2025/06/11

リース取引の改正

令和6年9月に新リース会計基準が公表されました

リース取引について2007年(平成19年)のリース会計基準改正以来の大幅な見直しがありました。2024年9月に公表され2027年4月1日開始事業年度から適用となります。

新リース会計基準では、リースは「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分」と定義されています。原資産というのがリースの対象となる資産で、貸手によって借手に当該資産を使用する権利が移転されているものです。リース対象となる資産のことと考えてよいと思います。資産を売買するという考え方から原資産を使用する権利を移転する考え方に範囲を広げたため、従来のリース契約だけでなく賃貸借契約等(事務所、店舗の賃貸等)もリース取引の対象となる可能性があります。
 
会計処理については、現行のリース会計基準では借手はファイナンス・リース取引がリース資産として資産計上する対象でしたが、新基準では、ファインナンス・リース取引だけでなくオペレーティング・リース取引も含め原則としてすべてのリースについて「使用権資産」及び「リース負債」を計上することとなります。使用権資産は従来はリース資産と言われたものです。減価償却により費用化されていきます。リース負債は未払金で、支払いに応じ減少していきます。

貸手は、現行の基準から大きな変更はないようです。

事務負担が増える可能性がありますが、新リース会計基準は上場企業など監査法人の会計監査を受ける法人が対象となります。中小企業の会計に関する指針には新リース会計基準は今のところ取込まれていないようですので、中小企業については、現行の処理から変更しなくてもよいようです。
※「ファイナンス・リース」とは、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリースをいいます。「オペレーティング・リース」は、ファイナンス・リース以外のリースです。

リース取引の令和7年度改正について

税務については新リース会計基準が2025年(令和7年)4月1日開始事業年度以降は前倒しで適用できるようですので、それに合わせ改正が行われました。

改正点は法人税3点、消費税1点、事業税1点ありますが、税務上は従来のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類は維持され、借手側は大きな影響はなく従来通りの取扱いができそうです。貸手側は延払基準が廃止される点が大きな改正です。

法人税の改正点
①オペレーティング・リース取引の損金算入額の明確化
※現状と変わらず賃貸借取引として処理することが条文化されました。

②リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止(貸手)
※延払基準が廃止されます。ただし、経過措置があります。

③所有権移転外リースに係るリース資産の減価償却について
※2027年(令和9年)4月1日以後に締結された契約に係るリース資産の減価償却についてリース期間定額法の取得価額に含まれている残価保証額を控除しないことし、1円(備忘価格)まで償却できることとなりました。
  
消費税の改正点
①法人税の改正に伴い、リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止(貸手)
※延払基準が廃止されます。こちらも経過措置があります。

事業税の改正点
①外形標準課税の付加価値割の課税標準である不動産賃借の取扱いの明確化
※外形標準課税は基本的に資本金1億円超の会社が対象です。
こちらも改正があり2025年4月1日以降開始する事業年度から減資した法人や100%子会社等適用対象が広がっているので、注意ください。 

中小企業の取扱い

新リース会計基準では、借手は原則として、全てのリースについて使用権資産及びリース負債を貸借対照表に計上することになりますが、新リース会計基準の適用対象とならない非上場の中小企業では、現行の会計処理が引き続き認められます。

所有権移転外のファイナンス・リース取引については原則的には売買として資産計上し減価償却していくことになりますが、賃貸借取引として費用計上することも可能です。消費税法上の取扱いも、所有権移転外のファイナンス・リースはリース資産の引き渡し時に売買があったものとされ、借手はリース資産の引き渡しを受けた日に資産の譲受があったものとして、その引渡しを受けた日の属する課税期間において一括して仕入税額控除を行うことができます。借手側で会計上、賃貸借処理を行っている場合は、そのリースを支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして分割して控除することが新リース会計基準適用後も引き続き認められるようです。所有権移転リースは売買取引として取り扱います。

オペレーティング・リースは新リース会計基準では使用権資産の計上を行いますが、税務上は賃貸借取引とされることに変更はありませんので、現行どおりリース料などの科目で費用計上し、消費税も支払時に分割して控除することができます。
 
会計基準は変更になりますが、借手側の税務上の取扱いは大きく変更されておりませんので、留意ください。 

記.東京事務所2課