2019/07/08

外国人オーナーから不動産を購入する場合の注意点

「非居住者」との不動産売買について

まずはじめに、日本の所得税法では、日本人と外国人は「居住者」と「非居住者」に分けられ、「非居住者」はさらに「永住者」と「非永住者」に分けられます。

昨今、これだけ外国人の方が日本に来る機会が増えてくると、外国人のなかには日本で投資目的のために不動産を購入するようなケースも増えてくるかと思います。
「居住者」である日本人がそのような「非居住者」から不動産を購入、賃借した際には注意点があります。

例えば、居住者Aが、非居住者Bから国内の土地と建物を購入するとします。
この場合、所得税法ではBから不動産を購入したAは「源泉徴収義務者」として取扱われ、その購入対価の10.21%をその購入日の翌月10日までに国に納めなくてはいけないことになっています。

具体的な金額をあてはめてみます。
Aが2019年7月10日に賃貸マンション5000万円を賃貸用物件としてBから購入したとします。この場合、5000万円に10.21%をかけた5,105,000円の所得税を2019年8月10日までに国に納めることになるのです。当然、Bにはこの源泉所得税を差し引いた44,895,000円を支払うこととなります。

うっかり5000万円をBに支払ってしまったとしても5,105,000円は国に支払わなければいけません。源泉徴収義務はAにあるためです。もし、5000万円を支払ってしまったとしたら、Bから本来差し引くはずだった5,105,000円は返してもらう必要があります。
これは面倒ですし、ひょっとしたらその時はもう既にBとは連絡がつかないかもしれません。怖いですね。

また、これは不動産賃貸の場合にもこの源泉徴収制度が適用されます。
特に、賃貸の場合には高い税率が課されます。非居住者から日本国内の土地や建物(マンションも)を借りて、賃料を支払う場合には、20.42%もの源泉徴収税額を差し引いて貸主に支払うこととなります。

「源泉徴収制度」について

このように日本の所得税法では、Bが売却価額5000万円をそのまま母国に持って帰ってしまわないように、「源泉徴収制度」という税金の前払いが決められているのです。国は税金の徴収もれが無いよう、この制度を使って税収を確保しているわけです。

「居住者」は、サラリーマンだろうが法人だろうが当てはまります。サラリーマンでも、そのような「非居住者」が所有する不動産を購入すれば所得税を支払う義務があります。会社名義(法人名義)で購入したとしても、会社(法人)は「居住者」である限り、それを支払わなければなりません。
うっかり、支払を忘れてしまっても購入した人は10.21%を延滞税等の税金と一緒に支払うことになるため注意が必要なのです。

ただし、源泉徴収が必要でないケースもあります。
個人の方が自分又はその親族の居住用のために、非居住者等から不動産等を購入した場合で、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合や、居住用で賃借する場合には支払の際に源泉徴収をする必要はありません。

また、日本が締結している多くの海外との租税条約では、土地等の不動産の賃借料につき、不動産が所在する国でも課税できるとする規定を置いています。
そのため、非居住者等に対して日本の不動産の賃料を支払った場合は、租税条約でも、その非居住者等が受け取る賃料について、日本で課税できることになっているので、国内法どおりの課税をすることになります。
ただし、締結している多くの租税条約では、「不動産」に船舶や航空機を含んでいないので、土地等とは取扱いが異なりますので詳細は最寄りの税理士に相談されるといいでしょう。

「非居住者」かどうかの判断

そもそも相手が「居住者」なのか「非居住者」なのかわからないことが多いでしょう。「あなたは居住者ですか、非居住者ですか」と聞かなければいけません。本人もわかっていない可能性も考えられます。

判定をするにあたって、「非居住者」は「居住者以外の者」とされています。
所得税法では「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は現在まで引続き1年以上「居所」を有する個人をいいます。それ以外の人が「非居住者」なのです。わかりづらいですね。

通常、買主は売主の住所・居所など知りません。契約書を見れば住所くらいはわかるかもしれません。こんな判定を買主自身にさせること自体に問題があるような気もしますが、現状はこのように規定されています。

日常生活のなかで居住以外のために不動産を購入したり借りたりする機会は少ないかもしれません。支払っている相手がいつの間にか「非居住者」に替わっているということもあり得ます。不動産の賃貸契約などでは契約更新の際に、支払相手が変更となっていないか確認するといいでしょう。

このような「源泉徴収制度」は非居住者が不動産を売却したときの課税もれを防ぐことが根本的な根拠としてあるようですが、今後源泉徴収もれが増えてき場合にはこの制度自体を見直す必要があるかもしれませんね。
今後の動向にも注目です。