2割特例の今後
まず簡単におさらい:2割特例とは?
2割特例とは、本来は免税事業者となれる人がインボイスに対応するために適格請求書発行事業者になったとき通常の消費税負担が生じるのを軽減するための「経過措置」です。
通常の消費税では、
売上に係る消費税 − 仕入税額控除 = 納付税額
となりますが、2割特例の場合は、売上にかかる消費税額の20%だけ納税すればいい。
(=仕入税額控除の計算をしなくていい)
というシンプルかつ負担の軽い制度です。
ただし、あくまで「経過措置(特例)」のため永続ではなく適用できる期間は限られています。
2割特例はいつまで使えるのか?
2割特例が使えるのは「令和8年9月30日を含む課税期間」までです。
・法人
→ 令和8年9月30日を含む事業年度まで
(例)3月決算の法人は「令和9年3月期」がラスト
・個人事業主
→ 課税期間=暦年なので
2026年(令和8年)12月31日までが実質的な最終
つまり現時点(2025年時点)では、もう残りわずかです。
「これから制度を使いたい」ではなく、「もうすぐ終わる制度への対応を考える時期」に入っています。
2割特例が終了したらどうなる?
2割特例が終わったら、消費税の納税方式は 原則課税か簡易課税のどちらかを選ぶことになります。
① 原則課税
売上にかかる消費税から、仕入・経費にかかる消費税を控除するので会計処理が細かくなる仕入が多い業種では有利になることもあります。
2割特例の後に急に原則課税になると、今までより税額が急増するケースが多いです。
特にフリーランス・サービス業など「仕入控除があまり取れない業種」は不利になりがちです。
② 簡易課税
売上×みなし仕入率で計算(業種によって40~90%)するので原則課税より計算が簡単。
ただし、事前に「簡易課税制度選択届出書」の提出が必須となり2割特例を使っていた人の多くは、終了後に簡易課税が有力な選択肢になる可能性が高いです。
要注意!簡易課税にするなら「届出が必要」&タイミングが重要
「2割特例の次は簡易課税で良いか」と考えている人は多いかもしれませんが注意するべきなのは届出の期限です。
● 簡易課税の届出は「事前提出」が大前提
基本ルール:
適用したい課税期間が始まる前日までに提出という期限があります。
個人事業主の例
2026年(令和8年)から簡易課税にしたい
→ 2025年12月31日までに提出が必要
提出が遅れると、翌年分からしか適用できません。
以前より既に届出の提出がある場合は、取り消しをするか基準期間の課税売上高が5,000万円を超えない限りは自動的に簡易課税が適用されます。
2割特例終了に向けた実務的リスクと注意点
①2割特例のままの感覚でいると、翌期の税額が急増した可能ような感覚になる。2割特例は売上の消費税の20%だけで済むため、とにかく軽いです。
しかし終了後は
原則課税の場合 → 売上−仕入で計算
簡易課税の場合 → 売上×業種のみなし仕入率
となるため、ほとんどの方は税負担は増えます。
特に「仕入の少ない業種」は納税額の増加の幅が大きくなります。
②会計処理が急に複雑になる可能性
2割特例では仕入税額控除を計算しないので、取引先のインボイスの有無や消費税率に関しては、適当でいいわけではありませんが万が一仕入れに関する消費税が間違っていたとしても税額への影響は少なく済んでいました。
しかし2割特例終了後は
・課税/非課税/対象外の区分や税率の区分が必要
・インボイスの保存要件を満たさないと控除が認められない
なので、会計ソフトの設定や経理の運用を見直す必要が出てきます。
③届出漏れが一番危険
最も怖いのは、「簡易課税を使いたかったのに届出を忘れて原則課税になる」というパターン。
これだけで納税額が何十万単位で変わるケースもあるのでくれぐれもご注意ください。
今どう動くべき?準備すべきポイントまとめ
2割特例終了に向けて、今やっておくべき事として
①今の事業にとって「原則課税」と「簡易課税」どちらが得か試算する。
2割特例の負担が軽すぎるので、終了後との落差が大きいので
早めに試算しておくと安心です。
②簡易課税を選ぶなら「届出期限」を必ず確認。
個人事業主か法人かによって提出期限は違うのでいつまでに提出をすべきかを
把握する必要があります。
③経理処理の見直し
原則課税を選ぶなら、仕入税額控除の区分整理が必須。
会計ソフトの設定変更や資料整理の方法なども変わる可能性があります。
2割特例は便利な制度ですが令和8年9月30日を含む課税期間までという明確な期限があります。
そして終了後は、原則課税・簡易課税(※届出必須)のどちらかに移行し、税負担も実務負担も変わります。
特に簡易課税への切り替えは「事前届出」が必要で期限を逃すと取り返しがつかないため注意が必要です。
2割特例が終わるギリギリではなく今のうちに試算・届出の準備をしておくことが、スムーズな移行のためには必要かと思います。
記.名古屋事務所2課
