2019/03/11

所得税確定申告及び贈与税申告のチェックポイント

配当所得の申告に注意!

総合課税の選択

法人からの配当につきましては、原則として配当が支払われる際に所得税がが源泉徴収されます。
この配当所得は、基本的には分離課税として扱われます。
よって、このまま何もせず、完結させることができます。
ただ、給与等の所得に含めて申告することもできます。
専門的にいえば、総合課税か分離課税かを選択することが可能です。
総合課税が有利な場合は、次のようなケースです。

例:A市在住の女性(68歳)、収入は公的年金110万円とB株式会社からの配当200万円。
配当については、所得税306,300円、住民税100,000円が源泉徴収されている。
便宜上、所得控除は基礎控除のみとする。

この場合、配当所得について総合課税を選択した場合の税金は・・・
・年金に係る雑所得は、1,100,000円-1,200,000円≦0なので、0円
・(2,000,000円-380,000円)×5.105%=82,701円
・82,701円-306,300円=-223,599円⇒223,599円の還付

配当所得に係る源泉所得税の税率は、15.315%又は20.42%ですので、年収500万円以下の方ですと、余裕で還付を受けることが多いです。
しかし、ご存じでない方がしばしば見受けられます。

住民税の申告

また、上場株式等に係る配当については、住民税の申告で「申告不要」を選択することが可能です。
もちろん、その旨を記載した申告書を提出しなければなりませんが、住民税のみならず、国民健康保険料等にも大きな影響がありますので、所得税で配当所得の総合課税を選択した方は、住民税の申告にもご留意して下さい。

上場株式等の譲渡損失があれば確定申告して下さい!

特定口座をお持ちで、源泉徴収を選択されている方に限定して説明させて頂きます。
特定口座内で上場株式等の譲渡損失が生じた場合、確定申告でその損失を申告することによって、その損失を繰り越し、翌年以降の譲渡益と相殺することが可能です。その繰越は、最長で3年です。
この規定をご存じではない方が多いです。
そのため、上記の譲渡損失が生じてしまった方は、確定申告をして、翌年以降の譲渡所得を抑えるようにして下さい。
なお、要注意なのが、

①「確定申告をした際、特定口座の上場株式等の譲渡損失を記載するのを忘れた場合」、

②「平成28年度の確定申告で譲渡損失を申告したが、平成29年度の確定申告で譲渡損失の繰越控除の申告を忘れたような場合」です。

①の場合は、更正の請求をすることができません。
これは、特定口座の内容の申告の有無が納税者の判断に委ねられているため、確定申告書に記載しなかった場合には、「申告しないことを選択した」とみなされるためです。

②の場合は、平成30年度で繰越控除は認められません。
これは、「連続して譲渡損失を繰り越す申告」を行っていない事になるからです。

また、平成29年度の確定申告の更正の請求も認められません。
そのため、毎年確定申告をされていて、源泉徴収選択の特定口座を保有の方は、上記①及び②の点にご留意下さい。

医療費控除のおさらい

医療費は世帯で考えて!

例えば共働きの夫婦の場合、年末調整や確定申告は各々独立した課税関係となっていて、それぞれ扶養対象とならない所得がある場合に
おいて、各々で確定申告を行った方が良い程度の医療費が生じたときは、必ず別々に申告すべきでしょうか。

答えは、NOです。

この場合、「生計一」という概念で考えますので、扶養の可否は関係ありません。
そのため、医療費は夫婦合算や世帯合算でもOKであり、一番税率の高い人に集約して頂くのがベターです。

医療費の対象は幅広くなりました!

「自費診療だと医療費控除の対象とならない」とお考えの方が少なくありません。ただ、医療費控除の対象となる医療行為等の対象は拡大されています。

予防接種・健康診断・美容目的診療といったものは変わらず医療費控除の対象とはなりませんが、インプラントの様に高額な自費診療であっても、それが疾病治療目的ならば、医療費控除の対象となります。

また、上記の健康診断でも、その結果、疾病が発見された場合には医療費控除の対象となります。
そのため、医療費は、それが医療費控除の対象となるか否かを十分に吟味して下さい。

【番外】青色申告の承認申請
先日も勘違いされている方がいたのですが、事業所得だと自動的に青色申告になるわけではありません。
「青色申告承認申請書」という書類を所轄税務署へ提出する必要があります。そうすることによって、青色申告事業者となり、青色申告に係る様々な特典が受けられます。
個人事業でポピュラーなのは、青色申告特別控除(通常10万円、正規の簿記の原則に従って帳簿を作成している場合は65万円)、少額減価償却資産の減価償却(1点30万円未満、総額300万円までならその年に一気に減価償却できる)等です。
そして、前年以前に税務署へ開業届を出されている白色事業者の方で青色申告をご希望の方は、3月15日までに青色申告承認申請書を提出しなければなりません。