2025/09/24

防衛特別法人税について

防衛特別法人税の概要

2022年12月に国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画が策定されました。

整備計画では令和5年度から令和9年度までの5年間における防衛力整備の水準に係る金額を43兆円程度とされています。

この膨大な資金を確保するために新たな税制が検討され防衛特別法人税が創設されました。

法人税額を課税標準として計算するため、実質的には法人税の増税となります。

防衛特別法人税の詳細

・防衛特別法人税の適用開始時期
防衛特別法人税は2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

・防衛特別法人税の計算方法
防衛特別法人税の計算式は以下の通りです。

 防衛特別法人税の額=課税標準法人税額(課税標準)×4%

課税標準法人税額は、基準法人税額から基礎控除額500万円を差し引いた額です。
計算式は「(基準法人税額-基礎控除額500万円)×4%」となります。
また、税額控除の適用も行われます。
基準法人税額が基礎控除である500万円以下であれば防衛特別法人税は発生しません。

そのため防衛特別法人税は法人税額が500万円を超える法人、すなわち大企業や大きな利益を出している中小法人を対象とした税金といえます。
なお、基準法人税額とは所定の税額控除制度を適用しないで計算した法人税の額となります。

◆中小法人の防衛特別法人税が課税される金額の計算例をみてみましょう。
中小法人が防衛特別法人税が課税される課税所得は約2,440万円です。

計算例
課税所得: 800万円 × 15%(法人税率) = 法人税額 1,200,000円
課税所得:1,640万円 × 23.2%(法人税率) = 法人税額 3,804,800円
防衛特別法人税の課税標準額: 5,004,800円 – 基礎控除 5,000,000円 = 4,800円
防衛特別法人税:4,800円× 4% = 192円(100円未満切捨)

この場合は約100円が防衛特別法人税として課税されます。

・防衛特別法人税の申告および納付期限
防衛特別法人税の申告および納付期限は、法人税の申告および納付期限と同じです。
令和9年4月1日以後に法人税の中間申告書を提出するべき法人は、防衛特別法人税の中間申告書の提出も必要です。

・防衛特別法人税の様式
国税庁より防衛特別法人税に関する申告書様式が公表されています。
公表された様式を見ると法人税申告書の別表一の様式に新たに追加された感じです。
具体的には現在の「別表一」「別表一、次葉一」に「別表一、次葉二」が追加されるようです。
あと、税額が0円であっても申告が義務付けられるため提出漏れに注意が必要です。

その他

防衛費増額の財源としてたばこ税の増税もあります。

・たばこ税の見直し
・加熱式たばこの税引き上げ

紙巻たばこに換算する方式とし、紙巻たばこ1本として課税する仕組みとして令和8年4月と同年10月に実施されます。

・国のたばこ(紙巻きたばこ、加熱式たばこ)税を令和9年4月、令和10年4月、令和11年4月にそれぞれ0.5円/1本ずつ引き上げられます。 

所得税の負担も検討されていましたが「引き続き検討」とされています。
これは、基礎控除等の改正があり(いわゆる「103万円の壁」の見直し)、また物価高の影響で家計に負担がかかることが配慮されたことによります。
当面の間、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置が取られます。
いつまで続くのか、引き続き、最新の情報を確認しながら、国の税制のあり方を注視していきましょう。

記.大阪事務所3課