2019/07/02

2019年7月から施行される相続税の改正内容

自宅の生前贈与が特別受益の対象外に

結婚期間が20年以上の夫婦間で、配偶者に対して自宅の遺贈または贈与がされた場合には、原則として、遺産分割における計算上、遺産の先渡し(特別受益)がされたものとして取り扱う必要がないことなりました。

改正前は、被相続人が生前、配偶者に対して自宅の贈与をした場合でも、その自宅は遺産の先渡しがされたものとして取り扱われ、配偶者が遺産分割において受け取ることができる財産の総額がその分減らされていました。そのため、被相続人が、自分の死後に配偶者が生活に困らないようにとの趣旨で生前贈与をしても、原則として配偶者が受け取る財産の総額は、結果的に生前贈与をしないときと変わりませんでした。

今回の改正により、自宅についての生前贈与を受けた場合には、配偶者は結果的により多くの相続財産を得て、生活を安定させることができるようになります。

遺産分割前の被相続人名義の預貯金の一部払い出しが可能に

改正前は、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済など、お金が必要になった場合でも、相続人は遺産分割が終了するまでは被相続人の預貯金の払戻しができないという問題がありました。
そこで、このような相続人の資金需要に対応することができるよう、遺産分割前にも預貯金債権のうち一定額については、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関で払戻しができるようにしました。(上限は一金融機関あたり150万円です。)

遺留分について

配偶者や子供等には最低限の相続分として遺留分が認められています。従前は遺留分による減殺の請求により財産が共有となり、その共有部分を遺留分権利者に返還する事で遺留分は満たされる事となっていましたが、今回の改正で遺留分は金銭で請求する事とされましたので遺留分義務者は弁済すべき金銭を確保する事が必要ですね。

さらにこの遺留分の算定をするための特別受益については相続開始前10年間の贈与までとされました。(従前は区切りがありませんでした。)

被相続人の療養看護等をした親族は金銭請求が可能に

従前からも相続人に対しては寄与分が認められていましたが今回の改正で相続人でなくとも例えば、夫亡き後義父の介護などをした夫の妻も無償で被相続人の介護や看病に貢献し、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、相続人に対し、金銭の請求をすることができるようにしました。

金銭の請求という事は義父と同居していた場合自宅をもらうというわけにはいかなそうです。
仮に自宅をもらった場合は代物弁済という事になり相続人に対し譲渡所得課税がされます。

特別寄与者は相続税が生じる場合は2割加算の対象となり、さらに生前贈与加算も適用があり、相続税の申告期限内で全てまとまっておればかまいませんが、他の相続人の方は修正申告、更正の請求をする事になります。
すごく面倒くさそうです。
面倒を見てくれている親族には生きているうちに恩返しをしておくのが一番ですね。