2019/03/18

事業用資産を買い換えた場合の課税の特例

事業用資産(土地・建物等)を売却して、新たに事業用資産を購入(買換え)した場合には、事業用資産の買換えの特例が受けられます。
この特例計算により、買換によって取得した事業用資産の取得価額から譲渡益の 80% 相当の金額が控除され、譲渡益の 20% の金額についてのみ譲渡所得として課税されることになります。

特例を受けるための要件

この特例を受けるには、次の要件全てに当てはまることが必要です。
(1)買換えのための譲渡資産と買換資産は、共に事業用のものに限られる。
(2)譲渡資産と買換資産とが、一定の組合せに当てはまるものであること。
この組合せの代表的なものとして、次のものがあります。
(3)東京都の 23 区、大阪市などの既成市街地等内にある事務所や事業所として使用されている建物⼜はその敷地で、その譲渡の日の属する年の 1 月 1 日において所有期間が 10年を超えるものを譲渡して、既成市街地等でない 地域(国内に限ります。)にある事業用の土地や建物を取得する場合
(4)譲渡の日の属する年の 1 月 1 日において所有期間が 10 年を超える国内にある事業用の土地等や建物を譲渡して、国内にある土地等、建物を取得する場合
(3)買換資産が土地であるときは、取得する土地の面積が原則として譲渡した土地の面積の5 倍以内であること。この 5 倍を超えると超える部分は特例の対象となりません。
(4)事業用資産を取得した日から 1 年以内に事業の用に供すること。なお、取得してから1年以内に事業に使⽤しなくなった場合は、原則として特例は受けられません。
(5)資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得すること。
(6)この特例を受けようとする資産について、他の特例(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例や優良賃貸住宅等の割増償却等)を適用しないこと。
(7)土地等の譲渡については、原則として、譲渡した年の 1 月 1 日現在の所有期間が 5 年を超えていること。なお、平成 10 年 1 月 1 日から平成 23 年 12 月 31 日までの間に土地等の譲渡をした場合には、この要件が停⽌されています。ただし、 (2)で説明した組合せの場合には、所有期間について、譲渡した年の 1 月 1 日において 10 年を超えていることが、個別の要件とされています。
(8)譲渡資産の譲渡は、収用等、贈与、交換、出資によるもの及び代物弁済としての譲渡ではないこと。また、買換資産の取得は、贈与⼜は交換によるもの、所有権移転外リース取引によるもの及び代物弁済によるものではないこと。

また、この特例を受けるためには、次の書類を添えて確定申告をしなければなりません。
① 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
② 買換資産の登記事項証明書などその資産の取得を証する書類
③ 譲渡資産及び買換資産が特例の適用要件とされる特定の地域内にあることを証する市
区町村長等の証明書など

譲渡所得金額の計算

(1)譲渡資産の譲渡価額と買換資産の取得価額が同額か、または、買換資産の取得価額の方が多い場合
① 譲渡資産の譲渡価額 × 0.2 =収入金額
② (譲渡資産の取得費+譲渡費用)× 0.2 =必要経費
③ 収入金額-必要経費=課税される譲渡所得の金額

(2)譲渡資産の譲渡価額が買換資産の取得価額より多い場合
① 譲渡資産の譲渡価額-買換資産の取得価額 × 0.8 =収入金額
② (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額 ÷ 譲渡資産の譲渡価額)=必要経費
③ 収入金額-必要経費=課税される譲渡所得の金額

事業規模でない不動産貸付けの場合

不動産の貸付けなどで事業といえるほどの規模ではない場合も、相当の対価を得て継続的に行われているものは事業として認められ買換えの特例の対象となります。

『相当の対価とは、その貸付け等の用に供している資産の減価償却費の額、固定資産税その他の必要経費を回収した後において、なお相当の利益が生ずるような対価を得ているかどうかにより判定する』とされています。『相当の利益』といわれても、まったく曖昧ですね。まあ⾚字では駄目ということだけは明確になりましたか…!?事前相談しておくべきかと思います。