2019/01/28

消費税10%時の住宅ローン控除

住宅ローン控除とは?

「住宅ローン控除」は、正式には「住宅借入金等特別控除」という制度ですが、一般的には「住宅ローン控除」として呼ばれることが多いので、以下では「住宅ローン控除」として説明していきます。

住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得又は増改築等をした場合で、一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除することができる制度です。

簡単にいうと、住宅ローン控除は、住宅ローン等を利用して新築又は中古のマイホームを購入等した人の金利負担を軽減するための制度です。
具体的な控除金額については、次の項目でご紹介します。

この住宅ローン控除を受けるための適用要件は、マイホームの新築、中古物件の取得、増改築等によりそれぞれ異なります。

新築住宅購入時の住宅ローン控除の適用要件

個人が住宅を新築又は建築後使用されたことのない住宅を取得した場合で、住宅ローン控除の適用を受けることができるのは、次の全ての要件を満たすときです。

① 新築又は取得の日から6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。

② この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3千万円以下であること。

③ 新築又は取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。

④ 10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含みます。)があること。

⑤ 居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと。

※ 2016年3月31日以前の家屋の新築や購入又は増改築等について、居住者以外の方は住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。

※ 贈与による取得、又は取得の時に生計を一にしており、その取得後も引き続き生計を一にする親族や特別な関係のある者などからの取得は、この特別控除の適用はありません。

社会保険料控除や生命保険料控除といった所得から控除する制度ではなく、所得税額から控除する制度なので、個人の税負担が大きく軽減される制度になっています。

住宅ローン控除と消費税率改正との関係

2014年4月1日から消費税率が5%から8%に引き上げられました。このときも、いわゆる駆け込み需要抑制、消費税率引き上げ後の建築需要の減少に伴う景気への悪影響防止等の対策として、住宅ローン控除についての改正がありました。

消費税率が引き上げられた後で住宅を購入(特定取得)した場合には、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除する金額について、負担を軽減する措置がとられています。

「特定取得」とは、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等が、新消費税率等(8%又は10%の税率により課されるべき消費税額等)である場合における住宅の取得等をいいます。
個人間の売買契約により、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等がない場合は「特定取得」には該当しませんが、いわゆる「消費税の免税事業者」からの住宅の取得等であっても、その取引自体は消費税の課税取引に該当することから、その住宅の取得等が上記の要件を満たす場合には、「特定取得」に該当することになります。

居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除できる金額は、下記①、②の金額のうちいずれか少ない金額(100円未満の端数金額は切り捨てます。)です。

① 住宅ローンの年末残高×1%

② 住宅等の取得価額×1%

居住の用に供した年により、所得税額から控除される期間、控除限度額は異なります。2014年1月1日から2021年12月31日までに居住の用に供した場合は、下記の通りです。

①本則

(イ)特定取得
10年間控除が可能で、控除限度額は40万円(合計400万円)

(ロ)特定取得以外
10年間控除が可能で、控除限度額は20万円(合計200万円)

② 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅

(イ)特定取得
10年間控除が可能で、控除限度額は50万円(合計500万円)

(ロ)特定取得以外
10年間控除が可能で、控除限度額は30万円(合計300万円)

住宅を新築又は新築住宅を取得した場合の住宅ローン控除についてご紹介してきました。認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅以外の住宅に該当するときは、一般住宅よりも控除限度額が増加することがあります。

住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例の創設

2018年12月21日に閣議決定された「平成31年度税制改正大綱」では、消費税率引き上げに際し、需要変動の平準化等の観点から、住宅に対する税制上の支援策を講ずるため、住宅ローン控除の拡大として「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例」が創設されましたので、その内容をご紹介します。

個人が、消費税率が10%である住宅の取得等をして、2019年10月1日から2020年12月31日までの間にその者の居住の用に
供した場合について、下記の①又は②のいずれか少ない金額を、現行の住宅ローン控除の適用期間である10年が終了後、11年目から13年目までの各年において控除することができます。

① 住宅借入金等の年末残高(4,000万円を限度)×1%

② [住宅の取得等の対価の額又は費用の額-当該住宅の取得等の対価の額
又は費用の額に含まれる消費税額等](4,000万円を限度)×2%÷3

このように住宅ローン控除の拡大については、消費税率10%が適用される住宅等について、控除期間を現行の10年から13年に延長し、11年目以降の3年間について、消費税率2%引き上げ分の負担に着目した控除額の上限の設定がある仕組みになっています。

次に、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例についての実務上の留意点を紹介します。

① 現行の住宅ローン控除について

適用年の1年目から10年目までの各年の住宅借入金等特別控除については、現行の住宅ローン控除の金額を控除できます。

② 住宅借入金等の対価の額又は費用の額について

居住の用以外の用に供する部分がある場合には、当該居住の用に供する部分の床面積の占める割合を乗じて計算した金額とします。

③ 住宅の取得等について

住宅の取得等に関し、補助金等の交付や直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等の適用を受ける場合であっても、当該補助金等の額又は当該適用を受けた住宅取得等資金の額は控除しません。

④ 控除額について

各年につき住宅借入金等の年末残高の1%相当額が控除限度額となっているため、11年目以降の住宅借入金等年末残高等によっては、必ずしも引き上げられた消費税率2%分が控除できるとは限りません。

⑤ 請負工事等に係る資産の譲渡等の時期の特例に関する経過措置

2019年10月1日以降に引渡しとなる請負工事については、通常であれば新消費税率の10%が適用されるところですが、請負工事等に係る契約を2019年3月31日までの間に締結し、2019年10月1日以降に目的物の引渡しを行う場合の請負工事等に係る対価の額については、旧税率の8%が適用されます。

現行の住宅ローン控除、消費税率10%が適用されて購入した住宅に係る住宅ローン控除の拡大について、ご紹介しました。
住宅ローン等を利用してマイホームを購入等された場合に、ご参考にしていただければ幸いです。

なお、今後の国会における改正法案審議の過程において、一部項目の修正・削除・追加などが行われる可能性があることにご留意下さい。