2025/03/26

廃業時の届け出と消費税のみなし譲渡について-個人事業主

個人事業主の廃業時の届出書提出

個人事業主が事業を廃業する際には、税務署等に届出書類を提出し事業の終了を知らせ、納税義務や社会保険の加入を解除することとなります。事業状況により提出する届出書は異なりますが、廃業の手続きを行うことにより、個人事業主の納税義務と徴収義務を終了させ、税務上のトラブルを防止することとなります。
具体的な提出すべき届出書と提出期限は下記の通りとなります。

• 個人事業の開業・廃業等届出書(提出期限:廃業後1カ月以内)
• 消費税の事業廃止届出書(廃業後すみやかに)
• 所得税の青色申告の取りやめ届出書(廃業した年の翌年3月15日)
• 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書(廃業後1カ月以内)
• 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
• 個人事業税の事業廃止届出書(提出期限:廃業後10日以内)
• 適用事業所全喪届(提出期限:廃業後5日以内)
• 雇用保険適用事業所廃止届(提出期限:廃業後10日以内)
個人事業の開業・廃業等届出書はすべての個人事業主が提出する必要がありますが、下7つは必要に応じて提出することとなります。提出期限も異なりますので、ご自身の事業がどの届出書の提出が必要になるか確認し提出を忘れないようにしましょう。

個人事業主が事業廃止した場合の消費税のみなし譲渡について

個人事業者で消費税の課税事業者の場合、事業廃止した日の属する課税期間に係る消費税の申告が必要となります。

消費税法で課税の対象となるのは、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」とされています。個人事業者は、事業とプライベートの線引きが難しいことから、「個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用についても事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなす」とされています。
そのため、個人事業者が事業を廃止した時に事業の廃止に伴い事業用資産に該当しなくなった車両等の資産は事業を廃止した時点で家事のために消費または使用したものとなり、事業として対価を得て当該資産を譲渡したものとみなされ、消費税の課税対象となってしまいます。
廃業時の消費税申告時には、この事業用資産を家事用へ転用した場合の消費税課税が漏れてしまうケースが多くあるため注意しましょう。

また、この場合のみなし譲渡の金額についてはその資産の廃業時の時価となります。時価とは当該事業を廃止した時の当該資産の通常売買される価額に相当する金額となりますが、財務省の見解では原則としては当該資産の時価となるが、資産状況によっては資産の減価償却後の未償却残高も時価の一つの指標となり得るとされています。そのため個人事業廃業時に車両等の資産を自家用へ転用した場合は、時価又は未償却残高で個人事業主に譲渡したとみなされ、時価又は未償却残高分消費税が課税されることとなります。

所得税法上ではみなし譲渡という考え方はないため廃業時に車両を自家用車へ転用しても譲渡所得となることはありませんが、消費税は課税の対象となるため注意しましょう。

まとめ

今回は、個人事業主が廃業した場合の届出書の提出と消費税みなし譲渡の注意点をご紹介しました。
個人事業主にとって廃業することは大仕事となるため、届出書の提出忘れや想定外の消費税負担となってしまわないためにも、こちらの記事を参考に事前に準備をしていただけたら幸いです。

記.名古屋事務所1課