2017/09/29

仮想通貨の税務上の扱い

近年、投資商品として人気が出てきている仮想通貨に関する税務上の扱い(所得税、消費税)をご説明したいと思います。

仮想通貨の所得税の扱いについて

2017年9月6日に国税庁より下記のとおり公表がありました。

「ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります」
「このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます」

上記の文章について、補足説明しますと

1)
「ビットコインとは…」と記載されてますが、「ビットコイン」というものは仮想通貨の種類のなかの1つの銘柄(名称)であります。
「それでは他の銘柄の通貨だったら違うの?」と誤解するかもしれませんが、ここでは「ビットコイン=仮想通貨」という解釈で考えて宜しいかと思います。

2)
「このビットコインを使用することにより生じる損益」(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)とは、「為替差益」を指していると考えられます。具体的な取引は、下記のものが考えられます。

・仮想通貨を売却して、日本円に換えること
・一つの仮想通貨を、別の仮想通貨に換えること
(Aの通貨をBの通貨に換える=Aを売却、Bを購入)
・購入した仮想通貨をもって、商品等を購入した場合
(商品等を購入した額と仮想通貨の購入額との差額が損益)

最大の注目点は、仮想通貨取引での所得税の扱いは「雑所得」になるということです。

それでは、仮想通貨で生じた利益(所得)に対して、実際の所得税の計算方法について、他に類似した投機商品(株式、先物取引、FX)の計算方法と比較しながらご説明したいと思います。

仮想通貨の所得税の計算方法

まず基本的な所得税の計算方法を簡単にご説明したいと思います。
所得税は基本的に10種類の所得がありまして、分類した各種所得ごとに計算を行い、「総合課税」といわれるものは所得控除を差し引いた後の課税所得に対して、超過累進課税にて税率を乗じて算出します。
また、「分離課税」いわれるものはその所得の種類ごとに単独で決められた税率を乗じて算出します。
それでは、仮想通貨などの投機商品の所得税の計算方法をご説明します。

仮想通貨の場合

仮想通貨取引で生じた利益は、上記のとおり「雑所得」になりまして、他の所得と合算して超過累進課税にて税金を算出します。
ちなみに損失が生じた場合(所得がマイナス)は、他の所得との相殺をすることが出来ません。また、損失の繰越控除などの特例もありません。

株式の場合

株式の譲渡で生じた利益は、「譲渡所得」の扱いになりまして、税金の計算方法も「分離課税方式」となり、所得税率15.315%(住民税率5%)を乗じた金額が税額となります。
ただ、株式の種類のなかでもゴルフ会員権にかかる譲渡所得は「総合課税方式」となり、他の所得と合算して超過累進税率にて算出します。
また、上場株式の譲渡で損失が出た場合は、損失が生じた年の翌年以後3年間は損失の繰越控除や上場株式で得た配当(配当所得)と相殺が出来る、などの特例があります。

先物取引、FX取引

先物取引・FX取引で生じた利益は、「先物取引に係る雑所得等の金額」という所得の扱いとなり、「分離課税方式」となります。
(税率は、株式と同様の率)。
また、取引で損失が生じた場合には、株式の譲渡損失の場合と同様に損失が生じた年の翌年以後3年間は損失の繰越控除の特例があります。

仮想通貨に関しては、取扱いがようやく発表されたばかりなのもありますが、現状では損失の繰越控除などの特例は無い状況です。

仮想通貨の消費税の扱い

そもそも消費税は、「資産(商品・物品)の譲渡」、「資産の貸付」、「役務の提供」の行為があった場合に課されるものです。
そのなかで特例として、「課税対象としてなじまないもの」については非課税取引と認められてます。
消費税法上、非課税取引と認められているもののなかに、

「支払手段の譲渡」
銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡。ただし、これらを収集品として譲渡する場合は非課税取引には当たりません。

と規定されております。さらに平成29年度の税制改正で下記の文言が追記されました。

「(注)平成29年7月1日以後、資金決済に関する法律第2条第5項に規定する仮想通貨の譲渡は非課税となります。」

よって、平成29年6月30日以前に国内において売却(購入)した
仮想通貨に関しては課税取引、平成29年7月1日以後にかかるものは非課税取引となります。

ここで、既に消費税の納税義務者の人が「6月30日までに駆け込みで仮想通貨を購入すれば、消費税が還付されるのでは?」と考えられるかもしれませんが、以下の経過措置が盛り込まれています。

「平成29年6月30日に100万円(税抜き)以上の仮想通貨(国内において譲り受けたものに限る。)を保有する場合」

           かつ

「平成29年6月1日から平成29年6月30日までの間の一日あたりの平均保有数量が、平成29年6月30日の保有数量よりも少ない場合」

には、平均保有数量までしか仕入税額控除を認めない。となっております。(附則第2条~第15条関係)

ちなみに、仮想通貨の譲渡については課税売上割合の計算上、資産の譲渡等に含まないものとする(第9条、第48条関係)、となっております。