2019/02/16

無償返還の届出で節税

借地権について

土地の上に建物を建築することを目的として土地を賃借する場合、地主は土地の使用権(借地権)を賃借人に譲り渡すことになります。借地権は民法等の法律で保護されており、ほぼ半永久的に土地を借りる権利を得ることになります。従って、土地を借りて建物を建てようという場合には、借地権の対価として高額の「権利金」の受け渡しを行うことが一般的な取引です。

借地権の無償譲渡

社長個人と同族会社との取引などの場合には、権利金の受け渡しがないまま建物を建築することにより無償で借地権が移動してしまうケースが頻繁にあります。このような場合には地主から賃借人に借地権が無償で譲渡されたとして権利金(借地権)の認定課税という非常に大きな課税上の問題が生じることになります。

この取り扱いは主には「同族関係にある個人と法人」、「同族関係にある法人と法人」や「個人親族間」での取引でみられるものです。ではケースバイケースで実際に誰にどのような税金が課されることになるのか考えてみましょう。

借地権の無償譲渡

上記のように賃貸人である個人には借地権の無償譲渡による課税規定はありません。個人は必ずしも経済的利害だけで賃貸行為が行われるものではないと、所得税法でも事情を考慮して無償による資産の譲渡や無償による役務の提供については、収入金額があるとはみなさないとしているからです。

☆しかし、次の2 つの方法により、権利金の受渡しをしないまま、借地権の認定課税を避けることが可能です。
(1) 契約書において、将来賃借人がその土地を無償で返還することが定められており、かつ「土地の無償返還に関する届出書」を賃借人と連名で土地所有者の納税地を所轄する税務署長に提出する場合には、借地権の認定課税がされないこととなっています。

☆この制度はあくまで個人間取引以外である場合の規定です。個人間取引が個人で権利金の収受なしに賃貸借契約をすると、この土地の無償返還に関する届出書による方法を使えないので、無償により借地権を賃借人が貰ったものとして贈与税が貸される恐れがありますので注意して下さい。

☆個人間での契約には、賃料を受け取らないか固定資産税などの費用を賄う程度の僅かな賃料で不動産を使用させるという使用貸借契約という方法があります。親⼦間で居宅の敷地を自由に使わせているなどの場合がこれにあたり、このような場合には借地権の認定課税の問題は発生しません。

<アドバイス!>
土地の無償返還に関する届出書」の提出期限は、賃貸契約後遅滞なく提出することとされていますが、柔軟に取り扱われており、税務調査などで指摘された後に提出した場合でも届出は認められることもあるようです。

(2) 通常の土地の地代よりはるかに高額の地代契約となっている場合には、借地権の認定課税がされないこととなっています。この場合の地代を相当の地代といい、その金額は「土地の時価× おおむね6%」とされています。つまり、借地権設定の際に受渡しすべき権利金のかわりに地代を高くするということです。

<アドバイス!>
「相当の地代」の算定計算上、土地の時価は、下記の金額とすることもできます
① 国土交通省が開⽰する公⽰価格から合理的に算定した金額
② 国税庁が開⽰する路線価を用いた相続税評価額
③ 相続税評価額の過去 3 年分の平均額
・ 土地の賃貸でも、青空駐⾞場のように更地のまま貸している場合には借地権は発生しません。
・権利金を収受する取引慣行があるかどうかは、その場所の借地権割合が30% 未満であれば借地権取引の慣行がない地域とされています。

また「無償返還の届出」提出により権利金認定課税を回避しても、賃貸人である法人は実際に収受する通常の地代と相当の地代との差額については継続的に寄付金や役員賞与として課税対象とされることにもご注意ください。