相続登記の登録免許税について
登録免許税の計算方法
登録免許税は、原則として以下のように計算します。
登録免許税額=課税標準×税率
相続による不動産の所有権移転登記の場合、課税標準と税率は以下のようになります。
登録免許税額=不動産の固定資産税評価額×0.4%
課税標準はその不動産の固定資産税評価額となります。固定資産税評価額は市町村役場から毎年4月~5月頃に通知される固定資産課税明細書に「価格」または「評価額」として記載されています。固定資産税課税明細書には「課税標準額」という金額も記載されていますが、これは固定資産税や都市計画税の「課税標準額」であり、登録免許税の課税標準額ではありませんので取り違えないようにしてください。
税率0.4%は、売買や贈与による所有権移転登記の際の登録免許税の税率2%と比べて5分の1と低くなっています。
計算例として、土地(固定資産税評価額5,125,100円)と建物(固定資産税評価額2,247,200円)を同一申請書で申請する場合の相続による所有権移転登記の登録免許税額は以下の通りです。
計算例では次に紹介する免税措置の適用はないものとして計算しています。
課税標準:5,125,100円+2,247,200円=7,372,300円→7,372,000円(千円未満切り捨て)
登録免許税額:7,372,000円×0.4%=29,488円→29,400円(100円未満切り捨て)
相続登記の登録免許税の免税措置
相続による土地の所有権移転登記にかかる登録免許税に関して以下2つの免税措置が設けられています(適用期間は令和7年3月31日まで)。
①相続登記が未了で数次相続が発生している土地の免税措置
この免税措置は、いわゆる所有者不明土地問題解消の一環で長期間相続登記が未了の土地の解消を図るため、相続登記を促進する措置として設けられた制度です。
例えば
土地の登記名義人であるⒶの死亡によりⒷがⒶの土地を相続したもののⒷがその相続登記をしないまま死亡してしまい、最終的にⒸがⒷから土地を相続している場合においてⒸがⒷを登記名義人とする相続による所有権移転登記については、登録免許税0.4%が免税となります。
なお、例ではⒸが相続により土地を取得していますが例えば、Ⓑが生前に第三者Ⓓに土地を売却している場合でもⒹがⒷを登記名義人とする相続による所有権移転登記については登録免許税0.4%が免税となります。
細かい部分ですが条文上はあくまでも
「個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡した場合」
となっていますので例にあるⒷがⒶの土地を相続したもののⒷがその相続登記をしないまま死亡していればよく必ずしもⒸが相続により土地を取得している必要はありません。
②相続により取得した価格が100万円以下の土地の免税措置
「相続した土地の価格」が100万円以下であれば相続登記の登録免許税0.4%が免税となります。
※ 「相続した土地の価格」が市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格がある場合は、その価格です。
この免税措置は、いわゆる所有者不明土地問題解消の一環で相続登記未了の土地を発生させないための対応措置として上記の免税措置と併せて設けられた制度です。令和4年の税制改正により免税措置の適用対象となる土地の区域の要件が廃止されて全国の土地に拡大されるとともに適用対象となる土地の価額の上限が10万円から100万円に引き上げられました。
まとめ
登録免許税の計算にあたってはまず相続した不動産の固定資産税評価額を調べる必要があります。
毎年市町村役場から送られてくる固定資産税課税明細書を紛失してしまっているような場合には市町村役場(東京都23区の場合は各都税事務所)で固定資産税評価証明書を発行してもらい固定資産税評価額を確認する必要があります。
さらに、相続登記の登録免許税の免税措置の適用を受けるためには上記適用要件を満たしたうえで、免税の根拠となる租税特別措置法の条項を登記申請書に記載する必要があります。この記載がない場合には免税措置の適用が受けられませんので注意が必要です。
登録免許税の計算ミス防止や、相続登記の登録免許税の免税措置の適用ミス防止の観点からも多少報酬はかかっても司法書士に相続登記一式を依頼した方がよいでしょう。
記.名古屋事務所2課