2025/01/15

どうなった?103万円の壁

令和7年税制改正大綱の概要

2024年12月20日に令和7年の税制大綱が発表され、12月27日に閣議決定しました。
まずはどのような税目で改正等があったか、令和7年度税制大綱の概要から引用します。

///以下引用///
物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行う。
老後に向けた資産形成を促進する観点から、確定拠出年金(企業型DC及びiDeCo)の拠出限度額等を引き上げる。
成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充する。
国際環境の変化等に対応するため、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置、グローバル・ミニマム課税の法制化、外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行う。
これらにより、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応する。
///以上引用///

分かりにくいですね。
大雑把に砕くと、
・物価が上昇しているため所得税の控除額を見直しましょう。
・老後資金の確保をご自身で行ってもらい、その一環として投資してもらうための枠を広げましょう。
・中小企業の経営強化税制を拡充しましょう。
・その他諸々。
と言った感じでしょうか。

概要をさらに大きい区分で見てみます。

税目ごとの税制改正大綱をみてみましょう

個人所得課税
 ○ 物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応
 ○ 確定拠出年金(企業型DC及びiDeCo)の拠出限度額等の引上げ
 ○ NISAの利便性向上
 ○ 子育て支援に関する政策税制
 
資産課税
 ○ 固定資産税の課税標準の特例措置の延長等
 ○ 事業承継税制における役員就任要件等の見直し
 ○ 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の延長
 
法人課税
 ○ 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長等
 ○ 中小企業経営強化税制の拡充等
 ○ 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の拡充等
 ○ 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長等

消費課税
 ○ 外国人旅行者向け免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し
 ○ 二輪車の車両区分の見直し

国際課税
 ○ グローバル・ミニマム課税への対応
 
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
 ○ 防衛特別法人税(仮称)の創設
 ○ たばこ税の見直し

納税環境整備
 ○ 電子帳簿等保存制度の見直し
 ○ 納税通知書等に係るeLTAX経由での送付

関税
 ○ 暫定税率等の適用期限の延長等
 ○ 個別品目の関税率の見直し

上記が令和7年度の税制改正大綱の概要の見出しになります。

個人所得税の改正

法人課税や防衛強化に係る財源確保のための税制措置の防衛特別法人税(仮称)の創設も気になるところですが、今回は個人所得税の税制改正の目玉部分だけ見てみたいと思います。

○ 物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応
(国 税)
(1)基礎控除
① 基礎控除について、合計所得金額が2,350万円以下である個人の控除額を10 万円引き上げる。
② 上記①の見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
イ 合計所得金額が2,350万円以下である個人 58万円
ロ 合計所得金額が2,350万円を超え2,400万円以下である個人 48万円
ハ 合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下である個人 32万円
ニ 合計所得金額が2,450万円を超え2,500万円以下である個人 16万円
 
③ 上記①の見直しに伴い、公的年金等に係る源泉徴収税額の見直し等の所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。なお、給与等及び公的年金等の源泉徴収については、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用する。
(注2)上記の改正に伴い生ずる公的年金等につき源泉徴収された所得税の額に係る超過額について、当該公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除く。)の支払者から還付等をするための措置を講ずる。

(2)給与所得控除
① 給与所得控除について、55万円の最低保障額を65万円に引き上げる。
② 上記①の見直しに伴い、給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表等について所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。なお、上記②の給与所得の源泉徴収税額表(月額表、日額表)及び賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表の改正については、令和8年1月1日以後に支払うべき給与等について適用する。

(3)特定親族特別控除(仮称)
① 居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(その居住者の配偶者及び青色事業専従者等を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるものに限る。)で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から次のとおりの控除額を控除する。

親族等の合計所得金額     控 除 額
58 万円超85万円以下     63 万円
85 万円超90万円以下     61 万円
90 万円超95万円以下     51 万円
95 万円超100万円以下     41 万円
100 万円超105万円以下    31 万円
105 万円超110万円以下    21 万円
110 万円超115万円以下    11 万円
115 万円超120万円以下    6 万円
120 万円超123万円以下    3 万円
 
② 上記①の控除については、控除額が一定額以上の場合には、給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用できることとする。

③ その他所要の措置を講ずる。(注)上記①の改正は令和7年分以後の所得税について、上記②の改正は令和8年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について、それぞれ適用する。
なお、給与所得者については令和7年分の年末調整において適用できることとするほか、所要の経過措置を講ずる。

(4)上記(1)から(3)までの見直しに伴う所要の措置
① 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を58 万円以下(現行:48 万円以下)に引き上げる。
 
② ひとり親の生計を一にする子の総所得金額等の合計額の要件を 58 万円以下(現行:48万円以下)に引き上げる。
 
③ 勤労学生の合計所得金額要件を85万円以下(現行:75万円以下)に引き上げる。

④ 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額を65万円(現行:55万円)に引き上げる。

⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。

基礎控除、給与所得控除と関連する各種控除(配偶者、ひとり親、勤労学生等)の増加と新たに特定親族特別控除(仮称)が創設されたということになります。
 
○ 子育て支援に関する政策税制
・住宅ローン控除について、1年間の措置として、子育て世帯等に対し、借入限度額を、認定住宅は5,000万円、ZEH水準省エネ住宅は4,500万円、省エネ基準適合住宅は4,000万円へと上乗せする。また、床面積要件を緩和する。
・住宅リフォーム税制について、1年間の措置として、子育て対応改修工事を適用対象に追加する。
・生命保険料控除における新生命保険料に係る一般生命保険料控除について、1年間の措置として、居住者が年齢23歳未満の扶養親族を有する場合には、令和8年分における控除額を最高6万円(現行:最高4万円)に引き上げる。

いずれも1年間の措置としてですが、住宅ローン控除の上乗せと生命保険料控除の引き上げも行われます。
配偶者や扶養親族の年収103万円の壁は、給与所得控除額の最低額が65万円と基礎控除58万円の合計額の123万円となった事になりますね。(178万円はどこいった?と言った感じですね。)

記.大阪事務所3課