2019/04/10

個人版事業承継税制

個人版事業承継税制とは

平成31年税制改正で創設される個人版事業承継税制は、個人事業者の事業用資産に係る贈与税、相続税の納税猶予制度です。不動産貸付業等を除き個人事業主が多い医師や税理士等の士業、農業など、幅広く対象となり、事業用の土地や建物、機械等の一定の減価償却資産に係る相続税、贈与税の納税を全額猶予できます。
概ね法人版事業承継税制の内容に準じた納税猶予制度になっていて、平成31年1月1日以後に贈与または相続等により取得する財産に係る贈与税または相続税について適用されます。
法人版事業承継税制は非上場株式等に係る制度ですが、個人版事業承継税制は特定事業用資産について納税を猶予する制度です。

適用要件

制度の概要

認定受贈者または認定相続人(承継計画に記載された後継者で経営承継円滑化法の認定を受けた者)が、贈与または相続等で特定事業用資産を取得し、先代の事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、納付すべき贈与税額または相続税額のうち、その贈与または相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税または相続税の納税が猶予されます。

対象期間

平成31年1月1日から平成40年(2028年)12月31日までの贈与または相続等

特定事業用資産

贈与者または被相続人の事業の用に供されていた土地(面積400㎡までの部分)、建物(床面積800㎡までの部分)及び一定の減価償却資産で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているもの。

猶予税額の免除等の要件

認定受贈者または認定相続人が死亡時まで特定事業用資産を保有し先代の事業を継続していること。

猶予税額の免除が受けられるケース及び留意事項

猶予税額が免除となる事由については、おおむね法人版事業承継税制の取り扱いに準じた内容になっています。

1.全額免除の場合
①認定受贈者または認定相続人が、死亡の時まで特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合。
※贈与税の納税猶予特例の適用を受けている場合に、贈与者が死亡した時は、特定事業用資産をその贈与者から相続等により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税を計算します。その際、都道府県の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予の適用を受けることが出来ます。

②認定受贈者または認定相続人が一定の身体障害等に該当した場合

③認定受贈者または認定相続人について破産手続開始の決定があった場合

④申告期限から5年経過後に、次の後継者へ特定事業用資産を贈与し、その後継者がその特定事業用資産について贈与税の納税猶予特例の適用を受ける場合

2.一部免除の場合
①同族関係者以外の者へ特定事業用資産を一括して譲渡する場合

②民事再生計画の認可決定等があった場合

③経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特定事業用資産の一括譲渡または特定事業用資産に係る事業の廃止をするとき
※経営環境の変化を示す一定の要件は、法人版事業承継の特例に準じた要件とされそうです。

3.その他留意事項として
①認定受贈者または認定相続人が特定事業用資産に係る事業を廃止した場合等には猶予税額の全額を納付する。

②認定贈与者または認定相続人は、贈与税または相続税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければなりません。

③この相続税の納税猶予は、特定事業用宅地等について小規模宅地の特例との選択適用となっています。つまり相続税の個人版事業承継税制と小規模宅地の特例とは重複して適用できない事とされています。