2019/05/21

近々改正される保険について

長期平準定期保険の保険料

法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人を被保険者として加入した生命保険のうち、長期平準定期保険に分類される保険の保険料について、通達の基本的な考え方とその取扱いについてお伝えします。

※詳細は国税庁法令解釈通達(平成20年2月28日課法2-3)をご確認下さい。

【保険料に関する基本的考え方】

・保険期間が長期に渡る定期保険は、支払保険料の平準化のため、保険事故の発生可能性が相対的に低い保険期間前半に、保険期間後半の保険料の前払保険料が含まれていると言える。

・損金算入を適正に行うため、特に保険期間前半については、全額を損金とすることなく、前払費用として資産計上すべきである。

・保険事故の発生可能性の高くなる保険期間後半には、前半に積み立てた前払費用を取り崩し、損金に加算すべきである。

【取扱い方法】

通達では、上述した保険期間の前半と後半について、
保険期間の前半 = 前払期間 = 保険期間の60%相当期間
保険期間の後半 = 前払期間経過後の残余の期間
と分け、支払保険料の取扱い方法を示しています。

両期間の取扱い方法は次のとおりです。
前払期間  : 半分を資産(前払費用)、もう半分は損金
残りの期間 : 全額を損金、
前払期間に計上した前払費用も取り崩して損金(期間按分が必要です)

改正案と最高解約返戻率

保険会社各社の販売する各保険商品の多様化や長寿化等その他事由により、現行の支払保険料の額に一定割合を乗じた金額を一律の期間資産計上する方法について、近々に見直しされることが確実視されています。

※詳細は国税庁パブリックコメント案件番号410300052「法人税基本通達の制定について」(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)をご確認下さい。(パブリックコメントの意見募集は5/10にて終了しています。)

国税庁が発表した改正案では、前払費用の額を「最高解約返戻率」にて算出し、
最高解約返戻率が高い = 資産計上が多い(損金が少ない)
ものとして、当該返戻率を基準に取扱いを分けることとしました。

また、保険期間の区分についても
資産計上期間 →  → 取崩期間
に分けることとしました。
※資産計上期間と取崩期間は連続しません。(どちらでもない期間があります)

例)最高解約返戻率が50%超85%以下の場合

資産計上期間
保険期間開始の日から、当該保険期間の100分の40相当期間を終了する日まで

資産計上額
当期分支払保険料の額に、100分の40を乗じて算出した額
(最高解約返戻率が70%超85%以下の場合は100分の60)

取崩期間
保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで

取崩額
資産計上した金額の累計額を取崩期間の経過に応じて均等に取り崩した額

なお、解約返戻率の計算方法について、
「保険契約時において契約者に示された解約返戻金相当額について、
それを受けることとなるまでの間に支払うこととなる保険料の額の合計額で除した割合」
としています。

この解約返戻率は年々変化することから、最高となる時点にフィックスし、資産計上割合を算出することが簡便性の観点から相当と国税庁は判断しているようです。

終身って116歳まで!?

改正案の中で(個人的に?)安心した点と気になった点が2つありました。

①現契約への遡及無し

通達が改正されたとしても、適用時期として
「平成31年〇月〇日(改正通達の発遣日)以後の契約に係る定期保険
又は第三分野契約の保険料について適用します」
とあります。

つまり、既に契約されている保険については、通達改正後も
現在の取り扱い方法から変更する必要は無さそうですね。

②計算上の保険期間が116歳までに

がん保険などのいわゆる第三分野保険で、保険期間が終身である場合、計算上の保険期間を、
現行  : 加入時の年齢から105歳まで
改正案 : 加入時の年齢から116歳まで
に変更する旨が記載されておりました。

これは、保険計算の基礎となる標準生命表が昨年改定され、最終年齢が引き上げられたことによる影響と考えられます。

例)40歳で保険期間終身、最高解約返戻率70%の保険契約をした場合
保険期間   : 76年  (=116歳-40歳)
資産計上期間 : 70歳まで(=40歳+76年×40%)
取崩期間   : 97歳から(=40歳+76年×75%)
※端数切捨て

途中解約せずに前払費用を取り崩すのは、かなり難しくなりそうですね。

最後に蛇足ですが、令和元年5月時点において
97歳の方  : 大正10年または大正11年生まれ
116歳の方 : 明治35年または明治36年生まれ
となります。

さらに蛇足ですが、今年3月に福岡県の116歳の女性が、存命中世界最高齢にギネス社から公式認定されたとのこと。(前払費用を全て取り崩すのはギネス級偉業!?)

先達たちを見習って、次の御代・次の次の御代まで頑張りましょう!!

≪参考≫
国税庁法令解釈通達 法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて
昭和62年6月16日直法2-2(例規)
平成8年7月4日課法2-3(例規)により改正
平成20年2月28日課法2-3、課審5-18により改正
国税庁パブリックコメント案件番号410300052「法人税基本通達の制定について」
(法令解釈通達)ほか1件の一部改正(案)定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い
(パブリックコメントの意見募集は5/10にて終了しています。)