国内証券会社で外国株式売買時の消費税
外国株式の内外判定
例えば事業者が国内証券会社を通してニューヨーク証券取引所へ上場している米国株式を譲渡するといった場合、消費税法上の取り扱いはどのようにすべきでしょうか。
消費税の課税非課税を判断するにあたって、国内取引となる場合は消費税の対象となるため、国内取引か国外取引かの判定(内外判定)を行なう必要があります。有価証券を譲渡する場合の内外判定は、その譲渡が行われる時点での有価証券が所在していた場所によって判定します。
ですが、券面が発行されていない場合、この方法による内外判定ができません。
現在は株券の不発行制度により、上場株式、国債等は原則として券面が発行されていません。
券面の発行がない有価証券は、有価証券自体は存在しませんが、有価証券に類するものとして取り扱うこととされています。券面の発行がない株式の譲渡の内外判定は、平成30年4月1日以降、振替機関等が取り扱う有価証券の場合はその振替機関等の所在地によって判定し、振替機関等が取り扱わない有価証券は有価証券を発行した法人の本店、主たる事務所、その他これらに準ずるものの所在地により判定することとされています。
券面の発行がなく、振替機関等が取り扱う外国株式を譲渡した場合は、振替機関等の所在地が国内の場合は、国内取引として消費税非課税取引となります。
課税売上割合の計算上は譲渡対価の5%を分母の額に含めます。
振替機関等の所在地が国外の場合には、国外取引となり、消費税不課税取引となります。
今回設例の事業者が国内証券会社を通してニューヨーク証券取引所へ上場している米国株式を譲渡した場合、通常振替機関等が取り扱う株式が多いので、振替機関等が国外であるようであれば、国外取引として消費税不課税取引として取り扱うこととなります。
振替機関等とは
振替機関とは、株券等の有価証券の保管、受け渡しを簡素化することを目的として制定された保管振替機関のことで、「ほふり」と略称で呼ばれることもあります。日本では、社債株式等の場合は証券保管振替機構、国債の場合は日本銀行が該当します。
平成21年1月5日以降は、すべての上場株券が電子化され、振替制度を利用して管理されているため、上場株式は証券保管振替機構によって管理されることとなります。
あまり聞きなれない制度ですが、「社債、株式等の振替に関する法律」に基づき、電子化された上場株式は振替機関・口座管理機関が作成する振替口座簿の記録により、その権利の帰属を把握されているようです。
外国の機関には、各地域に設立されている振替機関などが所属する協会(いわゆるCSD協会)に加盟する各振替機関(清算機関を除きます。)及び外国の中央銀行が該当します。
証券保管振替機構は、証券会社等から預託された株券等の保管業務のほか、株主が株券等を売買した場合や、担保に差し入れた場合に、株券そのものの受け渡しをせず、機構や証券会社等に備えられた口座振替による権利処理を行っています。
券面がない株式の売買は、実際のモノがないため、振替機関内で受け渡しが行われ、そこが国内なのか国外なのかで判定するイメージで良いかと思います。
株式の課税仕入区分
株式の売買を行う際に支払う取次手数料について、消費税法上の取扱いはどうなるでしょうか。
個別対応方式により仕入税額控除を行う場合の課税仕入れの区分は、下記の通りです。
券面の発行がなく、国内の振替機関等が取り扱う株式の場合、国内取次手数料は非課税売上対応仕入となります。
国内での株式譲渡が消費税非課税取引であるためです。
券面の発行がなく、国外の振替機関等が取り扱う株式の場合、国内取次手数料は課税売上対応仕入となります。
国外での株式譲渡は消費税不課税取引ですが、仕入側は全額仕入税額控除の対象となります。
今回は外国株式の売買について取り上げましたが、国債や社債についても取り扱いを一つ一つ確認する必要があります。
記.東京事務所2課