2019/05/07

出張旅費について

出張旅費は非課税

会社が役員や従業員に支給する手当(残業手当、住宅手当、家族手当など)については、原則として給与所得となり、所得税・住民税が課税されますが、通勤手当については、「通常必要なものと認められる範囲」であれば、所得税・住民税は課税されません。
会社の職務遂行のための旅行に際して支給される金品(いわゆる「出張旅費」)で、その旅行について通常必要と認められるものについては「非課税」とされています。
非課税となる出張旅費には、交通費、宿泊費、出張手当(日当)といったものがあります。
交通費や宿泊費については、実費精算している会社が多いですが、出張手当(日当)を支給している会社は本人に渡し切りで、実費精算は不要になっているのではないでしょうか。
出張手当(日当)とは、出張の際、身の回り品や外食代など普段よりも余分な支出が増えることから、会社によってはその分を手当として支給しようというものです。

所得税は非課税・消費税は課税対象

国内の出張又は転勤のために、役員又は使用人に対して支給した出張旅費、宿泊費、日当については、支給した金額のうちその旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れになります。
ただし、海外への出張又は転勤のために支給した出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入れになりません。
また、会社が使用人等に支給する通勤手当(通勤定期等の現物による支給を含む。)のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、
その全額が課税仕入れになります。
しかし、残業手当や住宅手当のような「労働の対価、福利厚生」であれば、給与所得となり、消費税の課税対象とはなりません。

非課税と認められる範囲

非課税とされる旅費の範囲は以下のように規定されています。
「非課税とされる旅費の範囲」
法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
1.その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
2.その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

「その旅行について通常必要と認められるもの」であれば非課税と規定されていますが、明確な基準は定められていません。

出張旅費規程を作成しましょう。

出張旅費について税務署から非課税と認めてもらうためには、出張旅費規程を作成しておきましょう。
またカラ出張を疑われないためにも、出張先・期間・目的等を記載し、交通費などの領収書を添付した「出張旅費精算書」や「出張報告書」も作成しておきましょう。

「出張旅費規程」を作成する主な事項は以下の内容になります。
1. 目的
2. 適用範囲
3. 出張の定義
4. 旅費の種類
5. 宿泊費用の限度額
6. 日当の計算方法
7. 出張手続き(出張の申請・承認、旅費の仮払い、旅費の精算について)

参考までにおおむね下記のような文章になります。

「出張旅費規程」
1.この規定は、就業規則第〇〇条の規定に基づき、役員および社員が業務のために出張する場合の手続および旅費に関して定める。
2.本規定は、原則として役員および正社員に適用する。但し、正社員以外の者であっても役員の承認を得ている場合は、本規定を適用することができる。
3.出張とは、通常勤務地を起点として目的地までの距離が片道〇〇キロメートル以上の場所に移動し、職務を遂行するものをいう。
4.本規定の旅費の種類は、交通費、日当及び宿泊費用の三種類とする。
・利用する交通機関は、鉄道、船舶、飛行機、バスとし、タクシーはやむを得ない場合に限り利用できるものとする。
5.出張による1泊あたりの宿泊費の限度額は、役員 〇〇〇〇円、管理職 〇〇〇〇円、一般社員 〇〇〇〇円とする。
6.日当は1日につき次に定める金額とし、出発の日から帰着までの日数によって計算する。 役員 〇〇〇〇円、管理職 〇〇〇〇円、一般社員 〇〇〇〇円
7.出張を命じられた者は所定の「出張申請書」に必要事項を記入し、所属上長に提出し、承認を受けなければならない。
・出張旅費は「出張申請書」に基づき仮払いをすることができる。
・出張業務が終了した場合は、帰着後一週間以内に所定の旅費精算書を以って行うものとする。

会社にとって必要な内容を追加し、適正な規定の作成をしましょう。
金額設定については明確な基準がありませんので、常識範囲内と判断できる費用を設定するようにしてください。
また国税庁が日当の上限を公表していませんので「社会通念上の常識範囲」という見解で金額を設定するようにしてください。