2020/11/10

電子帳簿保存法について

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)の概要は次のとおりです。
⑴ 国税関係帳簿書類のうち電子計算機を使用して作成している国税関係帳簿書類については、税務署長等の承認を受けた場合には一定の要件の下で、電磁的記録等(電磁的記録又は電子計算機出力マイクロフィルム(以下「COM」といいます。))による保存等(国税関係帳簿の場合には備付け及び保存をいいます。以下同様となります。)が認められます(法4①②、5)。
また、取引の相手先から受け取った請求書等及び自己が作成したこれらの写し等の国税関係書類(決算関係書類を除きます(注)。)について、税務署長等の承認を受けた場合には、書面による保存に代えて一定の要件の下で、スキャン文書による保存が認められます(法4③)。(注) 平成27年9月30日前に行われた承認申請については契約書・領収書の一部も除かれます。

⑵ 所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者がいわゆるEDI取引やインターネットを通じた取引等の電子取引を行った場合には、電子取引により授受した取引情報(注文書領収書等に通常記載される事項)を電磁的記録又はCOM若しくは書面により保存しなければなりません(法10)。

電子帳簿、電子書類、電子取引とは?

電子帳簿とは?

仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など自己がコンピュータを使用して作成する帳簿の事をいいます。
これらを紙ではなく電子で保管したものが「電子帳簿」です。帳簿のうち、一部のみを電子データによって保存する事もできます。
例えば、仕訳帳と総勘定元帳を電子データとして保管し他の帳簿は紙で保管する等が考えられます。但し、作成する過程で一部を手書きで記録するなど一貫してコンピュータを使用して作成しない帳簿についてはこの制度の適用は受けられません。

電子書類とは?

損益計算書、貸借対照表など、自己がコンピュータを使用して作成する決算関係書類や領収書、請求書、納品書、見積書など自己がコンピュータを使用して取引相手に交付するまたは交付される書類の写しをいいます。
これらを紙ではなく電子データで保管したときに「電子書類」となります。

電子取引とは?

取引情報の授受を電磁的方式により行う取引の事をいいます。
取引情報は、請求書、領収書、契約書等の書類に通常記載される事項でありこれらの情報を紙媒体ではなく電子上でやり取りする取引になります。
具体的には
・電子メールによる請求書、領収書のPDFファイル等の受領
・ホームページから請求書、領収書のデータをダウンロードすることでの受領
・電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
・クレジットカードの利用明細データ
 交通系ICカードの支払データ等を活用したクラウドサービスの利用
・特定の取引に係るEDIシステムを利用
これらのものが該当します。

電子データで保存する為の申請書類

データを紙ではなく電子データで保存するにあたっては申請書類の提出がそれぞれ必要になります。

電子帳簿
「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請」
期限:承認を受けようとする国税関係帳簿の備付けを開始する日の3月前の日までに所轄の税務署へ申請。

電子書類
「国税関係書類の電磁的記録等による保存の承認申請」
期限:承認を受けようとする国税関係書類に係る電磁的記録又はCOMの保存をもって国税関係書類の保存に代える日の3月前の日までに所轄の税務署へ申請。

電子取引
「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請」
期限:承認を受けようとする国税関係書類をスキャナで読み取った電磁的記録による保存に代える日の3月前の日までに所轄の税務署へ申請。

届出のタイミングや申請書類が似ておりそれぞれに添付書類もあるので混同しないように注意が必要です。その他、新たに設立した法人に関しては設立の日以後3カ月以内に申請個人事業主に関しては、その事業を開始した日以後2カ月以内に申請することが認められる特例が設けられています。

電子取引による書類の保管

電子データで書類の授受がされた場合は大きく二つに分けられます。

①電子データでも行うが、紙も発行される場合
②電子データで完結する場合

①についてはメールで請求書等を送った後に原本を紙で郵送するようなケースです。紙が出る以上は、その紙を保管する義務が発生してしまいます。相手から授受する請求書や領収書を電子データとして保存する場合はスキャナ保存といって、タイムスタンプを付与する必要があります。

②については電子データで完結しているので紙に出す必要はありませんがそれでも紙で印刷をして保管する場合は電子取引に当たらないので税務署への承認申請は不要です。

電子データで完結している場合には、税務署への承認申請が不要になる場合があります。但し、電子取引につき無条件で電子データのまま保存することが認められているわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。
逆に言えば、一定の要件を満たす事が難しい場合は紙に出力したものを保存することが求められます。

電子データのまま保存する要件

前述した「電子データで完結する場合」の税務署への申請が不要になる為の一定の要件について説明していきます。

電子取引を行った際に、電子データのまま保存を行う要件は以下の『全て』の要件を満たす必要があります。

①システムの概要を記した関係書類の備付け
自社開発プログラムを利用する場合に限ります。

②見読可能装置の備付け
ディスプレイ、プリンターなどを備付け速やかに出力できることが必要です。

③検索機能の備付け
取引年月日、取引金額など主要な記録項目につき検索ができることに加えて例えば1月から3月の間といった範囲を指定して条件設定が可能であることや任意の二以上の項目を組み合わせて条件設定が可能であることが必要となります。

④その他以下のいずれかの要件を満たす
(1)タイムスタンプが付与されたデータを授受
(2)授受後遅滞なくタイムスタンプを付与(おおむね3営業日以内)
(3)訂正、削除ができない(行った場合確認ができる)システムを利用しての授受、保存
(4)「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規定」の策定、運用、備付け

「電子データのまま保存」と一口に言ってもメールで送られてきたPDFの請求書をサーバーに保存しておけば良いというわけではなくこれら4つの要件を満たしていくことが必要です。従って、現実的には外部システムを導入して保存していく以外は難しいかと思われます。

①から③までの要件は保存の為のシステム面の規定です。外部システムを導入する場合は、①の要件は不要ですので②③を満たす必要があります。特に③の検索機能の備付けについては、ある項目を単純に検索できるだけでなく範囲指定や任意の二以上の項目指定も必要であるなど細かい要件が求められています。

それに対して、実際の電子データの授受にどのような措置が必要かというのが④の部分です。
従来は(2)、(4)しか認められていませんでしたが改正により2020年10月1日以降は(1)、(3)が加わることになりました。この改正により、例えば取引先からの請求書等にタイムスタンプがあらかじめ付与されていれば(1)の要件を満たすことになります。

また、訂正や削除ができないクラウドサービスのシステムを通じて請求書等を授受する場合は(3)の要件を満たします。
このようなサービスは今後増加していくことが予想されますが保存要件に合致するかは事前にシステム会社に確認することをお勧めします。

電子帳簿保存法の改定

2020年に電子帳簿保存法改定が行われ、2020年10月1日より施行されています。
大きな変更点としてはキャッシュレス決済は紙の領収書が不要になった点です。これまでは電子書類として保存をする場合はレシートなどをスマートフォンで撮影し保存する必要がありましたが下記の2つが付け加えられたことにより、クレジットカードや電子マネーで支払った場合には利用データの保存のみで認められるようになり証憑のアップロードなどが不要になりました。
今後も国を挙げてペーパーレス化を推進していく中で、新たな法律やルールの整備が進められていくことが予想されるので電子帳簿の保存に関する動きにはこれからも注目し理解しておくようにしましょう。

・発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合においてその電磁的記録を保存する方法

・電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)においてその電磁的記録の授受及び保存を行う方法

電子帳簿保存法は、市場の状況や利用する企業の声を受けて成立以来、度々改正されてきた法律です。今後も状況に応じた改正を経て、より使いやすく進化していくことが予想されます。導入の手続きが若干煩雑ではあるものの、ペーパーレス化が実現すれば便利に働きやすくなることでしょう。この機会に、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

詳細は国税庁HP「電子帳簿保存法関係」をご覧ください。

記.名古屋事務所2課