2020/11/24

適格請求書等保存方式について(その1)

消費税の計算方法の概要

現在、消費税の申告をしなければならない課税事業者の計算方法は下記のとおりです。

計算方法
消費税額=課税売上に係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額
※消費税額は税率ごとに区分して計算します。

今回、改正となる箇所はこの計算方法のうち、「課税仕入れ等に係る消費税額」の部分です。
なお、簡易課税制度については2020年10月末現在で改正予定はありません。

上記の通り令和5年10月1日から導入されるこの制度はいわゆるインボイス制度、正式には適格請求書等保存方式といいます。

また、令和11年9月30日までは、適格請求書等の保存がない課税仕入れの一部を控除の対象とする経過措置があります。

適格請求書等保存方式とは

適格請求書等保存方式とは、「適格請求書等発行事業者登録制度」により、「適格請求書発行事業者」から交付を受けた「適格請求書」、「適格簡易請求書」等のいずれかの保存及び帳簿の保存が仕入税額控除の要件とされるものです。したがって、免税事業者や消費者、適格請求書等発行事業者以外の者から行った課税仕入れは原則として仕入税額控除の適用を受けることはできません。ただし、公共交通機関での旅客の運送(3万円未満)や、自販機等での取引(3万円未満)郵便切手等での郵便サービスなどは、帳簿の保存のみで仕入税額控除が受けられます。
また、簡易課税制度を選択している場合は適格請求書などの請求書等の保存は仕入税額控除の要件ではありません。

現行では「3万円未満の課税仕入れ」及び「請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由があるとき」の書類の保存不必要に関する規定がありますが、適格請求書等保存方式の導入後はこれらの規定は廃止されます。

この改正に伴い、請求書等の交付を受けることが困難な下記のような場合には、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。

①適格請求書の交付義務が免除される一定の取引
②適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
③古物営業、質屋又は宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産を取得する取引
④適格請求書発行事業者でない者から再生資源又は再生部品(棚卸資産に限ります。)を購入する取引
⑤従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入れ

適格請求書の記載事項

上記で「適格請求書」「適格簡易請求書」と記載しましたが、これらの書類に必要な記載事項は下記のとおりです。

「適格請求書」

1 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
2 取引年月日
3 取引内容(軽減税率の対象となる場合はその旨)
4 税率ごとに区分して合計した税抜又は税込対価の額及び適用税率
5 消費税額等
6 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

「適格簡易請求書」
※不特定多数の者に対して販売等を行う小売業、飲食店業、タクシー業等に係る取引については、「適格請求書」に代えて、適格簡易請求書を交付することができます。

1 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
2 取引年月日
3 取引内容(軽減税率の対象となる場合はその旨)
4 税率ごとに区分して合計した税抜又は税込対価の額及び適用税率
5 消費税額等

記載事項は定められていますが、様式は法令又は通達等で定められておらず、必要な事項が記載された書類であれば、名称も問わず手書きでも構いません。また、適格請求書は一定事項が記載された請求書、納品書等を指しますが、一種類の書類ですべての要件を満たす必要はなく、関連が明確な複数の書類でも書類全体で記載事項を満たせば要件を満たすこととなります。

適格請求書発行事業者(売り手)の義務等

この改正で課税事業者が仕入税額控除を受けるために制約が加わることとなりますが、適格請求書発行事業者(売り手)にも義務が課されることとなります。

・適格請求書の交付義務
取引の相手方(課税事業者)の求めに応じて、適格請求書(又は適格簡易請求書)を交付する義務
・適格返還請求書の交付義務
売上げに係る対価の返還等を行った場合に、適格返還請求書を交付する義務
・修正した適格請求書の交付義務
交付した適格請求書(又は適格簡易請求書、適格返還請求書)に誤りがあった場合に、修正した適格請求書(又は適格簡易請求書、適格返還請求書)を交付する義務
・写しの保存義務
交付した適格請求書(又は適格簡易請求書、適格返還請求書)の写しを保存する義務

さらに、適格請求書、適格簡易請求書等を交付することができるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られており、登録されていない者が、適格請求書と誤認されるおそれのある書類を交付することは、法律により禁止されており、違反した場合には一年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとされています。(新消費税法65)

今回は「適格請求書等保存方式」の概要について簡単にお伝えしましたが、この改正ではさらに新しい書類も加えられ、売り手側、買い手側にも対応するための準備が必要となります。

次回は、この続きとして適格請求書発行事業者の登録申請について記載する予定です。

記.名古屋事務所2課