2019/06/24

重加算税について

重加算税はどういう場合に課されるか?

重加算税制度については、申告納税制度や青色申告制度と共に納税環境の整備として、昭和25年のシャウプ勧告に基づいて創設されました。
その後、昭和37年の国税通則法に整備統合され、現在に至っています。

国税通則法68条1項によると「隠蔽仮装行為」があった場合に重加算税が課されます。
とはいえ、この隠蔽仮装行為について条文ではハッキリと明文化されておらず、「通達」にてその内容が例示列挙されており、これによると二重帳簿を作成していたり、帳簿書類を破棄、隠匿、改ざん、偽造などの不正事実があった場合が隠蔽仮装行為に該当することとされています。
ただ、「通達」というのは課税庁側はこれに従う必要はありますが、納税者はこれに縛られるものではなく、裁判においては「通達」に記載されていることは根拠にはならないものです。
ですが、裁判になった場合には、課税庁側も「通達」という言葉は使わず、知恵を絞って別の角度から攻めてきますし、裁判官も税法について精通している方は少ないので、「通達」は納税者側としても無視するわけにはいかないものではあります。
裁判になった場合は、「この門をくぐるものは一切の希望を捨てよ!」といわれているように、納税者が敗訴する確率は非常に高いですし、課税庁側との交渉も出来なくなりますので、税務調査でついカッとなっても「裁判で争う」という考え方はしない方がいいでしょう。

過去の裁判において、隠蔽仮装行為については「故意」に行われたか否かが争点となっているものが多いです。「故意」であれば隠蔽仮装であり、そうでなければ隠蔽仮装ではないという判断ですね。

しかし、当時の立法関係者の話では、「行為が客観的に見て隠蔽又は仮装と判断されれば足り、納税者の故意の立証まで要求しているものではない。この点において罰則規定における『偽りその他不正の行為』と異なり、重加算税の賦課に際して、税務署長の判断基準をより外形的、客観的ならしめようとする趣旨である。」と述べており、「故意」かどうかは関係ないということを説明しています。

とはいえ、やはり学説上においては「故意」を含むとする見解が有力ではあるようです。

ただ、故意であったかどうかというのも、結局のところ客観的行為として概観から判断されることになるのでしょうね。

重加算税が課されるとどうなるの?

重加算税が課されると、以下のように高い税率で加算税を納付する必要があります。

・期限後申告等があった日前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税又は重加算税を課された(徴収された)ことがなく、過少申告加算税又は不納付加算税に代えて徴収される重加算税の場合・・・35%

・期限後申告等があった日前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税又は重加算税を課された(徴収された)ことがなく、無申告加算税に代えて徴収される重加算税の場合・・・40%

・期限後申告等があった日前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税又は重加算税を課された(徴収された)ことがあり、過少申告加算税又は不納付加算税に代えて徴収される重加算税の場合・・・45%

・期限後申告等があった日前5年以内に同じ税目に対して無申告加算税又は重加算税を課された(徴収された)ことがあり、無申告加算税に代えて徴収される重加算税の場合・・・50%

そして一度でも重加算税が課されると、いわゆる税務署内のブラックリストに載ることとなり、一定期間の頻度で税務調査が入ることになります。

以前、ある経営者が、
「つい先日、税務調査があったが是認であった。3年前にも税務調査があったがその時も是認であり、反面でもなさそうだし、今回は何で税務調査に来たのかよくわからない。」
とおっしゃっておられましたが、詳しく聞いてみると、それ以前の税務調査で多額の追徴金が発生し、重加算税も課されたということでした。

一度ブラックリストに載ってしまうと、その後でいかに真面目に改善しようとリストからは消える事はないという話ですので、真偽の程は不明ですが、今回のケースも恐らくはそれが要因であるように思われます。

税務調査で重加算税と指摘されたら?

平成29年度のデータでは、税務調査のあった会社のうち、およそ5社に1社が重加算税を課されたというデータとなっています。

税務調査官(以下、「調査官」という)の立場からすれば、「如何にして重加算税を課するか」ということが税務調査での大きな目標となっているケースもあります。
そのため、税務調査の際に何でもかんでも重加算税を課そうとする調査官に遭遇したという経営者も決して少なくはない事でしょう。

それでは、税務調査で「重加算税だ!」と指摘されたら、どうすればいいでしょうか?

経営者の中には、納得はしていないものの「税務調査をとっとと終わらせたい」との気持ちから、調査官の言われるがままに反省文を書かされ調書に押印してしまったという方も多いことでしょう。

しかし、こと重加算税については、まず「故意」でないことを主張した上で、『どういった行為が仮装隠蔽に該当したのか』『その行為が仮装隠蔽である条文や判例の根拠は何なのか』を具体的にその根拠を確認し、納得できるまで相手としっかり話し合うべきでしょう。
また、その際に相手側が「通達」を根拠に持ち出してきたのであれば「『通達』は法律上、納税者が縛られるものではない。」旨を軽く主張すれば、「こいつ、出来る」と思わせて相手を牽制することができるかもしれません。

重加算税が課されると、先に述べたようなペナルティーが待っています。

調査官が反省文を書かせるのは、それが無ければ重加算税を課すことができないというケースも多いようです。反省文は課税庁側にとって納税者の自白で決定的な不正事実の証拠となりますので、安易に言われるがままの反省文は書くべきではありません。

とはいえ大原則としては、ルールを守って間違いのない税務処理をし、重加算税となるような疑いをかけられる行為は行わないということでしょうね。