもの」に該当する場合は、減価償却資産として取り扱うことが可能です。

ただし、取得価額が1点100万円未満の美術品等であっても、「時の経過によりその価値が減少しないことが明らかなもの」は、減価償却資産に該当しないものと取り扱われます。

償却できるものの例として、次に掲げるものは、100万円以上の美術品であっても「時の経過によりその価値が減少する事が明らか」とされるものに当てはまります。

・会館のロビーや葬祭場のホールのような不特定多数の者が利用する場所の装飾用や展示用(有料で公開するものを除く。)として取得されるものであること。

・移設することが困難で当該用途にのみ使用されることが明らかなものであること。

・他の用途に転用すると仮定した場合に、その設置状況や使用状況から見て美術品等としての市場価値が見込まれないものであること。

これらの美術品であっても有料で展示した場合や、その他使用ではなく展示を目的とした高額なヴィンテージカー等も減価償却できないとされています。
万が一、減価償却できない資産を減価償却してしまった場合は、その後の修正申告により延滞税や過少申告加算税が課せられることもあります。
通常、減価償却資産として計上している固定資産であっても、その価値の増減はよく見極め、減価償却資産なのか非減価償却資産なのかは慎重に検討し、然るべき処理をすべきですね。