2019/01/15

事業的規模の5棟10室基準で節税

不動産賃貸が事業的規模とみなされた場合には、下記のような特典(メリット)があります。

(1)青色申告の65 万円特別控除が可能になります。
・申告時に貸借対照表、損益計算書の添付が必要になり、また、帳簿として総勘定元帳の作成(会社保管)が要件となります。

(2)青色事業専従者給与の経費算入ができます。
・税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要になります。

(3)資産の取り壊し損失、除却等損失の全額が経費算入できます。
(事業規模でない場合は、当該年度の不動産所得が限度)

(4)賃貸料等の回収不能による貸倒損失がその年分の必要経費になります。

(5)延納に係る利子税で不動産所得対応分が経費算入できます。

事業的規模の判断(5 棟10 室基準)

では、具体的に不動産貸付が事業的規模であるか否かの判断基準はどうなのかということですが、その不動産貸付けの実状に応じて下記の状況から実質を重んじて判断することとしています。

実質基準

・貸付資産の規模
・賃貸料の収入状況
・貸付資産の管理に係る人員や施設の設置等

その他、兼業の有無及び不動産所得により生計の大半を維持しているのか、不動産収入金額、管理の程度、広告等の状況等を総合的に判断することになります。

形式基準

しかし、実質基準においても明快な判断が付けられないため具体的に5 棟10室基準なるものもあります。形式基準は、一戸建てなら5 棟、マンション・アパートなら10 室を越えるとその貸付は事業的規模とみる判断基準です。

次に所得税法の通達規定を掲載しておきますのでご参考ください。

建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として⾏われているかどうかは、社会通念上事業と称するに⾄る程度の規模で建物の貸付けを⾏っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として⾏われているものとします。
(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独⽴した室数がおおむね10 以上であること。
(2)独⽴家屋の貸付けについては、おおむね5 棟以上であること。 【所基通26 ⑨】

<注意点!>
事業税における事業的規模の基準は所得税法とは異なりますが、5 棟10 室基準を満たせば事業税が課税されます。
5 棟10室基準を満たさない場合でも貸付面積が600 ㎡以上、かつ賃貸収入金額が年1,000万円以上の場合(貸付期間が1 年に満たない場合には年換算した収入で判断)は事業税が課税されるようです。
ただし、面積・金額ともに地方自治体によって異なるようですので、お住まいの県税事務所に確認して下さい。

その他の判断の間違いやすい事例について

貸マンション(15 室)を不動産会社へ一括貸付けた場合は?

15 室を有していますので事業的規模に該当します。

月極駐車場10 台の貸付はどうでしょうか?

駐車場の場合は、5 台分が1 室に相当するとして、50 台保管していれば、一応の⽬安として、事業的規模と認めているようです。そのため月極駐車場10 台の場合は、事業的規模に該当しません。また、駐車場の一括貸付は1 棟分として取り扱われます。

貸室と貸家の両方を所有しているときの判定は?

貸室2 室を1 棟として換算します。
上記は法律上の規定ではありませんが、5 棟10 室基準を判断する際の実務上の慣習として定着しているようです。