2019/05/07

税金の時効

税金の時効

税金にも時効はあります。
税金の時効には二つの概念があります。

一つ目が民法の消滅時効となります。

そもそも時効とは?

一般に民法における時効と、刑法における時効とに大別されます。
このうち税金の時効が関係するのは民法における時効です。

では、民法における時効とは?

ある事実状態が一定の期間(時効期間)継続したことを法律要件として、
その事実状態に合わせて権利ないし法律関係の得喪変更を生じさせる制度をいう。
144条以下に規定があり、取得時効と消滅時効とに分かれる。”
出典:『ウィキペディア』

税金の時効は国税の徴収を目的とする国の権利が消滅することを意味するため
消滅時効に該当します。

国税通則法第72条にもその旨の記載があります。

(国税の徴収権の消滅時効)

第七十二条 国税の徴収を目的とする国の権利(以下この節において「国税の徴収権」という。)は、その国税の法定納期限(第七十条第三項の規定による更正若しくは賦課決定、前条第一項第一号の規定による更正決定等又は同項第三号の規定による更正若しくは賦課決定により納付すべきものについては、これらの規定に規定する更正又は裁決等があつた日とし、還付請求申告書に係る還付金の額に相当する税額が過大であることにより納付すべきもの及び国税の滞納処分費については、これらにつき徴収権を行使することができる日とし、過怠税については、その納税義務の成立の日とする。次条第三項において同じ。)から五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。

2 国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。

3 国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する。

上記、国税通則法72条より、国税の徴収権は国税の法定納期限より5年間行使しないことによって消滅します。

さらに、国税の徴収権の時効は民法の規定を準用していますが、援用をしなくても時効が成立します。
(民法の消滅時効では援用の意思表示を書面等によって行うことで初めて時効が成立します。)

ただし、民法の規定を準用すると言うことで注意しなければならないこともあります。

それは消滅時効の中断です。

民法での時効を中断させる方法は、
①請求
②差押え・仮差押え・仮処分
③債務者の承認
の3つがあります。

国税については、上記の他に税務署長によってなされる国税債権を実現させようとする行為、すなわち更正、決定、賦課決定、納税の告知、督促、交付要求のそれぞれについて、その効力が生じた時に消滅時効が中断し、中断継続期間を経過した時から、新たに時効期間が進行することとされています。

また、納税申告、納税の猶予の申請又は換価の猶予の申請、延納の申請及び一部の納付などは、納税者の承認があったものであり、時効が中断することになります。

賦課権の除斥期間

二つ目は賦課権の除斥期間となります。

まず賦課権とは、税務署長が国税債権を確定させる処分、すなわち、更正、決定及び賦課決定を行うことができる権利です。

賦課行為は、税務署長が納税義務を確定させるもので、いわゆる準法律行為たる確認の性格を持ち、一種の形成権と考えられています。

この賦課権が形成権であるとする以上、およそ時効制度になじまないとされているのが一般ですので、賦課権の期間制限には除斥期間の制度が採られています。

除斥期間とは、法律関係の速やかな確定を趣旨として、一定期間の経過によって、権利が当然に消滅する制度のことをいいます。

除斥期間の主な特徴は、次の二つです。
① 中断がない。
② 権利の存続期間があらかじめ予定されていて、その期間の経過によって権利が絶対的に消滅し、当事者の援用を要しない。

除斥期間の起算日

■申告納税方式による国税の賦課権を行使できる期間の起算日

法定申告期限の翌日

ただし、還付請求申告書が提出されたものについては、その提出日の翌日が起算日となります。

(注)還付請求申告書とは、還付金の還付を受けるための納税申告書で期限内申告書以外のものをいいます。

■賦課課税方式による国税の除斥期間の起算日

①課税標準申告書の提出を要する国税については、その提出期限の翌日

②課税標準申告書の提出を要しない国税については、その納税義務の成立した日の翌日

除斥期間
■3年
課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があったものに係る賦課決定
(納付すべき税額を減少させるものを除く。)の除斥期間は3年となります。

(注)現在の国税で課税標準申告書を提出する主要税目はありません。

■5年
更正、決定及び賦課決定(上記3年の除斥期間を除く。)の除斥期間については原則5年となります。

(移転価格税制に係る法人税の更正・決定等及び贈与税の更正・決定等については6年となります。)

■7年
偽りその他不正の行為により、税額の全部若しくは一部を免れ又は還付を受けた場合における更正決定等又は偽りその他不正の行為により、その課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるとして納税申告した場合における更正(次の9年の除斥期間の適用を受けるものを除く。)の除斥期間は7年となります。

■9年
法人税に係る純損失等の金額で当該課税期間において生じたものを増加させ、若しくは、減少させる更正又は当該金額があるものとする更正の除斥期間は9年となります。

(注)法人税に係る純損失等の金額についての更正は、平成30 年4月1日以後に開始する事業年度において生じるものについては10 年とする改正が行われています。

税務署長に賦課権が無くなれば、税金の金額が確定できないため納税を免れるということになります。

まとめ

税金の時効としては、民法の消滅時効と賦課権の除斥期間がある事を見てきました。
その違いをおさらいしたいと思います。

消滅時効

・国税の徴収権を5年間行使しないと時効により消滅
・援用は不要
・時効の中断がある。

賦課権の除斥期間

・賦課権は形成権であり時効制度になじまないため、賦課権の期間制限として除斥期間がある。
・除斥期間は3年、5年、7年、9年(10年)がある。
・援用は不要
・中断がない。

まとめ

税金には消滅時効と賦課権の除斥期間があるため、納税の免除は法律上はありますが、実際に納税の免除はほぼありません。

なぜなら税務署は税金を徴収することが仕事です。
時効なら確実に中断を行いますし、除斥期間になる前に決定、更正をしてきます。

時効を期待するより、確実な節税や資金繰りを心掛けたいものです。