中小企業経営強化税制について
中小企業経営強化税制とは?
中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、対象設備の取得や製作等をした場合に、即時償却又は取得価額の10%の税額控除(資本金の額等が3,000万円超の法人は7%)が選択適用できるものになります。
本制度の適用を受けるためには、①生産性向上設備(A類型)、②収益力強化設備(B類型)、③経営資源集約化設備(D類型)、④経営規模拡大設備(E類型)を導入して実施する経営力向上計画の認定を受けることが必要になります。
【対象企業】
以下の要件をすべて満たす事業者
・中小企業、農業協同組合等、商店街振興組合のいずれかに該当する
・青色申告書を提出するもの
・経営力向上計画の認定を受けた特定事業者等
【対象設備】
以下の要件をすべて満たす設備
・経営力向上計画に基づいた新たに取得・製作等した設備で中古資産や貸付資産ではない
・一定の規模以上のもの
・各類型ごとの要件を満たす
「一定の規模以上のもの」は以下のものをいいます。
1機械および装置
1台または1基の取得価額が160万円以上のもの
2工具、器具および備品
1台または1基の取得価額が30万円以上のもの
3建物附属設備
取得価額が60万円以上もの
4ソフトウェア
取得価額が70万円以上もの
※複写販売するための原本、研究開発用、サーバー用OSのうち一定のものは除く
2025年度税制改正の内容
【適用期限の2年延長】
当初は2021年3月31日までの時限措置でしたが、今回で3度目の延長となり、2027年3月31日まで適用期限が延びました。(C類型は除く)
【設備要件の一部を変更】
・A類型
「改正前」:旧モデルと比べて生産性が年平均1%以上向上する設備
「改正後」:旧モデルと比べて生産性が年平均1%以上向上する設備
生産性の指標は「単位時間当たり生産量」「歩留まり率」「投入コスト削減率」とする
・B類型
「改正前」:投資利益率が5%以上の投資計画にかかる設備
「改正後」:投資利益率が7%以上の投資計画にかかる設備
・C類型
「改正前」:可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備
「改正後」:除外
・D類型
「改正前」:修正ROEまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備
「改正後」:修正ROEまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備
・経営規模拡大設備(新類型)
「改正前」:―
「改正後」:売上高100億円超を目指す中小企業にかかる措置の新設
※A~D類型から暗号資産マイニング業の用に供する設備が除外
A類型は対象設備の範囲が狭まり、B類型は適用条件が厳しくなりました。
C類型は除外となり、D類型は要件についての変更はありません。
【B類型の拡充】
B類型の拡充版として「経営規模拡大設備」に関する類型が追加されました。
売上高100億円を目指す中小企業にかかる拡充措置として一定の要件を満たした場合に対象設備に建物および附属設備(取得価額1,000万円以上)が含まれることとなりました。
中小企業経営強化税制を利用する際の注意点
【即時償却は節税ではない】
中小企業経営強化税制では即時償却と税額控除のどちらか一方を選択できますが、節税効果を得られるのは税額控除のみです。即時償却は課税の繰り延べといえる仕組になります。
即時償却を行い、取得価額と同額の減価償却費を計上することにより、即時償却を行った事業年度の税額を抑えることができますが、即時償却を行うことで翌事業年度以降は当該設備の減価償却費が計上できません。すなわち即時償却をした年以外は経費として計上できる額が少なくなるため、税額が増えることになります。ただし、即時償却は設備投資した初年度に大きく利益が出ている場合に納税額を大幅に軽減でき、手元資金を厚くする効果がありますので、決算時の状況に応じて判断するのが良いかと思われます。
【経営力向上計画の認定を受ける必要がある】
中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、中小企業経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受ける必要があります。税制の適用を受けるには税務申告書と合わせて認定申請書の写しおよび認定書の写しの提出が必要となり、認定を受けていない場合は税制の適用ができません。
申請の大まかな流れは以下の通りです。
1工業会等による証明書(A類型)、経済産業局による確認書(B、D類型)を取得
2中小企業庁公式サイトに掲載されている「事業分野に対応する事業分野別指針」を踏まえて経営力向上計画を策定
3申請書および必要書類を提出
4認定後、対象設備を取得
申請から認定までに1カ月程度かかるため早めに手続きを行いましょう。
記.大阪事務所4課