2019/03/11

所得拡大促進税制の改正

中小企業等の所得拡大促進税制の概要

平成30年度に所得拡大促進税制の改正が行われました。青色申告書を提出している中小企業者等が、平成30年(2018年)4月1日から平成33年(2021年)3月31日までの間に開始する事業年度のおいて、一定の要件を満たした上で前年より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度です。(個人事業者は平成31年分(2019年分)から適用できる制度です。)

改正のポイント

1.適用要件

・基準年度(平成24年度)の給与総額と比べて、適用年度において一定割合増加していること → 廃止されました。

・平均給与等支給額が前年度以上の条件が継続雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加に変更されました。

2.税額控除

・基準年度からの給与総額の増加額の10%(一部22%)の条件が前年度からの給与総額の増加額の通常の場合は15%、上乗せの場合は25%に変更されました。

通常の場合の税額控除

適用要件

継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額と比べて1.5%以上増加していること。

(1)継続雇用者とは以下の全てを満たす者を指します。

(イ)前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者である。

(ロ)前事業年度及び適用年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者である。

※一般被保険者とは、雇用保険の適用事業所に雇用される労働者であって、1週間の所定労働者時間が20時間未満である者等以外は、原則として、「被保険者」となります。「被保険者」のうち、高年齢被保険者(65歳以上の被保険者)、短期雇用特例被保険者(季節的に雇用される者)、日雇労働被保険者(日々雇用される者、30日以内の期間を定めて雇用される者)以外の被保険者のことをいいます。

(ハ)前事業年度及び適用年度の全て又は一部の期間において高齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない。

※継続雇用制度の対象者は、高年齢者雇用安定法に基づくものに限ります。例えば、就業規則に「継続雇用制度」を導入している旨の記載があり、かつ雇用契約書か賃金台帳等のいずれかに、継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載があることが条件です。

(2)継続雇用者給与等支給額  →  継続雇用者に対する適用年度の給与等の支給額

(3)継続雇用者比較給与等支給額 → 継続雇用者に対する前事業年度の給与等の支給額

税額控除額

上記1の適用要件を満たす場合、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の15%を税額控除します。

(注1)その適用年度の調整前法人税(個人事業者の場合は調整前所得税額)の20%が上限です。

(注2)国内雇用者とは法人又は個人事業者の使用人のうち、その法人又は個人事業者の国内に所在する事務所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。
国内雇用者にはパート、アルバイト、日雇労働者は含まれるが、役員(使用人兼務役員を含む)及び役員の特殊関係者、個人事業者と特殊関係にある者は含まれない。

(注3)雇用者給与等支給額とは
適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額。

(注4)比較雇用者給与等支給額とは
前事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額

上乗せの場合の税額控除

適用要件

継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額と比べて2.5%以上増加しており、かつ、次のいずれかを満たしていること。

(イ)適用年度における教育訓練費の額が前事業年度における教育訓練費の額と比べて10%以上増加していること。

○ 教育訓練費の増加の要件

(1)教育訓練の対象者は、法人又は個人のその事業に係る国内雇用者。ただし、次の者は除かれます。
① 法人の役員又は個人事業者
② 使用人兼務役員
③ 法人の役員又は個人事業者と特殊な関係にある者(役員の親族など。)
④ 内定者等の入社予定者(国内雇用者ではないため除く。)

(2)教育訓練費の対象範囲

① 法人等が教育訓練等を自ら行う場合の費用

イ 法人等がその国内雇用者に対して、外部から講師又は指導員を招聘し講義・指導等の教育訓練等を自ら行う費用である事。
ロ 外部講師等に対して支払う報酬、料金、、謝金その他これらに類する費用。
ハ 法人等がその国内雇用者に対して、施設、設備、その他資産を賃借又は使用して、教育訓練を自ら行う費用。
ニ 施設・備品・コンテンツ等の賃借又は使用に要する費用
ホ 教育訓練等に関する計画又は内容の作成について、外部の専門知識を有する者に委託する費用。

② 他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用

イ 法人等がその国内雇用者の職務に必要な技術、知識の習得又は向上のため他の者に委託する費用
ロ 教育訓練等のために他の者に対して支払う費用

③ 他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用

イ 法人等がその内国雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者が行う教育訓練等に国内雇用者を参加させる費用
ロ 他の者が行う教育訓練等に対する対価として他の者に支払う授業料、受講料、受験手数料その他費用。

(3)教育訓練費の対象にならない費用

① 法人等がその使用人又は役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金等
② 教育訓練等に関連する旅費、交通費、食費、宿泊費、居住費(研修の参加に必要な交通費、ホテル代、海外留学時の居住費等)
③ 福利厚生目的など教育訓練以外を目的として実施する場合の費用
④ 法人等が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費や維持管理費等)
⑤ 法人等の施設等の取得等に要する費用(当該施設等の減価償却費も対象外です。)
⑥ 教材等の購入、製作に要する費用(教材とするソフトウェア、コンテツの開発費も含まれます。)
⑦ 教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金等

(ロ)適用年度終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされていること。

○ 経営力向上計画の認定を受けていない事業者
イ 適用年度終了の日までに、経営力向上計画の認定を受ける必要がある。
ロ 適用年度終了後、経営力向上が行われたことに関する報告書を作成し、経済産業省に提出し経営力向上が確認できることが要件となっている。
ハ 申告書に認定を受けた経営力向上計画の写し、経営力向上計画の認定書の写し、経営力向上報告書を添付して提出する。

税額控除

上記の適用要件を満たす場合、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額の25%を税額控除します。

(注)その適用年度の調整前法人税額(個人事業者の場合は調整前所得税額)の20%が上限です。

詳しいことは、関与税理士等の専門家の方にご相談ください。