2018/08/25

建設仮勘定・未成工事支出金は仕入税額控除で節税

簡易課税と本則課税の制度の切替時は要注意!

建設仮勘定

建設工事や機械の製作は受注から完成までの期間が長期に渡ります。そのため、一部代金の前払いや部分的に引渡しを受けて支払った工事代金は一旦「建設仮勘定」として処理しておいて、完成引渡しを受けた時に固定資産の本勘定に振替えます。消費税では建設仮勘定でも原則として部分的であれ一部完成引渡しのあった都度、その日の属する課税期間において仕入控除税額の対象とします(一部完成都度控除方式)。契約に基づく単なる中間金の支払は引渡しの対価でないため対象となりませんので注意してください。

例外としてすべて完成した物件の引渡しをうけた日の課税期間の課税仕入れに含めることも認められています(全部完成一括控除方式)

今期から本則課税になった場合は、前期からの建設仮勘定が本勘定に振り替わった時点で、全額を控除すればいいですね。また、来期から簡易課税へ変更となるような場合は、建設仮勘定への今期支出分を忘れずに今期の仕入税額控除の対象にしましょう。

未成工事支出金

建設業で工事完成基準を採用している場合は、工事が完成するまでは、工事にかかる支出を「未成工事支出金」として棚卸資産に計上しておき、完成時に売上計上と同時に原価に振替えて費用と収益を対応させます。
しかし、消費税では工事にかかる支出をした時に仕入税額控除の対象とするのが原則で、費用と収益の対応という考えはないのです。例外として、工事完成基準を採用している場合は、継続適用を条件として完成引渡し時にまとめて仕入税額控除することができます。

簡易課税を選択していた事業者が、今期より本則課税となった場合、前期末における未成工事支出金について、今期から例外規定を適用し、今期完成時の仕入税額控除の対象として節税しましょう。これから継続すればいいですね。

また、来期より簡易課税へ変更となるような場合は、今期支出の未成工事支出金を原則どおり、今期の仕入税額控除の対象にすることを考えましょう。

同じ年度内で、前期以前支出分を完成基準、当期分を支出基準はさすがに無理ですね。

仕入税額控除のタイミング

建設仮勘定や未成工事支出金の仕入税額控除の解説をしましたが、課税仕入税額控除の計上時期の原則は、引渡しや役務の提供を受けた時点であり、一般の税務会計の基準とことなることはありません。未払いのものであっても控除されますし、前払いについては原則対象にな
りませんが、いわゆる短期前払費用的なものは支払い時に控除対象とすることができます。

不動産などは、やはり原則は引渡(登記)基準ですが、契約日基準によることも認められています。来期から簡易課税事業者となるような場合は、契約を今期中にしてしまうことで今期の仕入税額控除に加算され節税につながることが考えられます。

余談ですが、法人設立時の創立費などについて、消費税法基本通達では、「創立費、開業費又は開発費等の繰延資産に係る課税仕入れ等については、その課税仕入れ等を行った日の属する課税期間において法第 30 条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるから留意する。」とあります。

会社設立したばかりの新設法人に該当する場合でも、ほとんどが設立前の役務提供に対する支出であるので、仕入税額控除をするタイミングがないことになってしまいますね。しかし、設立準備一切を司法書士などに依頼すれば、設立と同時に役務の提供が完了したものと言えそうで、工夫次第では創立費のほとんどを、設立年度の控除対象仕入に算入できるような気がします。