2020/04/15

住宅ローン控除と譲渡特例 の二重適用排除

現行の住宅ローン控除と譲渡特例について

「住宅ローン控除」は、正式には「住宅借入金等特別控除」という制度ですが、一般的には「住宅ローン控除」として呼ばれています。

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得又は増改築等をした場合において、一定の要件を満たすときに、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除することができる制度です。

簡単にいうと、住宅ローン控除は、住宅ローン等を利用して新築又は中古のマイホームを購入等した人の金利負担を軽減するための制度です。

譲渡特例

土地建物を売ったときの譲渡所得の金額の計算上、特例として特別控除が受けられる場合があります。
譲渡の種類とその特別控除額は種々ありますが、その中から今回の税制改正に関係する制度は下記のとおりです。

・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
・居住用財産の譲渡所得の特別控除
・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
・既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例

これらの制度は納税者の税負担を軽減するものです。
令和2年度税制改正の大綱により、住宅ローン控除と上記譲渡特例の課税関係に改正がありましたので、ご説明致します。

税制改正の内容

新しくマイホームを購入して居住を開始し、従前の住宅は直ぐに売却せずに少し時間が経過してから売却した場合、居住用財産の譲渡特例と住宅ローン控除の取り扱いはどのようになるでしょうか。

現行の税法では、マイホーム等の居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例など居住用財産の譲渡特例については、居住用財産について居住の用に供しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡について適用することができます。

また、住宅ローン控除は、居住年を含めた前後2年間に居住用財産の譲渡特例の適用を受けた場合には、住宅ローン控除を適用することができません。

このように、住宅ローン控除と居住用財産の譲渡特例の適用について一定の制限があるため、重複して適用できないように思えます。
ところが、新しくマイホームを購入して、居住年及び居住年後の2年間において住宅ローン控除を受け、居住用財産の譲渡特例と住宅ローン控除の重複適用制限がなくなる住宅ローン控除の適用を受けた3年後に従前の住宅を売却することで、住宅ローン控除を3年間適用した後に、居住用財産の譲渡特例も適用できる抜け穴がありました。

この点について、令和2年度税制改正において、住宅ローン控除と居住用財産の譲渡特例を重複適用できない措置が講じられました。

その内容は、新たに住宅の取得等をして居住を開始した人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に従前の住宅等の譲渡をした場合において、上記「(1)2.譲渡特例」の居住用財産の譲渡特例の適用を受けるときは、新規住宅に係る住宅ローン控除の適用を受けることができないというものです。
認定住宅に係る住宅ローン控除についても同様に改正され、適用時期は、令和2年4月1日以降に行う譲渡からになります。

具体的には、どのような影響があるかご説明致します。

税制改正による影響

例えば、平成29年に居住開始した新規のマイホームに係る住宅ローン控除について、平成29年、平成30年、令和元年の各年分の住宅ローン控除の適用を受けた場合において、令和2年4月1日から同年12月31日までに従前の住宅等に係る居住用財産を譲渡して、翌年の申告で譲渡特例を適用するときは、住宅ローン控除の適用を受
けることができないため、平成29年分~令和元年分の過去3年分の各年の所得税について修正申告を行う必要があります。

このようにマイホーム等について住宅ローン控除の適用を受けていた方が、居住用財産を譲渡して居住用財産の譲渡特例を受けようとする場合には注意が必要になります。