2018/02/07

未払費用を漏れなくチェックして節税

決算において、仕入の買掛金はきちんと計上していても経費等の未払計上はあまり厳密にされていない場合が多いようです。細かく拾い出せば、意外に節税効果が期待できます。

労働保険料を未払計上

一般的には労働保険料を支払い時に経費計上している事業者が多いのではないのでしょうか。しかし、労働保険の申告書提出時に、保険料の全額を経費計上することができます。

労働保険は年度更新の手続を6 月1 ⽇から7 月10 ⽇までの間に行い(平成21 年から変更になりました)、7 月10 ⽇までに納付しますが、概算保険料額が40 万円(労災保険⼜は雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20 万円)以上の場合⼜は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は7 月10 ⽇、10 月末、1 月末の3 分割納付ができます。

① 例えば7 月の決算法人であれば、10 月末、1 月末の保険料が未払いですね。それを未払計上すれば経費となり節税になるのです。

② さらに言えば、申告書提出時に全額計上できるわけですから、6 月決算の場合は、6 月末までに保険料の申告をしてしまえば、全額未払計上可能です。分割が認められない事業者でも、この方法なら節税に使えますね。

③ もっといえば、労働保険料の申告は前年度の3 月末までの概算保険料の精算と今年度の概算保険料を計算して申告するものです。前年度の不足額は3 月末で確定しています。不足分の未払額を計算すれば未払計上も可能です。これならば、3 月から5 月の決算法人も節税策として利用できるということです。

社会保険料を未払計上(健康保険料・厚生年金保険料)

社会保険料も一般的には支払い時に経費計上している事業者が多いと思います。
社会保険料は当月分を翌月末までに納付する後払いになっていますので、1 ヵ月分(決算月末日が休日で振替されなかった場合は2 ヵ月分)を未払計上できます。
もちろん、経費となるのは事業主負担分(使用人からの預り保険料を除く)だけです。

固定資産税を未払計上

固定資産税も一般的には支払い時に経費計上している事業者が多いと思います。
固定資産税、不動産取得税、自動車税、都市計画税など賦課課税方式による租税公課の損金算入時期については、原則は賦課決定のあった事業年度とされています。
ただし、納期の開始日の事業年度又は実際に納付した事業年度において損金経理をした場合には、その損金経理をした事業年度となります。
固定資産税は、その年の1 月1 日時点の所有者に対して課税されます。市区町村で異なるようですが、4~6 月に賦課決定され納税通知書が送られてきます。そして4 月、7 月、12 月及び2 月などというように4 期に分けて納付することになります。
この場合は、原則どおり、4~6 月の賦課決定のあった日の属する事業年度に全額経費計上することがもっとも節税になるわけです。

締め後の従業員給与を未払計上

通常、使用人の給料には“ 締日” があります。「20 日締の末日払い」の場合、末日に支払った給与には21 日から末日までの10 日分の給与が含まれていません。末日が決算の場合には、この10 日分を未払計上することができるのです。
決算期末での給与の未払い分を未払計上して節税しましょう。

<注意点>
役員報酬については、日割りによる未払計上は認められません。

クレジットカードで支払った経費を未払計上

通常、クレジットカードで支払いをした経費は、翌月もしくは翌々月に引落しになります。
引落日にカード利用明細から会計処理をしていると決算期末に未処理となる費用が生じます。
期末には、未落ちのカード利用代金を未払計上して経費の計上漏れを防ぎましょう。
<注意点>
クレジットカードで支払いをした店からは、領収書をもらっておくようにしましょう。
余談になりますが、カード会社からの利用明細の保管だけでは、消費税法上の問題もあるのです。

消費税は、本則課税の場合、その計算過程で課税売上にかかる消費税から仕入税額控除を行いますが、そのためには次の事項が明瞭に記載された書類の保存が必要となります。
① 課税資産の譲渡等を行った事業者の氏名又は名称
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容
④ 課税資産の譲渡等の対価の額
⑤ 書類の交付を受ける事業者(自社)の氏名または名称

これらの書類を7 年間保存する必要があります。カード会社の利用明細だけでは要件を満たしていないのです。

水道光熱費・通信費等の経費を未払計上

電気代・水道代・電話代等も、その年のカレンダーによっては1・2 ヶ月分が未払いになる場合もあります。期末には経費精算もキッチリしましょう。

細かい金額も合計すると案外高額になることもあります。