2020/04/07

消費税軽減税率における簡易課税制度と届出書

消費税軽減税率導入による簡易課税制度の変更点

令和元年10月1日から消費税の軽減税率制度が導入されました。

これに伴い、簡易課税制度の事業区分の一部が変更されています。
「農業」「林業」「漁業」の内、軽減税率の対象となる飲食料品の譲渡に係る収入については「第二種事業」として、みなし仕入率80%が適用されることとなりました。

これまで「農業」「林業」「漁業」に係る事業の収入については「第三種事業」として、みなし仕入率70%が適用されていました。

この場合、軽減税率が適用される売上の税率は8%ですが、経費等の課税仕入れに係る税率は10%であるため、簡易課税制度を選択すると仕入控除税額が実際の金額よりも少なくなってしまいます。

そのため、「農業」「林業」「漁業」の内、軽減税率の対象となる飲食料品の譲渡に係る収入については「第二種事業」となりました。

同じ事業内容を行っていても、令和元年10月1日以降は事業区分が変わってしまうので注意が必要です。

また、軽減税率の対象でない飲食料品の譲渡に係る収入についてはこれまで通り「第三種事業」です。

簡易課税制度選択届出書と取下書について

簡易課税制度を選択しようとする場合、簡易課税制度選択届出書を適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに税務署へ提出する必要があります。

一度提出してしまった後でも簡易課税制度を選択しようとした課税期間が始まる前であれば届出書の効力は生じていないため、届出書を取り下げることが可能です。

この取下書には決まった書式がありません。

整理番号、納税地、会社名、代表者名と代表者印、取り下げたい書類名と提出した年月日、電子申告により提出した場合は受付番号等を記載した取下書を作成し、税務署長宛てに提出することとなります。

簡易課税制度を選択しようとした課税期間が始まった後や、設立(開業)一年目から簡易課税制度の適用を受ける内容で届出書を提出している場合は、先に出した簡易課税制度選択届出書の効力が生じてしまっているため、取り下げることはできないので注意が必要です。

軽減税率制度の実施に伴う特例と取下書について

消費税の軽減税率制度の実施に伴い特例が設けられています。

令和元年10月1日から、売上げ又は仕入れを軽減税率と標準税率に区分して税額計算を行う必要がありますが、仕入れを軽減税率と標準税率に区分することが困難な事情がある中小事業者は、簡易課税制度の届出の特例 として、令和元年10月1日から令和2年9月30日までの日を含む課税期間については、その課税期間の末日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、同届出書を提出した日の属する翌課税期間の初日から簡易課税制度の適用を受けることができます。

この特例を受けて提出した簡易課税制度選択届出書については、仕入れを軽減税率と標準税率に区分することが困難な事情がある場合に認められるものであるため、取下げが認められるかどうかは個別に判断となるようです。

いずれにしても、消費税の簡易課税制度を選択できる事業者の方はどちらの課税制度を選択するかで有利不利が分かれると思います。
なお、簡易課税制度をやめたい場合は、消費税簡易課税制度の適用を受けた日の属する課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出することはできません。

届出書一枚で何百万円も消費税納税額が変わることもあるので、事前にしっかりと検討しておくことが大切です。