2022/12/13

電子帳簿保存法の改正

電子帳簿保存法(電子取引)とは

そもそも電子帳簿保存法とは、各税法で原則、紙での保存が義務付けられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は、大きく以下の3種類に区分されています。

①電子帳簿等保存
電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存
②スキャナ保存
紙で受領・作成した書類を画像データで保存
③電子取引
電子的に授受した取引情報をデータで保存

①、②については、書面での保存が認められている上で、一定の要件を満たした場合に電子データでの保存が認められるもので、従来通りの対応が可能な為、ここでは説明を割愛させていただきます。

③は電子取引により授受した取引情報について、書面での保存が認められなくなり、一定の要件を満たした上で電子データによる保存が必要となるものであり、すべての事業者に対応が必要となる内容となりますので今回は③電子取引に絞って、令和6年1月1日から必要な対応についてご説明させていただきます。

「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。なお、この「取引情報」とは、取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。電子メールにより注文書を授受(添付ファイルを含む。)した場合などがこれにあたります。(同じ内容のものを書面でも受領し、書面を正本として取り扱うこととしている場合には、書面の保存のみで足りることとされています。内容に差分がある場合には書面、電子データの両方を保存する必要があります。)

これらについて、令和3年12月31日までは、受け取ったデータを印刷したものを書面で保存することが認められていましたが、令和4年1月1日以降はこれが認められなくなり、一定の要件を満たした上で電子データにより保存することとされました。(宥恕措置により令和5年12月31日までに行う電子取引については、保存すべき電子データを書面に出力して保存し、税務調査等の際に提示又は提出ができるようにしておけば差支えないものとなっています。)

電磁的記録の保存要件

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存等に当たっては、真実性や可視性を確保するため、下記の要件を満たす必要があります。

①電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限ります。)

②見読可能装置の備付け等

③検索機能の確保(個人事業者は2年前、法人は2期前の事業年度の売上高が1,000万円以下の場合については不要ですが、保存しているデータについて税務調査の際にはダウンロードの求めに応じることができる必要があります。)

④次のいずれかの措置を行う
一 タイムスタンプが付された後の授受
二 速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付す
※括弧書の取り扱いは、取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規定を定めている場合に限る
三 データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う。
四 訂正削除の防止に関する事務処理規定の備付け

上記②の見読可能装置の備付け等はディスプレイやプリンタ等の備付けを求めるものです。性能や台数については定められておらず、日常業務で使用しているもので構いませんが、税務調査の際には優先的に使用できるようにしておく必要があります。プリンタを常設していない場合であっても、近隣にコンビニ等があり税務調査の際に速やかに対応ができればプリンタを備え付けているものと取り扱います。

上記③の検索機能については、
1 取引年月日その他の日付、取引金額、取引先を検索の条件として設定することができること
2 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
3 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること
の3つの要件が求められています。

保存要件の対応

各種システムの整備、導入が令和6年1月1日に間に合わない場合や、コストの面からシステムの導入が難しい場合など一般的なパソコンのみであっても以下のような方法で保存要件を満たすことが可能です。

③「検索機能の確保」は、専用のソフトウェア等を使用していない場合でも、例えば、エクセル等の表計算ソフトにより、取引データに係る取引年月日その他の日付、取引金額、取引先の情報を入力した索引簿を作成することにより機能を満たすものと考えられます。

この方法により保存する場合には、エクセル等の表計算ソフトの索引簿上で通し番号を付し、ファイル名と対応させるなどの方法により、索引簿から取引データを検索できるようにする必要があります。(国税庁HPにて索引簿のサンプルが公表されていますのでご確認下さい。)

又、請求書等のファイル名に、規則性を有して記録項目を入力することにより電子的に検索できる状態にしておくなどの一定の方法により検索できる状態であるときは、当該要件を満たしているものとして取り扱うこととされています。
例)2022年10月31日に株式会社国税商事から受領した110,000円の請求書→「20221031_㈱国税商事_110000」

④四の「訂正削除の防止に関する事務処理規定の備付け」はどこまで整備すればデータ改ざん等の不正を防ぐことができるのかについて、事業規模等を踏まえて個々に検討する必要がありますが、必要となる事項を定めた「改ざん防止のための事務処理規定」が国税庁HPにて規定のサンプルが公表されており、こちらを使用することで要件を満たすものと考えられます。

今回は保存の仕方についてご説明させていただきました。その他の内容につきましては国税庁HPにて一問一等(Q&A)が公開されておりますのでそちらもご確認下さい。

記.東京業務1課