2018/03/20

有価証券の評価損を計上をして節税

有価証券はその保有目的により①売買目的有価証券 ②売買目的以外の有価証券(以下 投資有価証券と表記)に区分することとなっています。

売買目的有価証券とは、いわゆるトレーディング業務を日常的に行っている専門部署がある場合や、有価証券の取得時に、帳簿書類に売買目的であることを記載し、特定の勘定科目により区分管理している場合をいいますので、一般的には売買目的有価証券に区分しない、投資有価証券がほとんどといえます。

期末における有価証券の評価額

① 売買目的有価証券は期末における時価
② 投資有価証券は取得原価による金額
で評価することとされています。

売買目的有価証券は期末の市場価額の変動により毎期期末に損益を計上しなければなりません。一方、投資有価証券は取得原価による評価ですから、株価が変動しても原則として評価額は変えられません。

投資有価証券の評価損を計上できる場合

投資有価証券は、原則として期末評価換えはできませんが、一定の事実が生じた場合には、評価損を計上できることになっています。

上場有価証券の評価損

上場有価証券について、その価額(時価)が著しく低下したことにより帳簿価額を下回ることになった場合には評価損の計上が認められており、「価額が著しく低下したこと」とは以下の①及び②の両方に該当する場合をいいます。

① 上場有価証券の事業年度末の価額がその時の帳簿価額のおおむね50% 相当額を下回ること。
② 近い将来その価額の回復が見込まれないこと。
(法基通9-1-7)

このように、評価損の計上が認められるには金額的な要件とともに、株価の回復可能性について検証を求めています。

株価の回復可能性の判断のための画一的な基準を設けることは困難なため、税務当局は会社が過去の市場価格の推移や市場環境の動向、株式発行法人の業況等を総合的に勘案した合理的な判断基準が示される限りにおいては、それを尊重するとしています。

合理的な判断基準

法人が独自に「合理的な判断」を行うことは困難であるとも考えられます。
このため、専門性を有する第三者である証券アナリストなどによる個別銘柄・業種別分析や業界動向に係わる見通し、株式発行法人に関する企業情報などを用いて、当該株価が近い将来回復しないことについての根拠が提示されるのであれば、これらに基づく判断は合理的な判断であると認められるものと考えられます。

具体的には、業界紙や専門誌のアナリストの分析記事などを保存しておき判断の材料とするのも有効であると考えられます。

<豆知識>
平成21年4月に国税庁から公表された「上場有価証券の評価損に関するQ&A」においては、次のように記載されています。

株価の回復可能性の判断の時期

株価の回復可能性の判断は、あくまでも各事業年度末時点において合理的な判断基準に基づいて行うものです。
このため、例えば、当事業年度末においては将来的な回復が見込まれないと判断して評価損を計上した場合に、翌事業年度以降に状況の変化(株価の上昇など)があったとしても、そのような事後的な事情は当事業年度末時点における株価の回復可能性の判断に影響を及ぼすものではなく、当事業年度に評価損として損金算入した処理を遡って是正する必要はありません。

株価の回復可能性の判断基準に該当した場合の評価損否認額の取扱い

前事業年度において、長期保有目的で所有する上場株式の前事業年度末時点での時価が帳簿価額の50% 相当額を下回っていたことから、会計上減損処理を行ったが、税務上の処理について、株価の回復可能性を判断した結果、合理的な判断基準に該当しなかった場合には、その会計上減損処理した金額を申告調整により所得金額に加算して申告を行う必要があります。

評価損否認額(過去の事業年度において有税で減損処理した金額)のある上場株式について、その後の事業年度で、税務上評価損を計上できる状況になった場合には、評価損否認額も含めて、その事業年度の損金の額に算入することが認められることとなります。

非上場有価証券の場合

非上場株式の場合は、破産法の規定による破産手続開始の決定、民事再生法の規定による再生手続開始の決定などという一定の法的事実があった場合を別として、その事業年度終了の日における発行法人の1 株当たりの純資産価額がその有価証券を取得した時の1 株当たりの純資産価額に比しておおむね50% 以上下回ることとなったことが、評価損の損金算入が認められる要件になっています (法基通9-1-9)。

取得時点と期末時点のそれぞれの純資産価額を比較するとなるとちょっと困難ですね。