2019/04/24

企業の設備投資の補助金

設備投資のための補助金

新しい事業を始めるにあたって、設備投資を考えている。
生産ラインを増強し、生産性を高めたい。

そのようなプランをお持ちのみなさま、設備投資について補助金が受けられる可能性があることをご存じでしょうか。
国や地方公共団体は、産業育成または特定事業促進等の目的で補助金制度を設けています。

では、実際にどのような内容の補助金があるのでしょうか。

現在募集中のものでは、中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス補助金」という制度があります。
制度の趣旨は、製造機械の購入、最新の加工機等の購入などを支援することにより中小企業の生産性向上を図る、というものです。

そして、この趣旨にもとづいているかの審査が行われます。
具体的には、事業計画書の提出や事業を始めた後の経過及び実績の報告などを行うことが求められています。
その審査に通過すると補助金が交付されます。

機械の購入は一例であり、他にも補助金の対象となる事業は多岐にわたります。

ただし、その公募期間は短いものが多いので、補助金の活用を考えているという場合には常にアンテナを張っておく必要があります。

交付までの事務処理など煩雑な部分はありますが、補助金を活用できれば事業遂行の大きな助けとなりますね。

補助金を受け取った後の会計処理

実際に法人が補助金を受け、設備投資をした場合の会計処理について解説していきたいと思います。

国からの補助金といえど、受け取った時には収益として計上しなければなりません。

設備投資のために補助金を受けた。
でも、その補助金は収益となり法人税額が増加してしまう…。

これでは補助金の効果が薄れてしまいます。

そこで、一定要件のもと圧縮記帳という会計処理が認められています。

圧縮記帳は、補助金を受けた時に一時に課税をするのではなく、次年度以降に課税を繰り延べる制度です。
あくまでも課税のタイミングを先送りする制度であり、課税されなくなるわけではない点に注意が必要です。

圧縮記帳を適用するための要件は以下の通りです。

・固定資産取得に充てるための補助金の交付を受けること
・交付事業年度において当該補助金をもって交付目的に適合した固定資産を取得すること
・交付事業年度終了の時までに当該補助金の返還不要が確定すること

これらすべての要件を満たすことが必要です。
さらに、会計処理方法にも指定があります。
具体的には直接減額方式と積立金方式とがあるのですが、今回は直接減額方式について説明します。

①まず受け取った補助金を収益に計上します。
②次に補助金をもって固定資産を取得します。
③そして補助金の受取額を、圧縮損として損失に計上し、同時に固定資産の簿価を減額します。

③の処理が、補助金の受け取りによる収益に係る一時の税負担を軽減することになります。
一方、減価償却は減額後の簿価をもとに行うため、圧縮記帳を行わない場合と比べて減価償却費は少なくなります。
減価償却費が少ないと課税所得が増え、結果として次年度以降の税額が増えます。

このように補助金及び固定資産の取得事業年度において通常課税されるべき金額が次年度以降に繰り延べられることがわかります。

圧縮記帳と併用可能な制度

さらに圧縮記帳と併用することが可能な制度があります。

それが特別償却と税額控除です。
ただし、これらはどちらか一方の選択適用となっています。

では特別償却・税額控除とは何か…。

特別償却とは、取得した固定資産を事業供用した事業年度において、減価償却費の計上額を一定額引き上げることができる制度です。
これによって初年度により多くの費用計上が認められることになります。(課税の繰延べ)

一方、税額控除とは法人税額を一定額控除する制度です。
これによって、納付税額が直接減額されます。(免税)

ただし、これらの制度はどんな法人にも適用ができるわけではありません。
青色申告法人であることが前提となります。
そして、資本金の額に制約があり、他の法人との資本関係にも制約があります。

加えて、その取得した固定資産についても限定されています。

例として以下のものがあります。

・機械装置で取得価額が1台160万円以上のもの
・事務処理の能率化等に資する測定工具及び検査工具で取得価額が1台120万円以上のもの
・ソフトウェアで取得価額が70万円以上のもの

などのように適用可能な資産の種類や金額が定められています。

まとめると以下のようになります。

・特別償却と税額控除はどちらか一方しか使えない。
・適用対象となる法人が限定されている。
・適用できる固定資産についても限定されている。

両方の適用が可能な場合には、どちらの制度を適用するのが有利であるのか検討も必要です。