2019/01/23

軽減税率制度(飲食料品編)

対象となる飲食料品の販売

消費税の軽減税率制度は、「飲食料品」と「週2回以上発行される新聞」を対象品目としています。そのうち「飲食料品」についてお伝えしたいと思います。

軽減税率の対象品目である「飲食料品」とは、食品表示法に規定する食品をいいます。
食品表示法に規定する「食品」とは、人の飲用又は食用に提供される全ての飲食物をいい、「酒税法に規定する酒類」、「医薬品」、「医薬部外品」、「再生医療等製品」を除きます。

具体的には以下のものが該当することとなります。

①米穀や野菜、果実などの農産物、食肉や生乳、食用鶏卵などの畜産物、魚類や貝類、海藻類などの水産物

②めん類、パン類、菓子類、調味料、飲料等、その他製造又は加工された食品

③添加物(食品衛生法に規定するもの)

④一体資産のうち、一定の要件を満たすもの

上記④で「一体資産」を軽減税率の対象として挙げました。一体資産とは、例えば食玩などの食品と食品以外の商品があらかじめ一つの商品となっているもので、その価格の内訳が表示されておらず、全体としての価格のみが表示されているものをいいます。
「一体資産」については原則としては軽減税率の対象ではありませんが、次の要件を満たす場合は対象とすることができます。

①一体資産の価格(税抜)が1万円以下であること

②一体資産に含まれる食品部分の価額の占める割合が3分の2以上であること(合理的な方法により計算した割合による必要があります。例えば食品の原価の占める割合など)

一般的に食品とされるものであっても、人の飲用又は食用に提供されるものに限定されているため、例えば観賞用や栽培用の植物や工業用原材料の塩などは除かれることとなります。
同じ商品でもその目的により税率が変わるため、販売する事業者がその販売時に人の飲用又は食用に提供されるものであるかを判断する必要があります。(その後、購入者が別の目的に使用したとしても軽減税率は適用されます。)

飲食店等での取扱い

前項で軽減税率の対象となる飲食料品についてお伝えしましたが、人の飲用又は食用として提供されるものでも、いわゆる「外食」や「ケータリング」については対象から除かれることとなっています。

「外食」とされる飲食店等での食事の提供とは、テーブル、椅子、カウンターなどの飲食に使用される設備がある場所で、飲食料品を飲食させるサービスを行った場合が該当します。
そのため、レストランや喫茶店などの飲食店だけではなく、映画館、カラオケ店、コンビニやスーパーのイートインスペースでの飲食も含まれます。

飲食に使用される設備については、テーブル、椅子、カウンター等の設備であれば規模や目的を問わず飲食専用の設備である必要はありません。
また、食事の提供者と設備の設置者が別であっても、その両者の合意等に基づき設備を利用して食事の提供を行っている場合は該当します(フードコートは該当し、公園は該当しない)。
ただし、「飲食はお控え下さい」といった掲示等を行い、顧客に飲食をさせていない休憩スペースなどの、飲食に使用されないことが明らかな設備については該当しないこととされています。(掲示だけを行い、実態としてその設備で顧客に食事の提供を行っている場合は該当します)

それでは、ファストフード店のように店内飲食とテイクアウトの両方を行っている場合には、テイクアウトについて軽減税率は適用できるのでしょうか?
テイクアウトについては、飲食設備での食事の提供に該当しないため飲食設備を所有する事業者でも軽減税率を適用することができます。
そのためには、軽減税率が適用されない店内飲食と、適用されるテイクアウトを区分する必要がありますので、販売する事業者が顧客に対して販売時に意思確認をする必要があります。

なお、コンビニやスーパーなどのように、大半の商品の販売が持ち帰りであることを前提で営業している場合は、「イートインコーナーをご利用される場合はお申し出ください」などの掲示をして意思確認を行っても差し支えないとされています。

次に軽減税率の対象外とされる「ケータリング」とは、相手方が指定した場所で、例えば、加熱、切り分け・味付けなどの調理、盛り付け、食器の配膳などのサービスを伴って飲食料品の提供をすることとされています。
ただし、有料老人ホームで行う飲食料品の提供や学校給食などで、一定のものについては軽減税率の対象となります。

留意点や注意点

容器や包装の取扱い

食料や飲料を販売する際、通常は容器や包装を使いますが、これらの取扱いはどうなるでしょうか?
飲食料品の販売に際し使用される包装材料等が、その販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものであるときは、その包装材料等も含め軽減税率の対象となります。
ただし、別途、包装材料等の料金を定めている場合は対象外となります。
また、包装材料等が陶磁器やガラス食器等のように飲食後に、食器や装飾品として再利用できるようなものである場合には一体資産に該当することになります。

一括値引を行った場合

軽減税率の対象商品とそれ以外の商品について一括して値引きがあった場合には、値引前のそれぞれの商品価格の比率により値引額を按分するなど、合理的な方法により金額を算出する必要があります。

価格の表示について

軽減税率制度の実施後は店内飲食とテイクアウトで税率が異なることとなります。
消費者に対する価格の表示については、以下の方法などが考えられます。
イ、店内飲食及びテイクアウトの両方の税込価格を表示する方法
ロ、店内飲食又はテイクアウトのいずれか一方の税込価格を表示したうえで、他方は税率が異なるため別価格となる旨を掲示する方法
ハ、一つの税込価格を表示する方法(税率が異なっていても同一の税込価格で販売する場合)

具体的な参考例については中小企業庁のホームページにおいて「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」として公表を行っていますので、参考にして頂ければと思います。

また、2021年3月31日までは、価格の表示についての経過措置があるため、税抜価格により表示を行っている場合には、店内飲食とテイクアウトで税率が異なる旨の掲示等を行ったうえで、それまでは税抜価格による表示を継続しても差支えないかと思います。

軽減税率対象の旨等の記載が無い場合

軽減税率が適用される取引について、消費税の仕入税額控除を適用するためには、「軽減対象資産の譲渡等である旨」及び「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額」が請求書や領収書に記載されている必要があります。
ただ、これらの記載がされていない場合も考えられますので、その場合については購入した側の事業者が、その取引の事実に基づいてこれらの項目を追記して仕入税額控除を行うことも認められています。

ここまで、消費税の軽減税率制度のうち「飲食料品」についてお伝えしましたが、この他にも、様々な事例が想定されるかと思います。
実際に軽減税率の対応についてお困りなことや疑問点がある場合については、税理士等の専門家へ一度ご相談いただくとよろしいかと思います。